第一章
夢小説設定
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「…あれ、うみは?」
「海竜のとこじゃね?さっき海の方に歩いて行くのが見えたから」
翔平が慎に包帯を巻き直してもらいながら言った。
物凄い勢いで岩にぶつかったのに打撲と擦り傷だけで済むあたり、翔平さんも翔吾さんも人間をやめている。
「1人で出歩くの危ないって言ってんのに…」
「樹さん意外と過保護ですよね」
「言ってやんなよまこっちゃん」
「は?」
過保護?俺が?
「別に、普通だろ」
俺は言い捨てるようにして宿を出た。
海竜との戦いから3日。
うみが両者を取り持ち、海竜とこの島の住民との間で協定が結ばれた。
人間は海を汚さないこと。
海竜は人間を食べないこと。
『本当にありがとうございました…!海岸から物凄い声と銃声がしたのでどうなることかと思いましたが』
人々からはいたく感謝され、俺たちも戦いの怪我や疲れを癒すために滞在日数を延長している。
とにかく、うみが人魚だということはバレていないようだ。
ただでさえ海竜の脅威に晒されていたこの島の人々が人魚なんて見たらショックで卒倒してしまうだろうから結果オーライか。
「Calypso
Ayy, báilalo, báilalo…」
うみの歌が聞こえてきた。
月夜の海で、人魚の歌に聞き惚れる海竜。
まるで絵画だった。
近くの木にもたれてその様子を見守っていると、歌が終わったタイミングで海竜が静かな瞳をこちらに向ける。
その鼻面にある傷は、三日前に俺がつけたものだ。
俺たちTHE RAMPAGEとこの竜との関係もうみのおかげで至って穏やか。
海賊と海竜と人魚。
同じ海で暮らす者として、分かり合えることは沢山あった。
「こっちに来たらいいだろう」
バレてたか。
俺は苦笑いして進みでる。うみはこちらを振り返ると嬉しそうに笑った。
「あ、樹さん。樹さんも歌いますか?」
「いや、いい」
俺は靴が濡れないギリギリのところまで行くと、月光で煌めくうみの尾ひれを眺める。
「…うみから色々聞いたよ。競りに出されていた彼女を助け、家族の元へ送り届けている最中らしいね」
「あぁ、はい」
「海賊というものは昔から不器用なんだな」
「え?」
海竜はごろごろと喉を鳴らしてご機嫌そうに笑う。三日前の野獣っぷりはどこへやら。
「…さて、うみの歌ですっかり眠くなってしまった。私は寝床に戻るよ」
「おやすみなさい海竜さん」
「おやすみ」
ざばりと水を分けて消えていく海竜の背を見送ったうみは、人間の姿になると俺の隣まで歩いてきた。
「ひとりで出歩くと危ないって何回言えば分かるの?」
「この島の人なら大丈夫ですよ」
「分かんないだろ。夜這いとか」
「よばっ…樹さん!」
うみはいちいち反応がオーバーだからついからかいたくなってしまう。
俺は緩む顔を見られないように踵を返した。
「ほら、宿に戻ろう。もう寝る時間だ」
「はい」
斜め後ろをとことこついてくる姿と3日前の必死に叫ぶ姿がなぜだか重なって。
信じる、か。
「たぶん、俺たちだけだったらあの海竜を殺してた」
「え?」
「うみが俺たちを信じてくれたから誰も殺さずにすんだ」
うみは俺の後ろでどんな顔をしているのだろう。
「あと、海の中で助けてくれてありがとう」
振り返りたいけど、きっとそうしたらうみは怒るだろうから。
「…な、仲間……ですから」
今にも消え入りそうなその声に、俺は今度こそ吹き出してしまった。
「海竜のとこじゃね?さっき海の方に歩いて行くのが見えたから」
翔平が慎に包帯を巻き直してもらいながら言った。
物凄い勢いで岩にぶつかったのに打撲と擦り傷だけで済むあたり、翔平さんも翔吾さんも人間をやめている。
「1人で出歩くの危ないって言ってんのに…」
「樹さん意外と過保護ですよね」
「言ってやんなよまこっちゃん」
「は?」
過保護?俺が?
「別に、普通だろ」
俺は言い捨てるようにして宿を出た。
海竜との戦いから3日。
うみが両者を取り持ち、海竜とこの島の住民との間で協定が結ばれた。
人間は海を汚さないこと。
海竜は人間を食べないこと。
『本当にありがとうございました…!海岸から物凄い声と銃声がしたのでどうなることかと思いましたが』
人々からはいたく感謝され、俺たちも戦いの怪我や疲れを癒すために滞在日数を延長している。
とにかく、うみが人魚だということはバレていないようだ。
ただでさえ海竜の脅威に晒されていたこの島の人々が人魚なんて見たらショックで卒倒してしまうだろうから結果オーライか。
「Calypso
Ayy, báilalo, báilalo…」
うみの歌が聞こえてきた。
月夜の海で、人魚の歌に聞き惚れる海竜。
まるで絵画だった。
近くの木にもたれてその様子を見守っていると、歌が終わったタイミングで海竜が静かな瞳をこちらに向ける。
その鼻面にある傷は、三日前に俺がつけたものだ。
俺たちTHE RAMPAGEとこの竜との関係もうみのおかげで至って穏やか。
海賊と海竜と人魚。
同じ海で暮らす者として、分かり合えることは沢山あった。
「こっちに来たらいいだろう」
バレてたか。
俺は苦笑いして進みでる。うみはこちらを振り返ると嬉しそうに笑った。
「あ、樹さん。樹さんも歌いますか?」
「いや、いい」
俺は靴が濡れないギリギリのところまで行くと、月光で煌めくうみの尾ひれを眺める。
「…うみから色々聞いたよ。競りに出されていた彼女を助け、家族の元へ送り届けている最中らしいね」
「あぁ、はい」
「海賊というものは昔から不器用なんだな」
「え?」
海竜はごろごろと喉を鳴らしてご機嫌そうに笑う。三日前の野獣っぷりはどこへやら。
「…さて、うみの歌ですっかり眠くなってしまった。私は寝床に戻るよ」
「おやすみなさい海竜さん」
「おやすみ」
ざばりと水を分けて消えていく海竜の背を見送ったうみは、人間の姿になると俺の隣まで歩いてきた。
「ひとりで出歩くと危ないって何回言えば分かるの?」
「この島の人なら大丈夫ですよ」
「分かんないだろ。夜這いとか」
「よばっ…樹さん!」
うみはいちいち反応がオーバーだからついからかいたくなってしまう。
俺は緩む顔を見られないように踵を返した。
「ほら、宿に戻ろう。もう寝る時間だ」
「はい」
斜め後ろをとことこついてくる姿と3日前の必死に叫ぶ姿がなぜだか重なって。
信じる、か。
「たぶん、俺たちだけだったらあの海竜を殺してた」
「え?」
「うみが俺たちを信じてくれたから誰も殺さずにすんだ」
うみは俺の後ろでどんな顔をしているのだろう。
「あと、海の中で助けてくれてありがとう」
振り返りたいけど、きっとそうしたらうみは怒るだろうから。
「…な、仲間……ですから」
今にも消え入りそうなその声に、俺は今度こそ吹き出してしまった。