第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翌日の昼。
「危険なので、街の方々は海岸には絶対に近づかないでくださいね」
うみはしつこいくらいにそう言って、さらに俺たちに辺りの警戒までさせる用心ぶりを見せた。
人魚だと知られたら何をされるか分からない、島に上陸する前に俺たちが散々言った言葉を気にしているのだろう。
「みなさんまで巻き込んでしまってすみません」
「ええよ別に。仲間なんやし」
陣さんが銃に弾を込めながら笑った。
そうだ。1度船に乗ったならみんな仲間。
仲間のためなら、なんだってやるのが俺たちだから。
「…ありがとうございます」
浅瀬に突き出した岩の上でうみが微笑む。
本来の姿に戻り、ゆっくりと尾ひれを振るその姿は本当に物語から飛び出してきたかのような美しさで、もう見慣れたと思っていたがやはり幻覚でも見ているのかと自分の目を疑ってしまうほどだ。
「…で、その人喰い海竜をどうやって退治するの」
「退治はしません。話を聞いてもらって、お願いするんです」
「でも悪いけど、危ないと思ったら俺たちは自分の身とうみを守ることを最優先にするから」
刀を抜いた俺に、うみは「分かりました」と頷く。
そしてまっすぐ海を見ると、おもむろに口を開いた。
「Calypso…
Ayy, báilalo, báilalo
Boom pon di riddim, boom pon di baseline」
歌。
絹のようにしっとりと歌い上げるバラード。
人魚の歌には人を魅了する力がある。
どこかで聞いた話だけど、実際に耳にすれば噂以上だと分かる。
その歌声は俺を包み込んで、スピリチュアルな世界へと誘っていく。
どのベッドよりも柔らかく、どの女の腕よりも心地よく、どの眠りよりも穏やかに。
「すげぇ…」
ほうっと息を吐いて聞き惚れていると、ふいにその歌に共鳴するように海がざわざわと揺れ始めた。
うみの歌にいっそう力がこもる。
初めはただの漣だったそれが、徐々に大きくなっていく。
まるで海全体が揺れているようだった。
「おいおい…これはヤバいやろ」
銃を構えた壱馬さんが目を見開いて盛り上がっていく海面を見つめる。
「Toda la noche, te daré calypso
Te daré calypso」
「…来る」
海が割れた。
そう思えるほどに巨大な『何か』が首をもたげる。
逆三角形の爬虫類の頭。縦長の瞳孔。鱗に覆われた長い首。
「────────────────人魚の歌など久しぶりに聞いたな。相変わらず素晴らしい」
「危険なので、街の方々は海岸には絶対に近づかないでくださいね」
うみはしつこいくらいにそう言って、さらに俺たちに辺りの警戒までさせる用心ぶりを見せた。
人魚だと知られたら何をされるか分からない、島に上陸する前に俺たちが散々言った言葉を気にしているのだろう。
「みなさんまで巻き込んでしまってすみません」
「ええよ別に。仲間なんやし」
陣さんが銃に弾を込めながら笑った。
そうだ。1度船に乗ったならみんな仲間。
仲間のためなら、なんだってやるのが俺たちだから。
「…ありがとうございます」
浅瀬に突き出した岩の上でうみが微笑む。
本来の姿に戻り、ゆっくりと尾ひれを振るその姿は本当に物語から飛び出してきたかのような美しさで、もう見慣れたと思っていたがやはり幻覚でも見ているのかと自分の目を疑ってしまうほどだ。
「…で、その人喰い海竜をどうやって退治するの」
「退治はしません。話を聞いてもらって、お願いするんです」
「でも悪いけど、危ないと思ったら俺たちは自分の身とうみを守ることを最優先にするから」
刀を抜いた俺に、うみは「分かりました」と頷く。
そしてまっすぐ海を見ると、おもむろに口を開いた。
「Calypso…
Ayy, báilalo, báilalo
Boom pon di riddim, boom pon di baseline」
歌。
絹のようにしっとりと歌い上げるバラード。
人魚の歌には人を魅了する力がある。
どこかで聞いた話だけど、実際に耳にすれば噂以上だと分かる。
その歌声は俺を包み込んで、スピリチュアルな世界へと誘っていく。
どのベッドよりも柔らかく、どの女の腕よりも心地よく、どの眠りよりも穏やかに。
「すげぇ…」
ほうっと息を吐いて聞き惚れていると、ふいにその歌に共鳴するように海がざわざわと揺れ始めた。
うみの歌にいっそう力がこもる。
初めはただの漣だったそれが、徐々に大きくなっていく。
まるで海全体が揺れているようだった。
「おいおい…これはヤバいやろ」
銃を構えた壱馬さんが目を見開いて盛り上がっていく海面を見つめる。
「Toda la noche, te daré calypso
Te daré calypso」
「…来る」
海が割れた。
そう思えるほどに巨大な『何か』が首をもたげる。
逆三角形の爬虫類の頭。縦長の瞳孔。鱗に覆われた長い首。
「────────────────人魚の歌など久しぶりに聞いたな。相変わらず素晴らしい」