第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「初めまして、私は人魚族のうみと言います。こうしてお会い出来ること、非常に嬉しく思います」
「人魚族は私たちの一族同様滅びたと思っていたが…長く生きていればこのような出会いもあるのだな」
海竜は岩の上に座るうみに大きな顔を寄せた。
俺たちはただただその巨大さ、迫力に圧倒されて言葉も出ない。
これまで海を我が物顔で走り回ってきた俺たちだけど、本当は何も知らないのかもしれない。
だってこんな生き物がいるなんて。
「海竜さん。私たちは街の人に頼まれ、こうしてあなたとお会いしています。話を聞いてくださいませんでしょうか」
何であいつ平然としていられるんだ。ていうか何で海竜は俺たちの同じ言語を話せるんだ。
「言いたいことは分かっているよ」
「それなら、教えてください。どうして人の肉を食べるのですか?本来の竜族なら主食は魚のはず」
海竜がぴくりと反応した。
ゆっくりと鎌首をもたげる。ずっと上を向いているのでいい加減首が痛くなりそうだった。
「償いだ」
ぎろりと、金色の瞳が俺たちを見下ろす。
その奥で燃える激情。
怒りの炎。
「私たち海竜を絶滅寸前まで追い込んだのは人間たちだ。海を穢し、同胞を殺した。私たちに敵対の意思はなかったにも関わらずだ」
徐々に言葉の温度が上がっていく。
危険だ。
「海の温度は上がり、私は冷たいこの近海でしか暮らせなくなった。にも関わらずこの島の住民は生活排水を垂れ流し、海を汚染し続けている。私の家族も人間たちが海に流した毒に犯されて死んだ。私だってきっともう長くは生きられない……我慢の限界だったんだよ。罪には相応の罰が必要だ」
まずい。
俺はじりじりとすり足で少しずつうみの方へ進み始めた。
こいつはハナからうみの話なんて聞くつもりはなかった。
俺たちに『償い』をさせるつもりだったのだ。
「今日はうまそうな人間が16人もいる。人魚の娘よ、お前もそちら側につくのならば容赦はしないぞ…!」
「うみ、下がれ!!!」
俺はとっさに叫ぶ。うみが海面に飛び込むと同時に海竜の巨大な顎がうみの座っていた岩を噛み砕いた。
「やっぱダメか…!全員かかれ!戦闘だ!」
力矢さんの叫びで、同時に全員が射撃を開始した。
耳をつんざくような声で海竜が叫んだ。銃は効くが致命傷には至っていない。
「翔吾さん!」
「分かってる翔平!」
うちの特攻隊長ふたりが飛び出していった。
ダガーをその長い首に突き立てる。
海竜が狂ったように頭を振り回した。2人は吹っ飛ばされ、硬い岩の地面に激突する。
「翔吾さん!翔平!」
大事な仲間を傷つけられた。それを理解した瞬間かっと頭に血が上る。
俺は助走を付けて一気に地を蹴る。そして海竜の鼻面に着地した。
「絶滅危惧種だろうが何だろうが関係ねぇ。ぶっ殺してやる」
逆手に持った刀を思いっきり突き刺す。鼻面から顎まで刃が貫通した感触があった。絶叫。海竜は頭の上に乗った俺を振り落とそうと必死になる。
しかし柄にしがみついて離れない俺に痺れを切らしたのか、ふいに海竜が大きくジャンプし、海に飛び込んだ。
極寒の水に包まれ、心臓が飛び跳ねる。
衝撃で刃がするりと抜ける。
次の瞬間に俺が水中で見たのは、今にも俺を飲み込もうと大口を開ける海竜の姿だった。
あ、ヤバい。
しかし。
「樹さん!!!」
海中にもはっきりと響くうみの声。
食われるギリギリのところでうみが突進してきて、俺を腕に抱える。
「少し我慢してください!すぐに岸に着きます!」
俺を抱えたうみが水を切り裂くように進んでいく。その背後からは海竜が追いかけてくる。
「待て人魚!」
「もうこんなことやめてください!」
息が限界だ。酸素が足りない。
と、ふいにうみがスピードもそのままに空中に飛び出した。
衝撃。
突然肺に空気が入ってきて、激しくむせる。陸に上がったのだ。
冷たい水に体温を奪われ俺の身体はガタガタと震えていた。
「樹、うみ!大丈夫!?」
北人さんが駆け寄って、俺を助け起こす。
その時、背後から猛り狂った獣の咆哮がこだました。
俺たちを追いかけ突っ込んできたのだろう、岸に打ち上げられた海竜は身動きが取れずにもがいていた。
「…はっ、バカが!地上戦ならこっちのもんや!」
陣さんが叫んでサーベルを抜いた。他のみんなも手に手に武器を持ち襲いかかる。
「待ってください!!!!!」
ぴたり
うみの叫びで、その場にいた全員の動きが止まる。
うみは人間に変身することも忘れ、人魚の姿のまま腕の力だけで必死に海竜に近づいていった。
「ひとりぼっちで…憎しみだけを抱えて生きていくなんて……そんなの悲しすぎます」
「黙れ!!お前もこちら側なんじゃないのか。人間に住処を奪われ、家族友人を殺された。お前は憎くないのか!?」
「私は…」
うみがぎゅっと握ったのは、
俺が贈ったネックレス。
「確かに、怖い人もいます。でも…信じるって決めたから」
「うみ…」
善意を裏切られ、親元を引き離されてもなお、うみは俺たちの隣にいることを選んでくれた。
信じてくれた。
「話しあいましょう、海竜さん。確かに人間は海を壊しました。でも、彼らにも昔のあなたと同じように家族がいるんです!こんなことを続けていても、何の解決にもならない…償いなんて言って、あなたは人間と分かり合うことから逃げてるだけでしょう!?」
「何だと小娘!」
怒り狂った海竜がひれをうみに叩きつける。
…いや、違う。
「くっそ…重てぇ……!」
「ぐ…」
海青と力矢さんが腕を頭の上にかざしてヒレを受け止めていた。足が岩にめりこんでいる。
「孤独と憎しみを言い訳に逃げないでください!」
うみの切実な訴えは続く。
身体を支えていた腕を必死に伸ばして、海青と力矢さんがギリギリのところで食い止めているヒレに触れた。
「味方はいます。ここに」
今にも泣きそうな顔で、人魚は微笑んでいた。
「私が、あなたと人間の架け橋になりますから」
「人魚族は私たちの一族同様滅びたと思っていたが…長く生きていればこのような出会いもあるのだな」
海竜は岩の上に座るうみに大きな顔を寄せた。
俺たちはただただその巨大さ、迫力に圧倒されて言葉も出ない。
これまで海を我が物顔で走り回ってきた俺たちだけど、本当は何も知らないのかもしれない。
だってこんな生き物がいるなんて。
「海竜さん。私たちは街の人に頼まれ、こうしてあなたとお会いしています。話を聞いてくださいませんでしょうか」
何であいつ平然としていられるんだ。ていうか何で海竜は俺たちの同じ言語を話せるんだ。
「言いたいことは分かっているよ」
「それなら、教えてください。どうして人の肉を食べるのですか?本来の竜族なら主食は魚のはず」
海竜がぴくりと反応した。
ゆっくりと鎌首をもたげる。ずっと上を向いているのでいい加減首が痛くなりそうだった。
「償いだ」
ぎろりと、金色の瞳が俺たちを見下ろす。
その奥で燃える激情。
怒りの炎。
「私たち海竜を絶滅寸前まで追い込んだのは人間たちだ。海を穢し、同胞を殺した。私たちに敵対の意思はなかったにも関わらずだ」
徐々に言葉の温度が上がっていく。
危険だ。
「海の温度は上がり、私は冷たいこの近海でしか暮らせなくなった。にも関わらずこの島の住民は生活排水を垂れ流し、海を汚染し続けている。私の家族も人間たちが海に流した毒に犯されて死んだ。私だってきっともう長くは生きられない……我慢の限界だったんだよ。罪には相応の罰が必要だ」
まずい。
俺はじりじりとすり足で少しずつうみの方へ進み始めた。
こいつはハナからうみの話なんて聞くつもりはなかった。
俺たちに『償い』をさせるつもりだったのだ。
「今日はうまそうな人間が16人もいる。人魚の娘よ、お前もそちら側につくのならば容赦はしないぞ…!」
「うみ、下がれ!!!」
俺はとっさに叫ぶ。うみが海面に飛び込むと同時に海竜の巨大な顎がうみの座っていた岩を噛み砕いた。
「やっぱダメか…!全員かかれ!戦闘だ!」
力矢さんの叫びで、同時に全員が射撃を開始した。
耳をつんざくような声で海竜が叫んだ。銃は効くが致命傷には至っていない。
「翔吾さん!」
「分かってる翔平!」
うちの特攻隊長ふたりが飛び出していった。
ダガーをその長い首に突き立てる。
海竜が狂ったように頭を振り回した。2人は吹っ飛ばされ、硬い岩の地面に激突する。
「翔吾さん!翔平!」
大事な仲間を傷つけられた。それを理解した瞬間かっと頭に血が上る。
俺は助走を付けて一気に地を蹴る。そして海竜の鼻面に着地した。
「絶滅危惧種だろうが何だろうが関係ねぇ。ぶっ殺してやる」
逆手に持った刀を思いっきり突き刺す。鼻面から顎まで刃が貫通した感触があった。絶叫。海竜は頭の上に乗った俺を振り落とそうと必死になる。
しかし柄にしがみついて離れない俺に痺れを切らしたのか、ふいに海竜が大きくジャンプし、海に飛び込んだ。
極寒の水に包まれ、心臓が飛び跳ねる。
衝撃で刃がするりと抜ける。
次の瞬間に俺が水中で見たのは、今にも俺を飲み込もうと大口を開ける海竜の姿だった。
あ、ヤバい。
しかし。
「樹さん!!!」
海中にもはっきりと響くうみの声。
食われるギリギリのところでうみが突進してきて、俺を腕に抱える。
「少し我慢してください!すぐに岸に着きます!」
俺を抱えたうみが水を切り裂くように進んでいく。その背後からは海竜が追いかけてくる。
「待て人魚!」
「もうこんなことやめてください!」
息が限界だ。酸素が足りない。
と、ふいにうみがスピードもそのままに空中に飛び出した。
衝撃。
突然肺に空気が入ってきて、激しくむせる。陸に上がったのだ。
冷たい水に体温を奪われ俺の身体はガタガタと震えていた。
「樹、うみ!大丈夫!?」
北人さんが駆け寄って、俺を助け起こす。
その時、背後から猛り狂った獣の咆哮がこだました。
俺たちを追いかけ突っ込んできたのだろう、岸に打ち上げられた海竜は身動きが取れずにもがいていた。
「…はっ、バカが!地上戦ならこっちのもんや!」
陣さんが叫んでサーベルを抜いた。他のみんなも手に手に武器を持ち襲いかかる。
「待ってください!!!!!」
ぴたり
うみの叫びで、その場にいた全員の動きが止まる。
うみは人間に変身することも忘れ、人魚の姿のまま腕の力だけで必死に海竜に近づいていった。
「ひとりぼっちで…憎しみだけを抱えて生きていくなんて……そんなの悲しすぎます」
「黙れ!!お前もこちら側なんじゃないのか。人間に住処を奪われ、家族友人を殺された。お前は憎くないのか!?」
「私は…」
うみがぎゅっと握ったのは、
俺が贈ったネックレス。
「確かに、怖い人もいます。でも…信じるって決めたから」
「うみ…」
善意を裏切られ、親元を引き離されてもなお、うみは俺たちの隣にいることを選んでくれた。
信じてくれた。
「話しあいましょう、海竜さん。確かに人間は海を壊しました。でも、彼らにも昔のあなたと同じように家族がいるんです!こんなことを続けていても、何の解決にもならない…償いなんて言って、あなたは人間と分かり合うことから逃げてるだけでしょう!?」
「何だと小娘!」
怒り狂った海竜がひれをうみに叩きつける。
…いや、違う。
「くっそ…重てぇ……!」
「ぐ…」
海青と力矢さんが腕を頭の上にかざしてヒレを受け止めていた。足が岩にめりこんでいる。
「孤独と憎しみを言い訳に逃げないでください!」
うみの切実な訴えは続く。
身体を支えていた腕を必死に伸ばして、海青と力矢さんがギリギリのところで食い止めているヒレに触れた。
「味方はいます。ここに」
今にも泣きそうな顔で、人魚は微笑んでいた。
「私が、あなたと人間の架け橋になりますから」