第一章
夢小説設定
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ギイ、ギイ
真夜中の海は凪いでいた。漣につられて船が微かに揺れる。
見張り台で身体に毛布を巻き付けていると、ハッチが開いて、北人さんがひょっこり顔を出した。
「樹、交代の時間」
「ふぁ…やっと寝れる…」
「何なに、もう少し見張り頑張るんで北人さんはまだ寝てていいですよって?」
「いや、言ってないです。はやく変わってください」
「樹が冷たい~」
北人さんはそれでもちょっと嬉しそうに笑いながら、俺の毛布の中に入ってくる。強引。
遠くで、魚がぱしゃりと跳ねる。
「いいじゃん、夜の見張り。俺は好きだよ?星空が綺麗だから」
「ロマンチストっすね」
ふたりでひとつの毛布にくるまって、見張りそっちのけで満天の星空を見上げる。
うん。
悪くない。
「綺麗だ」
思わずこぼれた言葉。北人さんも「だろ?」と笑っていた。
また魚が跳ねる。
何だ、今夜はやけに魚が騒いでるな、と思って視線を海に戻す。
ひゅ
「え」
一瞬見えた影。
長い髪、華奢な体つき、そして魚のような尾びれ。
「どうしたの?敵船?」
北人さんが不思議そうに望遠鏡をのぞき込む。
…今のって。
「いや…人魚、みたいな影が」
言ってしまってから気づいた。
バカか俺は。
人魚なんて、いるわけないのに。
北人さんは呆気にとられたように俺を見つめていたが、ふいに俺から毛布を奪い取るとぐいぐいハッチのところまで押していった。
「ごめん、樹がそんなに眠いとは思わなかった。早くキャビン戻って寝な?」
「え、あ、いや、」
落ちそうになって慌ててハシゴに掴まると、目と鼻の先でハッチが閉められる。
そうだ、きっと寝ぼけてるんだ。
足を踏み外さないように慎重に縄はしごを降りながら、俺は自分に言い聞かせる。
人魚なんて、いるわけない。
真夜中の海は凪いでいた。漣につられて船が微かに揺れる。
見張り台で身体に毛布を巻き付けていると、ハッチが開いて、北人さんがひょっこり顔を出した。
「樹、交代の時間」
「ふぁ…やっと寝れる…」
「何なに、もう少し見張り頑張るんで北人さんはまだ寝てていいですよって?」
「いや、言ってないです。はやく変わってください」
「樹が冷たい~」
北人さんはそれでもちょっと嬉しそうに笑いながら、俺の毛布の中に入ってくる。強引。
遠くで、魚がぱしゃりと跳ねる。
「いいじゃん、夜の見張り。俺は好きだよ?星空が綺麗だから」
「ロマンチストっすね」
ふたりでひとつの毛布にくるまって、見張りそっちのけで満天の星空を見上げる。
うん。
悪くない。
「綺麗だ」
思わずこぼれた言葉。北人さんも「だろ?」と笑っていた。
また魚が跳ねる。
何だ、今夜はやけに魚が騒いでるな、と思って視線を海に戻す。
ひゅ
「え」
一瞬見えた影。
長い髪、華奢な体つき、そして魚のような尾びれ。
「どうしたの?敵船?」
北人さんが不思議そうに望遠鏡をのぞき込む。
…今のって。
「いや…人魚、みたいな影が」
言ってしまってから気づいた。
バカか俺は。
人魚なんて、いるわけないのに。
北人さんは呆気にとられたように俺を見つめていたが、ふいに俺から毛布を奪い取るとぐいぐいハッチのところまで押していった。
「ごめん、樹がそんなに眠いとは思わなかった。早くキャビン戻って寝な?」
「え、あ、いや、」
落ちそうになって慌ててハシゴに掴まると、目と鼻の先でハッチが閉められる。
そうだ、きっと寝ぼけてるんだ。
足を踏み外さないように慎重に縄はしごを降りながら、俺は自分に言い聞かせる。
人魚なんて、いるわけない。
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