第一章
夢小説設定
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中は満員で、段状にせり上がっていくような座席はどこも空いていなかった。俺たちは1番後ろで立ったまま中央のステージを見下ろす。
「陣さんに怒られたら全部いっちゃんのせいにするからな」
「嫌なら来なきゃよかっただろ」
「うわっ自分から誘っといてそういうこと言っちゃうのね樹くんてば」
罪な男!とよく分からないキャラで俺を罵倒する翔平は無視。
眼下のオークションでは見目麗しい踊り子やら伝説の海賊が大切にしていた宝石やら、色んなものが競りに出されている。
『1000万円!落札です!』
「ほんとに金持ちばっか来るんだな」
「金と時間を持て余した貴族の遊びって感じがする」
俺は顔を顰めて言う。とてもお近づきになりたいとは思わないタイプの人間がここには死ぬほどいるのだ。
人魚が出てくるなんて知らなければ、絶対に立ち寄らなかっただろう。
その時。
『さぁさぁ皆様大変長らくお待たせ致しました!本日の目玉商品!多くは語りません、まず皆様のその目で直接、お確かめください!』
ステージに巨大な水槽が運び込まれてきた。すっぽりとかけられていた黒い布を、MCの男が取り払う。
会場が一瞬静まり返った。
誰もが自分の目を信じられなかったのだ。
「人魚だ…」
我知らず、俺の口から言葉がこぼれ落ちる。
水槽の中で怯えたように縮こまっているのは、正真正銘の人魚だった。
亜麻色の長い髪、まつ毛に縁取られた大きな目はくりくりとして愛らしい。虹彩の色は鮮やかなマリンブルー。僅かに開いたふっくらと形の良い唇からは空気の泡が漏れている。胸元には不思議な素材の布が巻きついているが、他は華奢な肩も儚いほどに細いくびれもむき出しで、恐怖からか遠目に見ても分かるほどに震えていた。
首には鉄製の首輪がかかり、水槽の中で鎖に繋がれている。
そして何よりも目を引くのがその尾びれ。
腰のあたりから鱗に覆われ、彼女が動くたびに七色にさざめく。本来人間にあるはずの2本の脚はなく、代わりに魚のような大きな尾ひれがついていた。
「いっちゃん…これは夢かな?ちょっと俺のこと殴ってくんね?」
「今忙しいから後にして…」
「いやただ前を見てるだけのどこが忙しいんだよ」
「そんだけしっかり突っ込めるならこれは現実だと思うんだけど」
「確かに」
『皆様、こちらの人魚正真正銘本物でございますよ!さぁうかうかしているとどんどんお値段がつり上がってしまいます!それでは2000万からスタートです!』
人魚は水槽の角で縮こまっている。怯えたように観客たちの顔を見ていき、そして、
目が合った。
彼女の顔から一瞬恐怖が消え、驚いたように俺を見つめている。
俺の心が決まったのは、その瞬間。
『おおっと、1億!1億円の大台に乗りました!』
今のTHE RAMPAGEに1億以上なんて、そんな大金はない。
いや、金など関係ないんだ。
俺たちは海賊、『THE RAMPAGE』なんだから。
「なぁ、翔平」
「ん?」
「俺たち海賊だよな」
「そうだな」
「海賊なら、欲しいものを目の前にした時にすることなんて、ひとつしかないよな」
翔平の肩がぴくりと上がる。人魚以上に信じられないものを見ているような目で俺を見た。
「それはさすがにまずいっていっちゃん」
「みんな買い物も終わって港に戻ってる頃かな。だったら無事に食糧も確保できてるし、ここで暴れても問題ない」
「ちょっと待てって。勝手なことしたら力矢さんに怒られるどころの騒ぎじゃないぞ」
「みんな絶対歓迎してくれる」
「…はぁ」
翔平がため息をついた。
諦めのニュアンスをこめて。
だてに長く付き合ってない。こうなった俺を止められないことなんて、翔平が1番分かってる。
「奪い取るぞ」
「今日の酒はまずそうだな」
俺は腰のホルダーから銃を抜いた。
そして、壇上で興奮ぎみのMCへ銃弾をくれてやる。
『5億!5億円以上の方はいらっしゃ…』
眉間をぶち抜かれて、MCが倒れた。
一瞬で凍りつく会場内。水槽の中の人魚も口元に手を押し当てて死体を見ている。
どやどやと会場内に入ってくる警備兵たち。その頃になってようやく、パニックぎみに逃げようとする客たち。
混沌の真ん中で、俺は日本刀を、翔平はナイフを取り出した。
襲いかかってきた警備兵のひとりの槍をひらりと躱し、流れるような動きで間合いを詰める。
首を跳ね飛ばされ、警備兵は絶命した。
俺の背後からは翔平が常人のそれとは思えないアクロバティックな動きで銃弾を避け、さらに幾本ものナイフで警備兵たちを倒していく。
次の敵も倒した俺は、血濡れの切っ先を水槽の中の人魚にまっすぐ向けた。
「海賊THE RAMPAGEだ。その人魚、俺たちが頂く」
「陣さんに怒られたら全部いっちゃんのせいにするからな」
「嫌なら来なきゃよかっただろ」
「うわっ自分から誘っといてそういうこと言っちゃうのね樹くんてば」
罪な男!とよく分からないキャラで俺を罵倒する翔平は無視。
眼下のオークションでは見目麗しい踊り子やら伝説の海賊が大切にしていた宝石やら、色んなものが競りに出されている。
『1000万円!落札です!』
「ほんとに金持ちばっか来るんだな」
「金と時間を持て余した貴族の遊びって感じがする」
俺は顔を顰めて言う。とてもお近づきになりたいとは思わないタイプの人間がここには死ぬほどいるのだ。
人魚が出てくるなんて知らなければ、絶対に立ち寄らなかっただろう。
その時。
『さぁさぁ皆様大変長らくお待たせ致しました!本日の目玉商品!多くは語りません、まず皆様のその目で直接、お確かめください!』
ステージに巨大な水槽が運び込まれてきた。すっぽりとかけられていた黒い布を、MCの男が取り払う。
会場が一瞬静まり返った。
誰もが自分の目を信じられなかったのだ。
「人魚だ…」
我知らず、俺の口から言葉がこぼれ落ちる。
水槽の中で怯えたように縮こまっているのは、正真正銘の人魚だった。
亜麻色の長い髪、まつ毛に縁取られた大きな目はくりくりとして愛らしい。虹彩の色は鮮やかなマリンブルー。僅かに開いたふっくらと形の良い唇からは空気の泡が漏れている。胸元には不思議な素材の布が巻きついているが、他は華奢な肩も儚いほどに細いくびれもむき出しで、恐怖からか遠目に見ても分かるほどに震えていた。
首には鉄製の首輪がかかり、水槽の中で鎖に繋がれている。
そして何よりも目を引くのがその尾びれ。
腰のあたりから鱗に覆われ、彼女が動くたびに七色にさざめく。本来人間にあるはずの2本の脚はなく、代わりに魚のような大きな尾ひれがついていた。
「いっちゃん…これは夢かな?ちょっと俺のこと殴ってくんね?」
「今忙しいから後にして…」
「いやただ前を見てるだけのどこが忙しいんだよ」
「そんだけしっかり突っ込めるならこれは現実だと思うんだけど」
「確かに」
『皆様、こちらの人魚正真正銘本物でございますよ!さぁうかうかしているとどんどんお値段がつり上がってしまいます!それでは2000万からスタートです!』
人魚は水槽の角で縮こまっている。怯えたように観客たちの顔を見ていき、そして、
目が合った。
彼女の顔から一瞬恐怖が消え、驚いたように俺を見つめている。
俺の心が決まったのは、その瞬間。
『おおっと、1億!1億円の大台に乗りました!』
今のTHE RAMPAGEに1億以上なんて、そんな大金はない。
いや、金など関係ないんだ。
俺たちは海賊、『THE RAMPAGE』なんだから。
「なぁ、翔平」
「ん?」
「俺たち海賊だよな」
「そうだな」
「海賊なら、欲しいものを目の前にした時にすることなんて、ひとつしかないよな」
翔平の肩がぴくりと上がる。人魚以上に信じられないものを見ているような目で俺を見た。
「それはさすがにまずいっていっちゃん」
「みんな買い物も終わって港に戻ってる頃かな。だったら無事に食糧も確保できてるし、ここで暴れても問題ない」
「ちょっと待てって。勝手なことしたら力矢さんに怒られるどころの騒ぎじゃないぞ」
「みんな絶対歓迎してくれる」
「…はぁ」
翔平がため息をついた。
諦めのニュアンスをこめて。
だてに長く付き合ってない。こうなった俺を止められないことなんて、翔平が1番分かってる。
「奪い取るぞ」
「今日の酒はまずそうだな」
俺は腰のホルダーから銃を抜いた。
そして、壇上で興奮ぎみのMCへ銃弾をくれてやる。
『5億!5億円以上の方はいらっしゃ…』
眉間をぶち抜かれて、MCが倒れた。
一瞬で凍りつく会場内。水槽の中の人魚も口元に手を押し当てて死体を見ている。
どやどやと会場内に入ってくる警備兵たち。その頃になってようやく、パニックぎみに逃げようとする客たち。
混沌の真ん中で、俺は日本刀を、翔平はナイフを取り出した。
襲いかかってきた警備兵のひとりの槍をひらりと躱し、流れるような動きで間合いを詰める。
首を跳ね飛ばされ、警備兵は絶命した。
俺の背後からは翔平が常人のそれとは思えないアクロバティックな動きで銃弾を避け、さらに幾本ものナイフで警備兵たちを倒していく。
次の敵も倒した俺は、血濡れの切っ先を水槽の中の人魚にまっすぐ向けた。
「海賊THE RAMPAGEだ。その人魚、俺たちが頂く」