第一章
夢小説設定
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焼肉屋の個室で待っていると、約束の時間ちょうどにさくらがやってきた。
「はぁ~東京人多くて疲れる」
「おつかれ」
マスクも帽子も取り払って、さくらは俺の向かい側に座る。
食に関心のないさくらの代わりに適当にチョイスした肉が網の上で美味しそうな匂いを漂わせ始めたところで、俺は尋ねた。
「サイン会どうだった?」
「疲れる」
顔が本当に疲れている。
こう見えて人見知りをするさくらからしたら、不特定多数の人と会って会話をするのはかなりの重労働だろう。
「そりゃ読者の人がいなかったら作家業は成り立たないからありがたいし、もちろん応援してくれるのはありがたいけどさ」
「うん」
「客寄せパンダにはなりたくないよ」
ぼそりと呟いた言葉。
長い付き合いから、さくらの疲労ゲージが限界に近いことが分かった。
「…何かあった?」
「可愛いですねって言われた」
他の女の子が聞いたら嫌味にしか聞こえないだろうけど。
さくらは小説家としての仕事の時に自分の容姿を褒められることを嫌がる。
それは作者というフィルターを外してひとつの文学として物語を楽しんでほしいからであり、そこに自分の容姿が介入してしまっては本当の文学とは呼べないという思いがあるから。
「嫌だったね」
「嫌だった」
俺はさくらのお猪口に日本酒を注いだ。
最近ようやく慣れてきたお酒の味。でも元来楽しいことが好きなさくらは蔵人好みの日本酒を好んで飲んでいる。
「あと握手するときに手をなんかやらしい感じで触ってくるおじさんがいっぱいいてそれも嫌だった」
さくらの白い喉が上下に動いてお酒を飲み込む。
たまに見せるこういうしょぼくれた顔が実は結構好きだと言ったらこいつは怒るだろうな。
「…ま、何かあったら相談しろよ」
「さすがイケメン」
「幼なじみだから、当然だよ」
好きとか、そういう感情かどうかは分からないけど。
でも俺は猫みたいに気まぐれで甘えん坊なさくらを放っておけないし、小説家としてのこれからを応援したい。
さくらは俺の心の特別な場所に住み着いている。
「…ていうかそれ何杯目?」
「10杯目」
「何で平気な顔してんの」
「うちは酒豪の家系だから」
「はぁ~東京人多くて疲れる」
「おつかれ」
マスクも帽子も取り払って、さくらは俺の向かい側に座る。
食に関心のないさくらの代わりに適当にチョイスした肉が網の上で美味しそうな匂いを漂わせ始めたところで、俺は尋ねた。
「サイン会どうだった?」
「疲れる」
顔が本当に疲れている。
こう見えて人見知りをするさくらからしたら、不特定多数の人と会って会話をするのはかなりの重労働だろう。
「そりゃ読者の人がいなかったら作家業は成り立たないからありがたいし、もちろん応援してくれるのはありがたいけどさ」
「うん」
「客寄せパンダにはなりたくないよ」
ぼそりと呟いた言葉。
長い付き合いから、さくらの疲労ゲージが限界に近いことが分かった。
「…何かあった?」
「可愛いですねって言われた」
他の女の子が聞いたら嫌味にしか聞こえないだろうけど。
さくらは小説家としての仕事の時に自分の容姿を褒められることを嫌がる。
それは作者というフィルターを外してひとつの文学として物語を楽しんでほしいからであり、そこに自分の容姿が介入してしまっては本当の文学とは呼べないという思いがあるから。
「嫌だったね」
「嫌だった」
俺はさくらのお猪口に日本酒を注いだ。
最近ようやく慣れてきたお酒の味。でも元来楽しいことが好きなさくらは蔵人好みの日本酒を好んで飲んでいる。
「あと握手するときに手をなんかやらしい感じで触ってくるおじさんがいっぱいいてそれも嫌だった」
さくらの白い喉が上下に動いてお酒を飲み込む。
たまに見せるこういうしょぼくれた顔が実は結構好きだと言ったらこいつは怒るだろうな。
「…ま、何かあったら相談しろよ」
「さすがイケメン」
「幼なじみだから、当然だよ」
好きとか、そういう感情かどうかは分からないけど。
でも俺は猫みたいに気まぐれで甘えん坊なさくらを放っておけないし、小説家としてのこれからを応援したい。
さくらは俺の心の特別な場所に住み着いている。
「…ていうかそれ何杯目?」
「10杯目」
「何で平気な顔してんの」
「うちは酒豪の家系だから」