第五章
夢小説設定
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少年は髪を掻きむしりながら、言葉にならない言葉を発している。
その声は徐々に大きくなり、ついに絶叫に変わるかと思われた時、
ふいに少年の動きが止まった。
顔をおおった指の間から、ぎょろりと血走った目でみさを見据える。
「みさ……気づいていたのか…?」
「マスター、」
「答えろ」
みさの肩がびくりと上がる。
しばらく逡巡して、やがて長い睫毛をそっと伏せた。
「はい」
「……!」
「マスターの能力を理解したのはこの姿のマスターに出会った時。しかし、今のマスターが『何人目』なのかまでは分かりませんでした」
やっぱりそうか。
それなら、みさの『賭け』は。
「みさ、もう一度聞くよ」
俺と少年の真ん中に立つみさに、俺は尋ねた。
「選んで。理想郷か、死か」
少年は固唾を飲んでみさを見つめている。
おそらく、現実を受け入れられないのだろう。
たぶんあいつは、たとえ自分たちが負けても来世があると思い込んでいた。その際に何よりも大事なみさが死んでも、髪の毛が1本でも残ればまたみさのコピーを創ることができる。
しかし、少年は9回目の生。
少年の本当の能力『バステト』は、9回まで転生することができる力。
あいつの命の歯車も、これで止まる。
少年が『何人目』かまでは分からなかったみさは、それでも爆弾のスイッチを入れた。
ゲームに勝っても負けても、おそらく爆弾の時限装置は止まらないのだろう。
「一緒に行こう、みさ。俺たちが連れていくから」
俺たちの理想郷 へ。
「理想郷…」
その時だった。
少年の狂ったような叫び声。
いや、違う。
笑っている。
少年は腹を抱えて笑っていた。
「みさ、僕を裏切ったのかい!?絶対神に背くとは、なんて愚かなことだ!!」
「…いいえマスター。私はあなたを救いたかった」
「救う!?何からだ!?これまでに犯してきた罪の罰からか!?」
笑い声の隙間から、少年が目を見開いて尋ねる。
みさの瞳は哀しみでより一層青みを増しているようだった。
「命から」
凛とした声で、みさは答える。
少年の笑いがどんどん甲高くなって、ついに絶叫に変わった。
壊れた。
9人の人格に取り憑かれ、それにすら気付かずに自分こそが最強だと思い込んでいた脆い心が。
ついに壊れた。
少年が地を蹴る。俺の懐に飛び込んでくる。
「っ、!」
速い…!
とっさに身を引いて狙いを逸らしたが、少年の放った弾丸は俺の左肩を貫通した。
「っく……!」
骨はやられてない。それでも、凄まじい痛みが左腕を走る。
少年は狂ったように叫びながら間髪入れずにさらに引き金を引く。ギリギリのところで躱すが、広目天に限界がきていた。
「その名前を呼ぶな!!!名前を!!!僕は永遠の命を手に入れた、神にも等しい人間なんだ!!!」
うまく未来が見えない。体力も底をつきかけ、身体が言うことをきかない。
弾丸が俺の頬を掠め、足首を切り裂く。
ガクンと、ついに膝をついた。
「僕は死なない!!!死ぬのはお前だ!!!」
いいや、違う。
死ぬのはお前だ。
銃口が俺の眉間に突きつけられる。
俺の瞳が、カッと強く光った。
これが最後だ。
ドン
その声は徐々に大きくなり、ついに絶叫に変わるかと思われた時、
ふいに少年の動きが止まった。
顔をおおった指の間から、ぎょろりと血走った目でみさを見据える。
「みさ……気づいていたのか…?」
「マスター、」
「答えろ」
みさの肩がびくりと上がる。
しばらく逡巡して、やがて長い睫毛をそっと伏せた。
「はい」
「……!」
「マスターの能力を理解したのはこの姿のマスターに出会った時。しかし、今のマスターが『何人目』なのかまでは分かりませんでした」
やっぱりそうか。
それなら、みさの『賭け』は。
「みさ、もう一度聞くよ」
俺と少年の真ん中に立つみさに、俺は尋ねた。
「選んで。理想郷か、死か」
少年は固唾を飲んでみさを見つめている。
おそらく、現実を受け入れられないのだろう。
たぶんあいつは、たとえ自分たちが負けても来世があると思い込んでいた。その際に何よりも大事なみさが死んでも、髪の毛が1本でも残ればまたみさのコピーを創ることができる。
しかし、少年は9回目の生。
少年の本当の能力『バステト』は、9回まで転生することができる力。
あいつの命の歯車も、これで止まる。
少年が『何人目』かまでは分からなかったみさは、それでも爆弾のスイッチを入れた。
ゲームに勝っても負けても、おそらく爆弾の時限装置は止まらないのだろう。
「一緒に行こう、みさ。俺たちが連れていくから」
俺たちの
「理想郷…」
その時だった。
少年の狂ったような叫び声。
いや、違う。
笑っている。
少年は腹を抱えて笑っていた。
「みさ、僕を裏切ったのかい!?絶対神に背くとは、なんて愚かなことだ!!」
「…いいえマスター。私はあなたを救いたかった」
「救う!?何からだ!?これまでに犯してきた罪の罰からか!?」
笑い声の隙間から、少年が目を見開いて尋ねる。
みさの瞳は哀しみでより一層青みを増しているようだった。
「命から」
凛とした声で、みさは答える。
少年の笑いがどんどん甲高くなって、ついに絶叫に変わった。
壊れた。
9人の人格に取り憑かれ、それにすら気付かずに自分こそが最強だと思い込んでいた脆い心が。
ついに壊れた。
少年が地を蹴る。俺の懐に飛び込んでくる。
「っ、!」
速い…!
とっさに身を引いて狙いを逸らしたが、少年の放った弾丸は俺の左肩を貫通した。
「っく……!」
骨はやられてない。それでも、凄まじい痛みが左腕を走る。
少年は狂ったように叫びながら間髪入れずにさらに引き金を引く。ギリギリのところで躱すが、広目天に限界がきていた。
「その名前を呼ぶな!!!名前を!!!僕は永遠の命を手に入れた、神にも等しい人間なんだ!!!」
うまく未来が見えない。体力も底をつきかけ、身体が言うことをきかない。
弾丸が俺の頬を掠め、足首を切り裂く。
ガクンと、ついに膝をついた。
「僕は死なない!!!死ぬのはお前だ!!!」
いいや、違う。
死ぬのはお前だ。
銃口が俺の眉間に突きつけられる。
俺の瞳が、カッと強く光った。
これが最後だ。
ドン