第二章
夢小説設定
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「あの洞窟…!」
北人さんが前方を指さした。
入口のぬかるみに、足跡が残っている。
あそこだ。間違いない。
「行きましょう」
「うん」
罠かもしれないとか、そんなことはどうでもよかった。
そこにうみがいる可能性が少しでもあるのなら。
地獄の果てだって、どこへだって行ってやる。
入口は人ひとりが通れる程度。しかし奥へ進むにつれてどんどん広がっていき、俺たちはついにその最奥へと到達した。
「…来たか。海賊THE RAMPAGE」
「式島…!」
普段の冒険だったらあちこちで山のように積み重なる金銀宝石に大喜びしていたことだろう。
でも今はそれどころじゃない。
式島とその両サイドに並ぶ海兵たち、およそ30人ほど。
さらにその後ろから、掠れた声が俺を呼ぶ。
「樹、さん、」
はっと視線を巡らせる。
海兵たちの足の間から見えた、ネオンブルーの瞳。
いる。そこに。
「うみ!!!!!」
「うみ、無事!?」
「ほくとさんも……ッ、う」
様子がおかしい。
「うみに何をした…!」
「何もしていないが?だが…そうだな、この人魚を水槽から出して23時間。軍に残る資料に、『人魚は1日以上水から離れていると呼吸困難で死んでしまう』というような記述があった」
全身の毛が総毛立つような怒りが俺を貫いた。
うみは俺たちのために自ら海軍のもとに下った。
懸賞金がもとに戻り、海軍の追手がぱたりと姿を見せなくなったのだってきっとうみが海軍と取引をしたからだ。
それなのに、こいつは。
「タイムリミットは1時間。それまでに決着をつけようじゃないか、THE RAMPAGE」
「ぶっ殺してやる」
言い終わらないうちに俺は飛び出した。
俺を狙う銃弾を全て弾き返し、瞬く間に式島と距離を詰める。
ひゅ
空中で身体を捻って、その喉元を狙って刃を振る。
しかし、式島は目にも止まらぬスピードで両腰のファルシオンを抜くと、身体の前でクロスさせた。
鋼と鋼がぶつかり合い火花が散る。
俺と式島は至近距離で睨み合った。
「はっ…よほどこの人魚が大事らしいな」
「仲間だから、当然だろ」
「それだけか?」
こんな男に腹の中を踏み荒らされるのがこの上なく不愉快で、俺は無理やり刀を振り上げる。
ガラ空きになった胴に向かって切っ先を突き出すも、間一髪で躱された。
その時、背後から別の海兵が俺に銃口を向ける。
「おっと」
北人さんの大鎌がその海兵の身体を真っ二つにざくりと分断する。
「お前らは俺が殺る。『THE RAMPAGEの死神』がね」
海兵の群れを北人さんが鋭く睨みつけた。
ありがたい。こちらに集中できそうだ。
「ならば、俺の相手はお前か。『静寂の剣客』」
「俺にお前は役不足だな」
「ほざけ」
式島の背後では、うみがもがき苦しんでいる。
俺が今この場で最優先させなければいけないものなんて、ひとつしかない。
ひゅ、ひゅ、と不規則で浅い呼吸の音が聞こえてくる。
時間がない。
「い、いつき、さ……ッ、」
式島の2本の剣が猛然と俺に襲いかかる。
それらを受け止め、躱しながら俺は呟いた。
「邪魔だ」
タンッ
鍛錬がアダになることもある。
非力な奴の腕を飛び石にしようとしても人ひとりを支え切るような筋肉はないだろうから。
俺はぐっと腰を落として地を蹴ると、俺に向かって伸びた式島の腕の上に乗った。
「……ッ!」
すぐさま空いた方の剣が俺のふくらはぎを狙うが、その時には俺は再び踏み切り、式島の頭上を越えていた。
「お前に用はないんだよ、式島」
俺はすぐさま走り出し、地面に転がるうみの身体を抱える。
「…どこへ行く」
ざくりと背中を熱い痛みが走った。
でもそんなのに構ってる暇はない。
俺はうみを抱えたまま目の前の大きな水たまりに飛び込んだ。
どこまでも沈んでいきながら、うみの細い身体を強く抱きしめる。
うみ、うみ、うみ……!
背中にまわした腕にぎゅっと力を込めて、心の中で名前を呼び続ける。
お願いだ。目を開けて。
パライバトルマリンのネックレスがふわりと浮き上がる。
その向こうで、その宝石と同じ色をしたうみの瞳がカッと見開かれた。
かと思ったら俺の首の後ろに手枷がかかったままの両手を回し、ぐるりと身体を回転させる。
尾ひれに絡みついていた鎖が外れた。
「…1分だけ、我慢してください!」
瞬間、うみは俺を抱えたまま物凄い勢いで出口めがけて進み始める。
見えた。
ひかりだ。
ザバッ
「っぷは、」
そこは、俺たちの船のすぐそばだった。
船上ではまさに戦いの真っ最中。
「樹!?…あっ、うみだ!うみも一緒だ!」
健太さんがトライデントに突き刺した敵を海へ放り投げながら俺たちを見て大喜びする。
うみは俺を海岸に引き上げると、波打ち際で手錠を外そうともがいた。
「動かないで」
両手首の枷を繋ぐ鎖を掴む。
そのまま力を込めてひっぱると、バキっという音がして鉄の鎖がちぎれた。
「…あ、ありがとうございます」
うみが、目の前にいる。
鉄製の首輪と、鎖のちぎれた手枷を見ると改めて怒りと恐怖が湧き上がってきて、俺はうみの身体をぐっと引き寄せた。
額と額を合わせる。
「言いたいこといっぱいあるけど、まずはこの戦いにケリつけてくる。もうどこにも行くな」
「……はい…っ」
俺は小さく笑いかけると、濡れた刀を一振りして立ち上がった。
「樹!!他の奴らは!!??」
船の上から山彰さんがどなる。
「大丈夫です。生きてます」
俺が刀の先でジャングルを示すと、ちょうど奥から誰かが現れた所だった。
「いってぇ~…木から落とされてアバラやられた…」
翔吾さんが脇腹を押さえながらやってきたと思えば、
「ほら、陣くんもうちょっとで森抜ける!ていうか俺だって腕撃たれて痛いんだから自分で歩いてよ!」
「俺、足斬られてんねんぞ!?自分で歩けとか鬼か!むしろこんな身体で戦いきった俺を褒めて欲しいわ!」
陣さんと陸さんが互いの肩を支え合いながら現れる。さらにその後ろからは、それぞれ敵の死体を引きずった壱馬さん、慎、翔平が歩いてきた。
「疲れた…医者が傷だらけっておかしくないですか」
「まぁまぁそう言うな慎。翔平見てみ、血ぃ流しすぎて鉄分足りないからって川で捕まえた魚そのまま食ってんで。自己治癒力の塊や」
「鉄の味がするぜ!!!」
そしてその後ろ。
森の中を走ってくる人影。
「あっ樹!うみ!置いてくなよ二人とも!!」
北人さんだ。
…あとは、招かれざる客か。
背後の海から、ザバッと勢いよく飛び出してきた男。
俺は振り返りざまにその男の剣を受け、弾き飛ばした。
髪から水を滴らせた彼は、砂浜でゆっくりと立ち上がる。
「…正義は必ず勝つ。さぁ、決着をつけようじゃないか」
北人さんが前方を指さした。
入口のぬかるみに、足跡が残っている。
あそこだ。間違いない。
「行きましょう」
「うん」
罠かもしれないとか、そんなことはどうでもよかった。
そこにうみがいる可能性が少しでもあるのなら。
地獄の果てだって、どこへだって行ってやる。
入口は人ひとりが通れる程度。しかし奥へ進むにつれてどんどん広がっていき、俺たちはついにその最奥へと到達した。
「…来たか。海賊THE RAMPAGE」
「式島…!」
普段の冒険だったらあちこちで山のように積み重なる金銀宝石に大喜びしていたことだろう。
でも今はそれどころじゃない。
式島とその両サイドに並ぶ海兵たち、およそ30人ほど。
さらにその後ろから、掠れた声が俺を呼ぶ。
「樹、さん、」
はっと視線を巡らせる。
海兵たちの足の間から見えた、ネオンブルーの瞳。
いる。そこに。
「うみ!!!!!」
「うみ、無事!?」
「ほくとさんも……ッ、う」
様子がおかしい。
「うみに何をした…!」
「何もしていないが?だが…そうだな、この人魚を水槽から出して23時間。軍に残る資料に、『人魚は1日以上水から離れていると呼吸困難で死んでしまう』というような記述があった」
全身の毛が総毛立つような怒りが俺を貫いた。
うみは俺たちのために自ら海軍のもとに下った。
懸賞金がもとに戻り、海軍の追手がぱたりと姿を見せなくなったのだってきっとうみが海軍と取引をしたからだ。
それなのに、こいつは。
「タイムリミットは1時間。それまでに決着をつけようじゃないか、THE RAMPAGE」
「ぶっ殺してやる」
言い終わらないうちに俺は飛び出した。
俺を狙う銃弾を全て弾き返し、瞬く間に式島と距離を詰める。
ひゅ
空中で身体を捻って、その喉元を狙って刃を振る。
しかし、式島は目にも止まらぬスピードで両腰のファルシオンを抜くと、身体の前でクロスさせた。
鋼と鋼がぶつかり合い火花が散る。
俺と式島は至近距離で睨み合った。
「はっ…よほどこの人魚が大事らしいな」
「仲間だから、当然だろ」
「それだけか?」
こんな男に腹の中を踏み荒らされるのがこの上なく不愉快で、俺は無理やり刀を振り上げる。
ガラ空きになった胴に向かって切っ先を突き出すも、間一髪で躱された。
その時、背後から別の海兵が俺に銃口を向ける。
「おっと」
北人さんの大鎌がその海兵の身体を真っ二つにざくりと分断する。
「お前らは俺が殺る。『THE RAMPAGEの死神』がね」
海兵の群れを北人さんが鋭く睨みつけた。
ありがたい。こちらに集中できそうだ。
「ならば、俺の相手はお前か。『静寂の剣客』」
「俺にお前は役不足だな」
「ほざけ」
式島の背後では、うみがもがき苦しんでいる。
俺が今この場で最優先させなければいけないものなんて、ひとつしかない。
ひゅ、ひゅ、と不規則で浅い呼吸の音が聞こえてくる。
時間がない。
「い、いつき、さ……ッ、」
式島の2本の剣が猛然と俺に襲いかかる。
それらを受け止め、躱しながら俺は呟いた。
「邪魔だ」
タンッ
鍛錬がアダになることもある。
非力な奴の腕を飛び石にしようとしても人ひとりを支え切るような筋肉はないだろうから。
俺はぐっと腰を落として地を蹴ると、俺に向かって伸びた式島の腕の上に乗った。
「……ッ!」
すぐさま空いた方の剣が俺のふくらはぎを狙うが、その時には俺は再び踏み切り、式島の頭上を越えていた。
「お前に用はないんだよ、式島」
俺はすぐさま走り出し、地面に転がるうみの身体を抱える。
「…どこへ行く」
ざくりと背中を熱い痛みが走った。
でもそんなのに構ってる暇はない。
俺はうみを抱えたまま目の前の大きな水たまりに飛び込んだ。
どこまでも沈んでいきながら、うみの細い身体を強く抱きしめる。
うみ、うみ、うみ……!
背中にまわした腕にぎゅっと力を込めて、心の中で名前を呼び続ける。
お願いだ。目を開けて。
パライバトルマリンのネックレスがふわりと浮き上がる。
その向こうで、その宝石と同じ色をしたうみの瞳がカッと見開かれた。
かと思ったら俺の首の後ろに手枷がかかったままの両手を回し、ぐるりと身体を回転させる。
尾ひれに絡みついていた鎖が外れた。
「…1分だけ、我慢してください!」
瞬間、うみは俺を抱えたまま物凄い勢いで出口めがけて進み始める。
見えた。
ひかりだ。
ザバッ
「っぷは、」
そこは、俺たちの船のすぐそばだった。
船上ではまさに戦いの真っ最中。
「樹!?…あっ、うみだ!うみも一緒だ!」
健太さんがトライデントに突き刺した敵を海へ放り投げながら俺たちを見て大喜びする。
うみは俺を海岸に引き上げると、波打ち際で手錠を外そうともがいた。
「動かないで」
両手首の枷を繋ぐ鎖を掴む。
そのまま力を込めてひっぱると、バキっという音がして鉄の鎖がちぎれた。
「…あ、ありがとうございます」
うみが、目の前にいる。
鉄製の首輪と、鎖のちぎれた手枷を見ると改めて怒りと恐怖が湧き上がってきて、俺はうみの身体をぐっと引き寄せた。
額と額を合わせる。
「言いたいこといっぱいあるけど、まずはこの戦いにケリつけてくる。もうどこにも行くな」
「……はい…っ」
俺は小さく笑いかけると、濡れた刀を一振りして立ち上がった。
「樹!!他の奴らは!!??」
船の上から山彰さんがどなる。
「大丈夫です。生きてます」
俺が刀の先でジャングルを示すと、ちょうど奥から誰かが現れた所だった。
「いってぇ~…木から落とされてアバラやられた…」
翔吾さんが脇腹を押さえながらやってきたと思えば、
「ほら、陣くんもうちょっとで森抜ける!ていうか俺だって腕撃たれて痛いんだから自分で歩いてよ!」
「俺、足斬られてんねんぞ!?自分で歩けとか鬼か!むしろこんな身体で戦いきった俺を褒めて欲しいわ!」
陣さんと陸さんが互いの肩を支え合いながら現れる。さらにその後ろからは、それぞれ敵の死体を引きずった壱馬さん、慎、翔平が歩いてきた。
「疲れた…医者が傷だらけっておかしくないですか」
「まぁまぁそう言うな慎。翔平見てみ、血ぃ流しすぎて鉄分足りないからって川で捕まえた魚そのまま食ってんで。自己治癒力の塊や」
「鉄の味がするぜ!!!」
そしてその後ろ。
森の中を走ってくる人影。
「あっ樹!うみ!置いてくなよ二人とも!!」
北人さんだ。
…あとは、招かれざる客か。
背後の海から、ザバッと勢いよく飛び出してきた男。
俺は振り返りざまにその男の剣を受け、弾き飛ばした。
髪から水を滴らせた彼は、砂浜でゆっくりと立ち上がる。
「…正義は必ず勝つ。さぁ、決着をつけようじゃないか」