第二章
夢小説設定
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海の神様は残酷だと思ったが、どうやら違ったようだ。
こんなサプライズを用意してくれるなんて。
「うみの声が聞こえた。『いかないで』って」
樹さんの頬から傷が消えていた。
頬だけじゃない。
銃弾に貫かれた傷口も、脚の切り傷も。
もともとの古傷も。
きれいに消えていた。
「俺のところから勝手にいなくなったのはうみの方だろ、バカ」
樹さんは小さく微笑んで私の頬を指でなぞる。
「な、んで…」
「愛するひとからのキスは、どんな薬よりも効くんだよ」
あっさりと言い放つと、樹さんは身体を起こした。
「みんなにも…心配かけてすみません」
15人はぽかんとして樹さんを見つめていたが、やがて翔平さんがぼそりと呟く。
「樹が生きてた…」
それをきっかけに、砂浜に歓喜の雄叫びがこだまする。
樹さんはむさくるしい男たちに飛びつかれて、砂浜にどさりと倒れ込んだ。
「うわっ…ちょ、やめてください」
「冷たい!!うみにはあんなにデレデレなのに!!」
「そんな樹さんが好きです!!」
「ホンマに死んだかと思ったやろバカ!!心配かけやがって!!」
大喜びのみんなを、私は呆然と眺めていた。
樹さんが生きてる。
私のキスが、樹さんの魂を呼び戻した。
そんなことって…
「うみ」
ふいに、樹さんが私の名前を呼んだ。
歩み寄ってくると、膝をついて私の手を取る。
「俺は、答えたから」
「え?」
答えたって、
何に…?
「俺の気持ちはもう伝えた」
樹さんの気持ち。
波のなかで届いた、あいのことば。
空いている方の手で、胸元のネックレスに触れた。
「もう迷わない」
この恋は実らないと、そう思っていた。
人間と人魚、陸と海に暮らす者。私たちは決して相容れない存在だと。
でも違ったんだ。
この海で最も自由な彼らにとっては、種族なんて関係なかった。
外の世界を何も知らず、怯えて勝手に築いていた壁をいとも簡単に壊して連れ出してくれた。
ほら見てごらん、と。
海はこんなにも雄大で美しい。
海は陸と陸、人と人、種族と種族を繋ぐ場所なのだと。
漣が尾ひれを濡らした。
繋いだ手をぎゅっと握る。
「俺はずっと、うみのそばにいるから。うみももう、どこにも行くな」
涙が零れる。
それは波に当たって、1粒の宝石となった。
アクアマリン。
「はい。隣に、いさせてください」
石言葉、幸福に満ちる。
こんなサプライズを用意してくれるなんて。
「うみの声が聞こえた。『いかないで』って」
樹さんの頬から傷が消えていた。
頬だけじゃない。
銃弾に貫かれた傷口も、脚の切り傷も。
もともとの古傷も。
きれいに消えていた。
「俺のところから勝手にいなくなったのはうみの方だろ、バカ」
樹さんは小さく微笑んで私の頬を指でなぞる。
「な、んで…」
「愛するひとからのキスは、どんな薬よりも効くんだよ」
あっさりと言い放つと、樹さんは身体を起こした。
「みんなにも…心配かけてすみません」
15人はぽかんとして樹さんを見つめていたが、やがて翔平さんがぼそりと呟く。
「樹が生きてた…」
それをきっかけに、砂浜に歓喜の雄叫びがこだまする。
樹さんはむさくるしい男たちに飛びつかれて、砂浜にどさりと倒れ込んだ。
「うわっ…ちょ、やめてください」
「冷たい!!うみにはあんなにデレデレなのに!!」
「そんな樹さんが好きです!!」
「ホンマに死んだかと思ったやろバカ!!心配かけやがって!!」
大喜びのみんなを、私は呆然と眺めていた。
樹さんが生きてる。
私のキスが、樹さんの魂を呼び戻した。
そんなことって…
「うみ」
ふいに、樹さんが私の名前を呼んだ。
歩み寄ってくると、膝をついて私の手を取る。
「俺は、答えたから」
「え?」
答えたって、
何に…?
「俺の気持ちはもう伝えた」
樹さんの気持ち。
波のなかで届いた、あいのことば。
空いている方の手で、胸元のネックレスに触れた。
「もう迷わない」
この恋は実らないと、そう思っていた。
人間と人魚、陸と海に暮らす者。私たちは決して相容れない存在だと。
でも違ったんだ。
この海で最も自由な彼らにとっては、種族なんて関係なかった。
外の世界を何も知らず、怯えて勝手に築いていた壁をいとも簡単に壊して連れ出してくれた。
ほら見てごらん、と。
海はこんなにも雄大で美しい。
海は陸と陸、人と人、種族と種族を繋ぐ場所なのだと。
漣が尾ひれを濡らした。
繋いだ手をぎゅっと握る。
「俺はずっと、うみのそばにいるから。うみももう、どこにも行くな」
涙が零れる。
それは波に当たって、1粒の宝石となった。
アクアマリン。
「はい。隣に、いさせてください」
石言葉、幸福に満ちる。