第五章
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「ぐっ、」
「直己さん!」
樹上から弾丸が降り注ぐ。迂回しようにも島へ入るにはこの森を突っ切るしかない。
すでに怪我人も出ている。
その時、前方を走っていた北人さんがふいに地面に右手をついた。
「森の中なら俺がいちばん強い」
ざわりと木々が揺れる。
突然俺たちの目の前を遮っていた巨木がうねり、道を作るように左右に別れていった。さらに狙撃手が乗っていた枝が蛇のようにその身体に巻き付く。
あちこちで人の骨が折れる音が響いた。
さらに地面から何本もの蔦が生え、外からの攻撃を防ぐように重なり合ってアーチを形成する。
そのアーチの先に、目指していた建物が小さく見える。
「この蔦はどんな爆弾にも耐える強度を持ってます。ここを通れば、安全にあそこまで行ける」
「ナイス北人!」
啓司さんが北人さんの髪をぐしゃぐしゃと撫でて走り出した。みんなも足を早めてトンネルの中を駆け抜ける。
「…あ、でもこれ一本道で出口はひとつだけなんで挟み撃ちにされたら終わりです」
「それ先に言ってくんね?」
ドカンと爆音が響いて、こちらに銃口を向けたキャノン砲が火を噴いた。
「『アイギスの盾』!!」
この声は健二郎さん、そう思う前に俺たちの目の前に透明な障壁が形成された。
砲弾が無敵の盾にぶつかって爆ぜる。
「守りなら俺がやります!敵が集まってくる前にはよ進みましょう!」
すごい、LDHの全チームが集まるとこんなにも強いのか。
鳥肌がたつほどの興奮を覚えながら、俺はスピードを緩めることなく走り続ける。
出口は目の前だ。
群がる敵を蹴散らして、俺たちはコンクリートの巨大な建物の前に立った。
「チームに分かれて取り囲め、一気に突入する。索敵の得意な者は内部の把握。中に入ったら好きに暴れていい、狙うはハデスのボスの首だ」
HIROさんの指示で俺たちは阿吽の呼吸で展開していく。
そして窓を叩き割って中に突入していった。
待ってろよ、みさ。
「─────────やあ、ようこそ僕の理想郷へ」
この声。
俺ははっと顔をあげた。
俺たちが飛び込んだのはエントランスホールのような広い場所で、その中心から伸びる螺旋階段のてっぺんに、彼がいる。
黒髪の少年。
「お前は……!」
激しい怒りがこみ上げてきて、俺は即座にライフルのトリガーを引いた。
その額をぶち抜くはずだった弾丸は少年が軽やかに身を翻したため後ろにあった壁に穴を開けただけ。
「ふふ、落ち着けよ長谷川慎くん」
名前が割れている。
みさが教えたのか。
「こうして全員集まるとさすがに壮観だね。五十嵐くん、10年間でよくここまでの人材を集めたものだ」
「我ながら驚くよ。最高の仲間がこんなにも沢山できた」
「ひとり足りないんじゃないかい?」
「今までも色んな理由でLDHを去っていた奴はいる。みさも、お前のことも責めるつもりはないよ」
「へぇ…でも他の何人かはそう思ってないみたいだけど?」
少年が俺と樹さん、亜嵐さんの顔を見て薄く笑った。
見透かされている。俺はぐっと眉を寄せて少年を睨みつける。
HIROさんは低い声で言った。
「みさがまた俺たちのもとに戻りたいというなら歓迎するさ」
「ふふ、まぁやってみればいい。無理だとすぐに分かる」
少年は目尻をきゅっと細めて含み笑いをもらした。
イタズラで注目を集めたいがバレて怒られたくもない、そんな無邪気な幼さが一瞬のぞく。
どこまでも掴みどころのないこいつは、一体何者なのか。
「あぁ、そうだ無駄話をしに来たんじゃなかった。君たちにルールを説明しなければ」
「ルール?」
「ひとつ、ゲームをしよう」
こてん、少年が首を傾げる。唇が三日月型に吊り上がる。
「僕とみさはこの建物のどこかにいる。僕達を見つけ出し、なおかつこちらの手駒1000人を皆殺しにすることができたら、君たちの勝ち。もちろん簡単にはいかないよ?能力者も多くいる。どんな能力か、楽しみにしておくといい」
この男は、一体何を目的にこんなことをしているのか。
人の命も、自分の命でさえもまるでおもちゃのように扱って。
「逆に、君たちが全滅したら僕たちの勝ち…あぁ、それからもう1つ。僕は物事が長引くのが嫌いでね。タイムリミットを設けさせてもらう」
少年が振り返る。
その背後の暗がりに、誰かが立つのが分かった。
音もなく、前に進み出たその人物は。
「みさ……」
見間違うことなどあるはずがない、その美貌。
こちらを見下ろす青い虹彩。
唐島みさ、その人だった。
「みさ!!!!!!!」
誰よりも早く、樹さんが飛び出した。手のひらからジェット噴射のように氷を噴き出して空中を飛び上がり、あっという間に2人のいる2階に到達する。
そのまま脅威のバランス感覚で空中でくるりと一回転するとみさに向かって右手を伸ばす。
「やった…!」
翔平さんがガッツポーズをしかけた、その時。
突然金属の巨大な柱が樹さんを弾き飛ばした。
「うッ」
「やべぇッ」
とっさに龍友さんが物質の組成を変える能力『錬金術』で地面を柔らかいクッションに作り替える。激突の勢いをクッションが吸収して、樹さんはなんとか無事だった。
素早く視線を巡らせる。
いた。螺旋階段の影に隠れて、金色に瞳を光らせている男。あいつの能力だ。
「落ち着きなさい、藤原樹くん。まだ僕の話が終わってないだろう?」
微塵の動揺も見せることなく、少年は嗤う。みさも無表情のまま、ゆっくりと右腕を前に差し出した。その白い手に、何か…スイッチのようなものが握りこまれている。
と、2人の頭上にホログラムのモニターが浮かび上がった。
【6:00:00】
「何だ…?」
謎の数字。あれは、一体?
「タイムリミットは6時間。それまでに決着がつかなければ巨大爆弾が爆発、この島は消滅する。爆弾を止めるにはみさの持つスイッチをもう一度押してカウントダウンを止めることだ」
「な、」
みなが言葉を失って少年を見上げていた。
「そんなことをすれば、お前も死ぬんだぞ」
HIROさんが食いしばった歯の隙間から声を絞り出す。
「別に構わないさ」
狂ってる、そう思った。
みさが感情の読み取れない顔で、スイッチの上に置いた親指に力を込めた。
「やめろみさ!」
俺の声は届かない。
【5:59:59】
数字が刻一刻と減っていく。
みさは虚ろな目で、はたりと腕を下ろした。
くそ、くそ、くそ。
怒りでどうにかなりそうだった。
あの男はみさの命さえも自分のおもちゃにしようとしている。
許さない。
殺してやる。
「短いパーティで悪いね。せいぜい楽しんでいきなよ」
「直己さん!」
樹上から弾丸が降り注ぐ。迂回しようにも島へ入るにはこの森を突っ切るしかない。
すでに怪我人も出ている。
その時、前方を走っていた北人さんがふいに地面に右手をついた。
「森の中なら俺がいちばん強い」
ざわりと木々が揺れる。
突然俺たちの目の前を遮っていた巨木がうねり、道を作るように左右に別れていった。さらに狙撃手が乗っていた枝が蛇のようにその身体に巻き付く。
あちこちで人の骨が折れる音が響いた。
さらに地面から何本もの蔦が生え、外からの攻撃を防ぐように重なり合ってアーチを形成する。
そのアーチの先に、目指していた建物が小さく見える。
「この蔦はどんな爆弾にも耐える強度を持ってます。ここを通れば、安全にあそこまで行ける」
「ナイス北人!」
啓司さんが北人さんの髪をぐしゃぐしゃと撫でて走り出した。みんなも足を早めてトンネルの中を駆け抜ける。
「…あ、でもこれ一本道で出口はひとつだけなんで挟み撃ちにされたら終わりです」
「それ先に言ってくんね?」
ドカンと爆音が響いて、こちらに銃口を向けたキャノン砲が火を噴いた。
「『アイギスの盾』!!」
この声は健二郎さん、そう思う前に俺たちの目の前に透明な障壁が形成された。
砲弾が無敵の盾にぶつかって爆ぜる。
「守りなら俺がやります!敵が集まってくる前にはよ進みましょう!」
すごい、LDHの全チームが集まるとこんなにも強いのか。
鳥肌がたつほどの興奮を覚えながら、俺はスピードを緩めることなく走り続ける。
出口は目の前だ。
群がる敵を蹴散らして、俺たちはコンクリートの巨大な建物の前に立った。
「チームに分かれて取り囲め、一気に突入する。索敵の得意な者は内部の把握。中に入ったら好きに暴れていい、狙うはハデスのボスの首だ」
HIROさんの指示で俺たちは阿吽の呼吸で展開していく。
そして窓を叩き割って中に突入していった。
待ってろよ、みさ。
「─────────やあ、ようこそ僕の理想郷へ」
この声。
俺ははっと顔をあげた。
俺たちが飛び込んだのはエントランスホールのような広い場所で、その中心から伸びる螺旋階段のてっぺんに、彼がいる。
黒髪の少年。
「お前は……!」
激しい怒りがこみ上げてきて、俺は即座にライフルのトリガーを引いた。
その額をぶち抜くはずだった弾丸は少年が軽やかに身を翻したため後ろにあった壁に穴を開けただけ。
「ふふ、落ち着けよ長谷川慎くん」
名前が割れている。
みさが教えたのか。
「こうして全員集まるとさすがに壮観だね。五十嵐くん、10年間でよくここまでの人材を集めたものだ」
「我ながら驚くよ。最高の仲間がこんなにも沢山できた」
「ひとり足りないんじゃないかい?」
「今までも色んな理由でLDHを去っていた奴はいる。みさも、お前のことも責めるつもりはないよ」
「へぇ…でも他の何人かはそう思ってないみたいだけど?」
少年が俺と樹さん、亜嵐さんの顔を見て薄く笑った。
見透かされている。俺はぐっと眉を寄せて少年を睨みつける。
HIROさんは低い声で言った。
「みさがまた俺たちのもとに戻りたいというなら歓迎するさ」
「ふふ、まぁやってみればいい。無理だとすぐに分かる」
少年は目尻をきゅっと細めて含み笑いをもらした。
イタズラで注目を集めたいがバレて怒られたくもない、そんな無邪気な幼さが一瞬のぞく。
どこまでも掴みどころのないこいつは、一体何者なのか。
「あぁ、そうだ無駄話をしに来たんじゃなかった。君たちにルールを説明しなければ」
「ルール?」
「ひとつ、ゲームをしよう」
こてん、少年が首を傾げる。唇が三日月型に吊り上がる。
「僕とみさはこの建物のどこかにいる。僕達を見つけ出し、なおかつこちらの手駒1000人を皆殺しにすることができたら、君たちの勝ち。もちろん簡単にはいかないよ?能力者も多くいる。どんな能力か、楽しみにしておくといい」
この男は、一体何を目的にこんなことをしているのか。
人の命も、自分の命でさえもまるでおもちゃのように扱って。
「逆に、君たちが全滅したら僕たちの勝ち…あぁ、それからもう1つ。僕は物事が長引くのが嫌いでね。タイムリミットを設けさせてもらう」
少年が振り返る。
その背後の暗がりに、誰かが立つのが分かった。
音もなく、前に進み出たその人物は。
「みさ……」
見間違うことなどあるはずがない、その美貌。
こちらを見下ろす青い虹彩。
唐島みさ、その人だった。
「みさ!!!!!!!」
誰よりも早く、樹さんが飛び出した。手のひらからジェット噴射のように氷を噴き出して空中を飛び上がり、あっという間に2人のいる2階に到達する。
そのまま脅威のバランス感覚で空中でくるりと一回転するとみさに向かって右手を伸ばす。
「やった…!」
翔平さんがガッツポーズをしかけた、その時。
突然金属の巨大な柱が樹さんを弾き飛ばした。
「うッ」
「やべぇッ」
とっさに龍友さんが物質の組成を変える能力『錬金術』で地面を柔らかいクッションに作り替える。激突の勢いをクッションが吸収して、樹さんはなんとか無事だった。
素早く視線を巡らせる。
いた。螺旋階段の影に隠れて、金色に瞳を光らせている男。あいつの能力だ。
「落ち着きなさい、藤原樹くん。まだ僕の話が終わってないだろう?」
微塵の動揺も見せることなく、少年は嗤う。みさも無表情のまま、ゆっくりと右腕を前に差し出した。その白い手に、何か…スイッチのようなものが握りこまれている。
と、2人の頭上にホログラムのモニターが浮かび上がった。
【6:00:00】
「何だ…?」
謎の数字。あれは、一体?
「タイムリミットは6時間。それまでに決着がつかなければ巨大爆弾が爆発、この島は消滅する。爆弾を止めるにはみさの持つスイッチをもう一度押してカウントダウンを止めることだ」
「な、」
みなが言葉を失って少年を見上げていた。
「そんなことをすれば、お前も死ぬんだぞ」
HIROさんが食いしばった歯の隙間から声を絞り出す。
「別に構わないさ」
狂ってる、そう思った。
みさが感情の読み取れない顔で、スイッチの上に置いた親指に力を込めた。
「やめろみさ!」
俺の声は届かない。
【5:59:59】
数字が刻一刻と減っていく。
みさは虚ろな目で、はたりと腕を下ろした。
くそ、くそ、くそ。
怒りでどうにかなりそうだった。
あの男はみさの命さえも自分のおもちゃにしようとしている。
許さない。
殺してやる。
「短いパーティで悪いね。せいぜい楽しんでいきなよ」