第二章
夢小説設定
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ザザーン…ザザーン…
「あー…こんなに暖かいと平和ボケしてくるな」
「ここなら暗礁がいっぱいあってうみの案内がないと船は入ってこれませんし、海軍や他の海賊との戦いはなさそうですね」
「…リアリストだね樹は」
俺と北人さんは船べりに肘を乗せて穏やかな海を眺めていた。
南国特有の透明度が高いネオンブルー。
THE RAMPAGE号が停泊しているのは綺麗な白いビーチに囲われた湾内だ。メンバーたちは島に降りて日光浴をしたり、果物を取りに行ったり思い思いに過ごしている。他にも付近に数えきれないほど点在する小さな島々に探検に出かけているメンバーもいた。
そんな美しい海、珊瑚礁の間をすいすいと泳ぐ3人の人魚。
うみと、その両親だった。
そう。
到着したのだ。
約束の海に。
「うみの親は樹とうみが恋人同士だってこと知ってるの?昨日の夜4人でなんか話してたでしょ」
「まぁ、はい。最初はびっくりしてましたけど、ちゃんと説明したら分かってくれました」
うみの故郷に到着したのは一週間前。
両親は突然消えた一人娘の生存を信じ、ここで待ち続けていたという。
待ちに待ったうみが海賊に連れられ帰ってきたのを見た両親は卒倒しそうな勢いで驚いていたが、うみがことの顛末を細かく説明すると理解してくれた。
その後はいたく感謝され、手厚い歓迎を受け、俺たちも思うところあって長いことここに留まっている。
「…で、どうすんだよ」
北人さんが目だけを動かして俺を見た。
人魚の家族は海の中で、この上なく幸福そうに笑っている。
「俺には…あの家族を引き離すようなマネはできません」
俺とうみの目下の悩みはそれだった。
これからどうするのか。
どうしたいのか。
この1週間はみんな見ないふりをしていた。決断を下さなければいけないことを分かっていて、俺たちもうみも、うみの両親も楽しいことにだけ目を向けていた。
でも、俺たちは海賊。
冒険を求めて終わらない航海を続ける者たち。
いつまでもここにいるわけにはいかないだろう。
「じゃあ、うみをここに置いてくの?」
「…それはあいつが決めることです」
「狡い男だね」
北人さんが笑った。
そんなの、俺だって分かっている。
でも、他にどうしろというのか。
これまでの航海で出会った女たちとは、後腐れなく別れることができる所までで意図的にストップをかけていた。
でも、うみだけは。
うみの瞳と同じ色の海を眺めながら、俺はぽろぽろと言葉をこぼす。
「初めてなんです。あいつが幸せなら何だっていいって思えるのが」
「俺たちと同じ船に乗って樹と一緒にいるよりも、家族で暮らした方が幸せだってうみが言った?」
「いや…それは、」
うみは何も言っていない。
何も。
ここに残りたいとも、俺たちと一緒に行きたいとも、一切口に出していないのだ。
それとなく尋ねてみてもはぐらかされる。宙ぶらりんのまま、気づけば1週間が経っていた。
「俺たちは札付きの海賊だ。うみは俺が絶対に守るし、俺自身誰にも負けるつもりはないけど、でも…やっぱりあいつには俺たちの航海は危険すぎます」
海から顔を出したうみが、俺たちが船の上にいることに気づいて手を振った。軽く振り返すと、嬉しそうにはにかんでまた潜っていく。
その笑顔が、たまらなく愛しいのだ。
「…樹いますごいブサイクな顔してるよ」
北人さんにからかわれて、俺は慌てて緩んだ頬を引き締めた。
舷縁にもたれかかった北人さんが海の方を見ながらぼそりと呟く。
「そんなに好きなら掻っ攫っちゃえばいいのに」
「…いや、だから」
「樹は一緒に来て欲しいんでしょ?」
ストレートに尋ねられ、俺はぐっと言葉に詰まる。
俺は。
俺の本心は。
「……当たり前です。特別なひとですから」
そんなに長い時間を生きてはいないけど、断言できる。
うみこそが、俺の運命の相手だと。
北人さんがまた笑った。
「じゃあ、奪っちゃえばいい」
潮風が吹いた。
「俺たちは海賊なんだから」
「あー…こんなに暖かいと平和ボケしてくるな」
「ここなら暗礁がいっぱいあってうみの案内がないと船は入ってこれませんし、海軍や他の海賊との戦いはなさそうですね」
「…リアリストだね樹は」
俺と北人さんは船べりに肘を乗せて穏やかな海を眺めていた。
南国特有の透明度が高いネオンブルー。
THE RAMPAGE号が停泊しているのは綺麗な白いビーチに囲われた湾内だ。メンバーたちは島に降りて日光浴をしたり、果物を取りに行ったり思い思いに過ごしている。他にも付近に数えきれないほど点在する小さな島々に探検に出かけているメンバーもいた。
そんな美しい海、珊瑚礁の間をすいすいと泳ぐ3人の人魚。
うみと、その両親だった。
そう。
到着したのだ。
約束の海に。
「うみの親は樹とうみが恋人同士だってこと知ってるの?昨日の夜4人でなんか話してたでしょ」
「まぁ、はい。最初はびっくりしてましたけど、ちゃんと説明したら分かってくれました」
うみの故郷に到着したのは一週間前。
両親は突然消えた一人娘の生存を信じ、ここで待ち続けていたという。
待ちに待ったうみが海賊に連れられ帰ってきたのを見た両親は卒倒しそうな勢いで驚いていたが、うみがことの顛末を細かく説明すると理解してくれた。
その後はいたく感謝され、手厚い歓迎を受け、俺たちも思うところあって長いことここに留まっている。
「…で、どうすんだよ」
北人さんが目だけを動かして俺を見た。
人魚の家族は海の中で、この上なく幸福そうに笑っている。
「俺には…あの家族を引き離すようなマネはできません」
俺とうみの目下の悩みはそれだった。
これからどうするのか。
どうしたいのか。
この1週間はみんな見ないふりをしていた。決断を下さなければいけないことを分かっていて、俺たちもうみも、うみの両親も楽しいことにだけ目を向けていた。
でも、俺たちは海賊。
冒険を求めて終わらない航海を続ける者たち。
いつまでもここにいるわけにはいかないだろう。
「じゃあ、うみをここに置いてくの?」
「…それはあいつが決めることです」
「狡い男だね」
北人さんが笑った。
そんなの、俺だって分かっている。
でも、他にどうしろというのか。
これまでの航海で出会った女たちとは、後腐れなく別れることができる所までで意図的にストップをかけていた。
でも、うみだけは。
うみの瞳と同じ色の海を眺めながら、俺はぽろぽろと言葉をこぼす。
「初めてなんです。あいつが幸せなら何だっていいって思えるのが」
「俺たちと同じ船に乗って樹と一緒にいるよりも、家族で暮らした方が幸せだってうみが言った?」
「いや…それは、」
うみは何も言っていない。
何も。
ここに残りたいとも、俺たちと一緒に行きたいとも、一切口に出していないのだ。
それとなく尋ねてみてもはぐらかされる。宙ぶらりんのまま、気づけば1週間が経っていた。
「俺たちは札付きの海賊だ。うみは俺が絶対に守るし、俺自身誰にも負けるつもりはないけど、でも…やっぱりあいつには俺たちの航海は危険すぎます」
海から顔を出したうみが、俺たちが船の上にいることに気づいて手を振った。軽く振り返すと、嬉しそうにはにかんでまた潜っていく。
その笑顔が、たまらなく愛しいのだ。
「…樹いますごいブサイクな顔してるよ」
北人さんにからかわれて、俺は慌てて緩んだ頬を引き締めた。
舷縁にもたれかかった北人さんが海の方を見ながらぼそりと呟く。
「そんなに好きなら掻っ攫っちゃえばいいのに」
「…いや、だから」
「樹は一緒に来て欲しいんでしょ?」
ストレートに尋ねられ、俺はぐっと言葉に詰まる。
俺は。
俺の本心は。
「……当たり前です。特別なひとですから」
そんなに長い時間を生きてはいないけど、断言できる。
うみこそが、俺の運命の相手だと。
北人さんがまた笑った。
「じゃあ、奪っちゃえばいい」
潮風が吹いた。
「俺たちは海賊なんだから」