第三章
夢小説設定
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海青の力強いソロから始まる、GO ON THE RAMPAGE TOUR 2017-2018。
でも、ファイナル公演初日の今日、一番最初に舞台に上がったのは樹だった。
暗い舞台でスポットライトを浴びて、マイクを持つ手が微かに震えている。
『…この度は、ファンの皆様に不快な思いをさせてしまい、本当に申し訳ありませんでした』
特別に中継を繋いでくれると樹から連絡が入ったのは昨日の夜。私はパソコンの画面越しに、その様子を見守っていた。
膝の上に座る日本号が不安そうに喉を鳴らす。
『前にも言ったんですけど、俺とさくらは本当に小さな頃からずっと一緒に育ってきた、家族同然の存在なんです。好きだとか、好意を持っているとか、そういう思いは一切ありません。それはお互いちゃんと分かっています』
物心つく前から、樹は当たり前に私の隣にいて。
確かに私は樹に片想いを続けているけど、それはたぶん恋ですら無いんだ。
ことばを仕事の道具とする私でもうまく表すことのできない、特別な関係。
左肩のタトゥーを無意識に撫でる。
『恐ろしい体験をして、傷ついたあいつには俺が必要でした。PBAの最終選考まで残れずに落ち込んでいた俺にも、あいつが必要でした』
俺たちのこと、ちゃんとファンのみんなに伝えてくる。きっと分かってもらえる。樹はそう言っていた。
世間は一度、私たちの関係を糾弾した。
人は自分のなかにある言葉に当てはまらない物事に出会った時、拒否反応を示す。小説家として、その気持ちはよく分かる。
私と樹の関係は、それぐらい特殊だった。
『たとえ世間に何と言われようとも、それが真実なんです。恋とか愛とか、そういう言葉で表すことのできない特別な関係なんです。俺の人生にさくらがいないなんて考えられない。俺は、たとえ名前のない関係だとしても、これからもずっもあいつと一緒にいたいんです』
樹の訴えに、客席の間からすすり泣く声が聞こえてきた。
伝わってる。
そう感じた。
樹の声が、言葉が、人の心を動かしている。
『許してください。俺とさくらが、共に歩いていくことを』
樹が泣いていた。
涙の間から、必死に言葉を絞り出していた。
その時。
舞台の両袖から、メンバー全員が姿を現す。
ステージにずらりと並ぶ16人の暴れん坊たち。
壱馬さんがマイクを口元に持っていく。
『ご迷惑とご心配をおかけしたファンのみなさん。俺たちからも謝罪させてください。本当にすみませんでした』
「壱馬さん…」
みんなの顔が涙で滲む。
日本号が涙の伝う私の頬を優しく舐めた。
『樹はダンスに対しての思いがメンバーの誰よりも強くて、応援してくださるファンの皆様に最高のエンターテインメントを届けようといつも努力していたのを、俺たちは1番近くで見てきました』
力矢さんが静かな声で言う。
『樹は、ファンの皆様を裏切るようなことは絶対にしません。今回出た記事の写真は確かに2人ですが、2人にとってはあれが普通のことなんです。それをあんな風に憶測だけの文章で世に出されるのは許せません』
私は溢れる涙を拭いながら、それでもみんなの姿を見つめていた。
ちゃんと見ていなくちゃ。
みんなの言葉を。
『俺たちはこれからも暴れ回っていきます。これまでに応援してくださったファンの皆様の期待を、いい意味で裏切っていけるようなエンターテインメントをお届けしていくことをここに約束します。だから、どうかこれからもTHE RAMPAGEを…樹を、俺たちを、それからさくらを。よろしくお願いします』
16人が、深々と頭を下げた。
客席から嗚咽と共に拍手が巻き起こる。
顔を上げられない樹の肩を、両側から北人さんと翔平が抱く。
私も涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら立ち上がった。
頭のなかに色とりどりの文字が湧き上がって、ぐるぐると渦巻いている。
熱い衝動が、私を突き動かした。
「書かなきゃ」
でも、ファイナル公演初日の今日、一番最初に舞台に上がったのは樹だった。
暗い舞台でスポットライトを浴びて、マイクを持つ手が微かに震えている。
『…この度は、ファンの皆様に不快な思いをさせてしまい、本当に申し訳ありませんでした』
特別に中継を繋いでくれると樹から連絡が入ったのは昨日の夜。私はパソコンの画面越しに、その様子を見守っていた。
膝の上に座る日本号が不安そうに喉を鳴らす。
『前にも言ったんですけど、俺とさくらは本当に小さな頃からずっと一緒に育ってきた、家族同然の存在なんです。好きだとか、好意を持っているとか、そういう思いは一切ありません。それはお互いちゃんと分かっています』
物心つく前から、樹は当たり前に私の隣にいて。
確かに私は樹に片想いを続けているけど、それはたぶん恋ですら無いんだ。
ことばを仕事の道具とする私でもうまく表すことのできない、特別な関係。
左肩のタトゥーを無意識に撫でる。
『恐ろしい体験をして、傷ついたあいつには俺が必要でした。PBAの最終選考まで残れずに落ち込んでいた俺にも、あいつが必要でした』
俺たちのこと、ちゃんとファンのみんなに伝えてくる。きっと分かってもらえる。樹はそう言っていた。
世間は一度、私たちの関係を糾弾した。
人は自分のなかにある言葉に当てはまらない物事に出会った時、拒否反応を示す。小説家として、その気持ちはよく分かる。
私と樹の関係は、それぐらい特殊だった。
『たとえ世間に何と言われようとも、それが真実なんです。恋とか愛とか、そういう言葉で表すことのできない特別な関係なんです。俺の人生にさくらがいないなんて考えられない。俺は、たとえ名前のない関係だとしても、これからもずっもあいつと一緒にいたいんです』
樹の訴えに、客席の間からすすり泣く声が聞こえてきた。
伝わってる。
そう感じた。
樹の声が、言葉が、人の心を動かしている。
『許してください。俺とさくらが、共に歩いていくことを』
樹が泣いていた。
涙の間から、必死に言葉を絞り出していた。
その時。
舞台の両袖から、メンバー全員が姿を現す。
ステージにずらりと並ぶ16人の暴れん坊たち。
壱馬さんがマイクを口元に持っていく。
『ご迷惑とご心配をおかけしたファンのみなさん。俺たちからも謝罪させてください。本当にすみませんでした』
「壱馬さん…」
みんなの顔が涙で滲む。
日本号が涙の伝う私の頬を優しく舐めた。
『樹はダンスに対しての思いがメンバーの誰よりも強くて、応援してくださるファンの皆様に最高のエンターテインメントを届けようといつも努力していたのを、俺たちは1番近くで見てきました』
力矢さんが静かな声で言う。
『樹は、ファンの皆様を裏切るようなことは絶対にしません。今回出た記事の写真は確かに2人ですが、2人にとってはあれが普通のことなんです。それをあんな風に憶測だけの文章で世に出されるのは許せません』
私は溢れる涙を拭いながら、それでもみんなの姿を見つめていた。
ちゃんと見ていなくちゃ。
みんなの言葉を。
『俺たちはこれからも暴れ回っていきます。これまでに応援してくださったファンの皆様の期待を、いい意味で裏切っていけるようなエンターテインメントをお届けしていくことをここに約束します。だから、どうかこれからもTHE RAMPAGEを…樹を、俺たちを、それからさくらを。よろしくお願いします』
16人が、深々と頭を下げた。
客席から嗚咽と共に拍手が巻き起こる。
顔を上げられない樹の肩を、両側から北人さんと翔平が抱く。
私も涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら立ち上がった。
頭のなかに色とりどりの文字が湧き上がって、ぐるぐると渦巻いている。
熱い衝動が、私を突き動かした。
「書かなきゃ」