第一章
夢小説設定
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「えっ、人間にも変身できるの?」
樹さんが目を丸くした。
「はい。あ…でも先にスカートとか履いておかないと…その、着るものが」
顔を赤くして口ごもる私を見て察してくれたのだろう、樹さんが言う。
「あー…うち男所帯だからズボンしかないけど…ちょっと待ってて、俺の持ってくる」
甲板を降りていった樹さんはすぐに服を持って戻ってくる。
「これ、1回も履いてないやつだから。あげる」
「ありがとうございます」
私はするりとズボンに尾ひれを通した。
しゅるしゅると音を立てながら尾ひれが解けるように2本の脚へと変わる。
進化の過程で陸上でも活動できるようにこのような変身能力が備わったらしい。
人魚には他にも色々な力がある。
「すご…こうやって見たらただの人間の女の子みたい。さっきも人魚の肉には長寿の力があるって言ってたし、人魚ってすごいんだね」
「ふふ、他にも色々あるんですよ。涙が宝石に変わったり、歌声は人を惑わせるし。あとは…ちょっと恥ずかしいんですけど」
「何?」
私はちょっと俯き加減になる。頬が赤いのを見られたくなくて。
「に、人魚のキスにはあらゆる怪我や病気を治す力があるんです」
樹さんが目を丸くする。
やっぱり言うんじゃなかった。恥ずかしすぎる。
と、そばでそれを聞いていた慎さんが「えっ」と声をあげた。
「じゃあ俺いらないじゃん」
「え?」
「いや俺、一応この船の船医だから」
慎さんがポケットから無数のメスを取り出した。それ持って真顔でいるの怖いからやめてほしい。
「何なに、うみにちゅーしてもらえるの?」
「健太さん端折りすぎです」
「あーちょっとそこ、サボんなよ。風を受けれないだろ」
上甲板から山彰さんが目ざとく言った。健太さんは「へーい」と返事をして渋々といった様子で持ち場に戻っていく。
「山彰さんは航海士なんですか?」
「ん?そうだよ、この船俺がいないとすぐ遭難しちゃうからね」
「それ言ったら俺いないとみんな餓死するでしょ!」
ちょうど甲板に上がってきた陸さんが美味しそうなスープ片手に唇を尖らせた。
「うみちゃんお腹すいてない?胃に優しいもので作ったから、良かったら」
「わぁ、ありがとうございます!」
ほわほわと湯気がたつスープの器をそっと傾ける。
その味に、私は目を見開いた。
「…!美味しい…」
思わず顔をほころばせる私を見て、陸さんも嬉しそうに笑う。
「ふふ、良かった。俺料理担当してるから、リクエストあったらいつでも言ってね!」
「あ、でもあんまり高い食材はNGだよ。ただでさえ食費高いんだから」
瑠唯さんが手を上げる。
「瑠唯さんはうちの主計長なんだよ」
「主計長?」
私が首を傾げると、樹さんが「航海の経費とかを計算して管理してくれる仕事」と説明してくれる。
要するに、この船のお財布の紐を締めるのが瑠唯さんということらしい。
「みなさん色々な役割があるんですね…」
「他にもあるよ。陸さんと壱馬さん、北人さんは楽士で、龍は操舵手…舵を操る仕事。昂秀は大砲を打つ砲撃手、それから拓磨は船大工」
「…樹さんは?健太さんや翔吾さん、翔平さん、海青さんも」
私の質問に、樹さんは黙ってふわりと微笑んだ。
それだけで、私の胸はどくんと高鳴る。
しゃらん
おもむろに樹さんが腰に佩いた日本刀を抜く。
細身の刀身が妖しく、美しく煌めく。
そのまま樹さんは刀をくるくると回しながら、舞い踊るかのようにステップを踏み始めた。
筋肉が躍動する。
静と乱。
刀を振るその姿はまるで芸術だった。
ひゅ
私の喉元数ミリ前で刃がぴたりと止まる。
樹さんは右の頬だけで笑ってみせた。
「俺は戦闘員。戦うのが仕事」
私はこくりと唾を飲み込んで、そっと身体を後ろに傾ける。
気を抜いたらその美しい切っ先に吸い込まれてしまいそうで。
樹さんは刀を鞘に収めるとふっと息をついた。
「俺たちは海賊…奪うのが本職だからね。物に留まらず、命だって奪う」
私はメインマストのてっぺんを見上げた。
そこに翻る、THE RAMPAGEと髑髏の旗。
そうだ。
彼らは野蛮な海の無法者たち。
「海賊に戦いはつきもの。だから…」
樹さんがふいに私の手を引っ張って立ち上がらせた。
とん、と樹さんの逞しい胸板にぶつかる。
すぐ目の前に樹さんの整った顔。
悪戯っぽく微笑まれて、私の心臓はまたどくんと高鳴った。
「俺が怪我した時は、うみのキスで治してね?」
樹さんが目を丸くした。
「はい。あ…でも先にスカートとか履いておかないと…その、着るものが」
顔を赤くして口ごもる私を見て察してくれたのだろう、樹さんが言う。
「あー…うち男所帯だからズボンしかないけど…ちょっと待ってて、俺の持ってくる」
甲板を降りていった樹さんはすぐに服を持って戻ってくる。
「これ、1回も履いてないやつだから。あげる」
「ありがとうございます」
私はするりとズボンに尾ひれを通した。
しゅるしゅると音を立てながら尾ひれが解けるように2本の脚へと変わる。
進化の過程で陸上でも活動できるようにこのような変身能力が備わったらしい。
人魚には他にも色々な力がある。
「すご…こうやって見たらただの人間の女の子みたい。さっきも人魚の肉には長寿の力があるって言ってたし、人魚ってすごいんだね」
「ふふ、他にも色々あるんですよ。涙が宝石に変わったり、歌声は人を惑わせるし。あとは…ちょっと恥ずかしいんですけど」
「何?」
私はちょっと俯き加減になる。頬が赤いのを見られたくなくて。
「に、人魚のキスにはあらゆる怪我や病気を治す力があるんです」
樹さんが目を丸くする。
やっぱり言うんじゃなかった。恥ずかしすぎる。
と、そばでそれを聞いていた慎さんが「えっ」と声をあげた。
「じゃあ俺いらないじゃん」
「え?」
「いや俺、一応この船の船医だから」
慎さんがポケットから無数のメスを取り出した。それ持って真顔でいるの怖いからやめてほしい。
「何なに、うみにちゅーしてもらえるの?」
「健太さん端折りすぎです」
「あーちょっとそこ、サボんなよ。風を受けれないだろ」
上甲板から山彰さんが目ざとく言った。健太さんは「へーい」と返事をして渋々といった様子で持ち場に戻っていく。
「山彰さんは航海士なんですか?」
「ん?そうだよ、この船俺がいないとすぐ遭難しちゃうからね」
「それ言ったら俺いないとみんな餓死するでしょ!」
ちょうど甲板に上がってきた陸さんが美味しそうなスープ片手に唇を尖らせた。
「うみちゃんお腹すいてない?胃に優しいもので作ったから、良かったら」
「わぁ、ありがとうございます!」
ほわほわと湯気がたつスープの器をそっと傾ける。
その味に、私は目を見開いた。
「…!美味しい…」
思わず顔をほころばせる私を見て、陸さんも嬉しそうに笑う。
「ふふ、良かった。俺料理担当してるから、リクエストあったらいつでも言ってね!」
「あ、でもあんまり高い食材はNGだよ。ただでさえ食費高いんだから」
瑠唯さんが手を上げる。
「瑠唯さんはうちの主計長なんだよ」
「主計長?」
私が首を傾げると、樹さんが「航海の経費とかを計算して管理してくれる仕事」と説明してくれる。
要するに、この船のお財布の紐を締めるのが瑠唯さんということらしい。
「みなさん色々な役割があるんですね…」
「他にもあるよ。陸さんと壱馬さん、北人さんは楽士で、龍は操舵手…舵を操る仕事。昂秀は大砲を打つ砲撃手、それから拓磨は船大工」
「…樹さんは?健太さんや翔吾さん、翔平さん、海青さんも」
私の質問に、樹さんは黙ってふわりと微笑んだ。
それだけで、私の胸はどくんと高鳴る。
しゃらん
おもむろに樹さんが腰に佩いた日本刀を抜く。
細身の刀身が妖しく、美しく煌めく。
そのまま樹さんは刀をくるくると回しながら、舞い踊るかのようにステップを踏み始めた。
筋肉が躍動する。
静と乱。
刀を振るその姿はまるで芸術だった。
ひゅ
私の喉元数ミリ前で刃がぴたりと止まる。
樹さんは右の頬だけで笑ってみせた。
「俺は戦闘員。戦うのが仕事」
私はこくりと唾を飲み込んで、そっと身体を後ろに傾ける。
気を抜いたらその美しい切っ先に吸い込まれてしまいそうで。
樹さんは刀を鞘に収めるとふっと息をついた。
「俺たちは海賊…奪うのが本職だからね。物に留まらず、命だって奪う」
私はメインマストのてっぺんを見上げた。
そこに翻る、THE RAMPAGEと髑髏の旗。
そうだ。
彼らは野蛮な海の無法者たち。
「海賊に戦いはつきもの。だから…」
樹さんがふいに私の手を引っ張って立ち上がらせた。
とん、と樹さんの逞しい胸板にぶつかる。
すぐ目の前に樹さんの整った顔。
悪戯っぽく微笑まれて、私の心臓はまたどくんと高鳴った。
「俺が怪我した時は、うみのキスで治してね?」