第一章
夢小説設定
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「何やってんねんお前らは!」
船上にこの海賊団の船長だという陣さんの怒声が響いた。仁王立ちする陣さんの前では樹さんと翔平さんが正座させられている。
「せっかく地上でゆっくりできると思ったら滞在時間はまさかの1時間…しかも敵をわんさか引き連れて。仲間を危険に晒してまで何やらかしたかと思えば…」
16人分の視線が私に注がれる。
「人魚……!人魚て…!俺にはもう何が何だか分からない…!」
「俺も未だに信じられません」
「じゃあ何で攫ってきたんだよ」
樹さんは平然として言い放った。
「だって人魚ですよ。男のロマンじゃないすか」
「お前何言ってんの?」
ダメだ、いたたまれない。そばで見ていた私はそっと手を上げる。
「あ、あの…この方は私を助けてくださったんです…責めるなら私を…」
「…それを言われると俺も何も言えへんのやけど」
陣さんは困り顔で頭をかく。
と、それまで黙っていたもうひとりの船長、力矢さんが口を開いた。
「君、名前は?本当に人魚なの?」
「私は人魚族のうみと言います。正真正銘の人魚です」
人魚という種族が繁栄していたのははるか1万年前。東の果ての島でひっそりと暮らしていた。
しかし人間に島が見つかってしまい、大量に乱獲されてしまう。
人魚の肉には長寿の力があったから。
私の先祖たちはそうして闇ルートで取引され、世界の王侯貴族や権力者たちに食べられてきた。
その結果人魚はあっという間に数を減らし、今では絶滅寸前の種族となってしまった。
私自身、両親以外に人魚を見たことがない。
「私はここからずっと南の海で両親と暮らしていました」
人間に見つかれば捕まってしまうため、海面には行くなと両親からきつく言われていた。
しかしある日、魚たちと戯れていると海に人間の男が落ちてくる。
どうやらその人は泳げないらしく、今にも溺れて死んでしまいそうだった。
「たとえ私たちを食べようとする人間でも、目の前で死んでいくのを黙って見ていることはできませんでした」
私はその男性を海面まで連れていき、彼が乗っていたであろう船を見つけた。
「今まで人間と関わってこなかった私はその船が海賊船で、彼が海賊の一員だということが分からなかったんです」
お前は少しドジなところがあるから、昔からよく両親に言われてきた言葉を思い出したのはその海賊に捕まってからだった。
「それが1ヶ月前のこと…助けていただき、本当にありがとうございました。あのままだったら私は死んでいた」
私は深々と頭を下げた。
「えぇと…しつこくて申し訳ないんだけど」
力矢さんが頭をかきながら尋ねる。
「本当に、人魚?なの?」
「はい。間違いなく本物です」
私はベンチに腰掛けたままヒレを軽く振った。
「本物の人魚…やべぇな…」
語彙力がぶっ飛んでしまったらしい力矢さんがため息をつく。
他の15人もしげしげと私の姿を眺めていたが、私を助けてくれた樹さんが口を開く。
「これから、行くあてはあるの?」
「え?あ、とにかく両親のところに戻りたいと思ってます」
「どうやって?」
「が、頑張って泳ぎます。たぶん1ヶ月ほどかかりますが…」
「1ヶ月」
樹さんはそれきり何やら考え込むように黙ってしまう。どうやらもともと口数が多い方ではないらしい。
そんな樹さんを見ていたもうひとりの船長、陣さんが何かを察したようにため息をついた。
「樹の考えてることは何となく分かる。まぁ、ここまで来たら乗りかかった船やし」
16人全員が笑って頷いた。
どうしたんだろう。私だけが分かってないみたいだけど。
樹さんが私に笑いかけた。
「俺たちがうみの住んでた海まで送り届けてあげる」
「え!?いや、いいですそんな!命を助けてもらったうえにそんな…迷惑ばかりかけられません」
「別に迷惑なんて思ってないよ。俺たちはこの海で一番自由な海賊。気の向くまま、財宝とロマンを求めて航海するだけ。人魚と一緒に海を渡るなんて、すげぇ面白そうやし」
壱馬さんが言う。
「ていうかひとりで海を泳いでくなんて寂しいでしょ?どうせなら旅は楽しい方がいい。俺たちが色んな素敵なこと、教えてあげる」
北人さんがニヤニヤ笑いながら「なー樹?」と樹さんの肩を小突いた。樹さんめちゃくちゃ嫌そうな顔してるけど北人さんは全く気にしていない。
「でも…」
「…やっぱり男だらけだと怖い?そうだよね、しかも俺たち海賊だし…」
食い下がる私の様子を見て、龍さんがしゅんとしてしまった。
いかつい見た目によらず可愛らしい仕草に、思わず胸がきゅんとしてしまう。可愛い。
…この人たちなら。信じてもいいかもしれない。
私は心を決めると、16人全員の顔を見て言った。
「よろしくお願いします」
船上にこの海賊団の船長だという陣さんの怒声が響いた。仁王立ちする陣さんの前では樹さんと翔平さんが正座させられている。
「せっかく地上でゆっくりできると思ったら滞在時間はまさかの1時間…しかも敵をわんさか引き連れて。仲間を危険に晒してまで何やらかしたかと思えば…」
16人分の視線が私に注がれる。
「人魚……!人魚て…!俺にはもう何が何だか分からない…!」
「俺も未だに信じられません」
「じゃあ何で攫ってきたんだよ」
樹さんは平然として言い放った。
「だって人魚ですよ。男のロマンじゃないすか」
「お前何言ってんの?」
ダメだ、いたたまれない。そばで見ていた私はそっと手を上げる。
「あ、あの…この方は私を助けてくださったんです…責めるなら私を…」
「…それを言われると俺も何も言えへんのやけど」
陣さんは困り顔で頭をかく。
と、それまで黙っていたもうひとりの船長、力矢さんが口を開いた。
「君、名前は?本当に人魚なの?」
「私は人魚族のうみと言います。正真正銘の人魚です」
人魚という種族が繁栄していたのははるか1万年前。東の果ての島でひっそりと暮らしていた。
しかし人間に島が見つかってしまい、大量に乱獲されてしまう。
人魚の肉には長寿の力があったから。
私の先祖たちはそうして闇ルートで取引され、世界の王侯貴族や権力者たちに食べられてきた。
その結果人魚はあっという間に数を減らし、今では絶滅寸前の種族となってしまった。
私自身、両親以外に人魚を見たことがない。
「私はここからずっと南の海で両親と暮らしていました」
人間に見つかれば捕まってしまうため、海面には行くなと両親からきつく言われていた。
しかしある日、魚たちと戯れていると海に人間の男が落ちてくる。
どうやらその人は泳げないらしく、今にも溺れて死んでしまいそうだった。
「たとえ私たちを食べようとする人間でも、目の前で死んでいくのを黙って見ていることはできませんでした」
私はその男性を海面まで連れていき、彼が乗っていたであろう船を見つけた。
「今まで人間と関わってこなかった私はその船が海賊船で、彼が海賊の一員だということが分からなかったんです」
お前は少しドジなところがあるから、昔からよく両親に言われてきた言葉を思い出したのはその海賊に捕まってからだった。
「それが1ヶ月前のこと…助けていただき、本当にありがとうございました。あのままだったら私は死んでいた」
私は深々と頭を下げた。
「えぇと…しつこくて申し訳ないんだけど」
力矢さんが頭をかきながら尋ねる。
「本当に、人魚?なの?」
「はい。間違いなく本物です」
私はベンチに腰掛けたままヒレを軽く振った。
「本物の人魚…やべぇな…」
語彙力がぶっ飛んでしまったらしい力矢さんがため息をつく。
他の15人もしげしげと私の姿を眺めていたが、私を助けてくれた樹さんが口を開く。
「これから、行くあてはあるの?」
「え?あ、とにかく両親のところに戻りたいと思ってます」
「どうやって?」
「が、頑張って泳ぎます。たぶん1ヶ月ほどかかりますが…」
「1ヶ月」
樹さんはそれきり何やら考え込むように黙ってしまう。どうやらもともと口数が多い方ではないらしい。
そんな樹さんを見ていたもうひとりの船長、陣さんが何かを察したようにため息をついた。
「樹の考えてることは何となく分かる。まぁ、ここまで来たら乗りかかった船やし」
16人全員が笑って頷いた。
どうしたんだろう。私だけが分かってないみたいだけど。
樹さんが私に笑いかけた。
「俺たちがうみの住んでた海まで送り届けてあげる」
「え!?いや、いいですそんな!命を助けてもらったうえにそんな…迷惑ばかりかけられません」
「別に迷惑なんて思ってないよ。俺たちはこの海で一番自由な海賊。気の向くまま、財宝とロマンを求めて航海するだけ。人魚と一緒に海を渡るなんて、すげぇ面白そうやし」
壱馬さんが言う。
「ていうかひとりで海を泳いでくなんて寂しいでしょ?どうせなら旅は楽しい方がいい。俺たちが色んな素敵なこと、教えてあげる」
北人さんがニヤニヤ笑いながら「なー樹?」と樹さんの肩を小突いた。樹さんめちゃくちゃ嫌そうな顔してるけど北人さんは全く気にしていない。
「でも…」
「…やっぱり男だらけだと怖い?そうだよね、しかも俺たち海賊だし…」
食い下がる私の様子を見て、龍さんがしゅんとしてしまった。
いかつい見た目によらず可愛らしい仕草に、思わず胸がきゅんとしてしまう。可愛い。
…この人たちなら。信じてもいいかもしれない。
私は心を決めると、16人全員の顔を見て言った。
「よろしくお願いします」