第五章
夢小説設定
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元々の本社の建物の隣に建設した仮本部に向かいバイクを走らせながら、俺と壱馬さんはみさの声に耳を傾けていた。
『みさ、みさ無事!?嫌なこととかされてない!?』
『いっちゃんうるさい。大きい声出すと耳痛くなるから』
樹さんの畳み掛けるような質問にみさらしい辛辣な返事が返ってくる。
『けほっ…いつあの人が戻ってくるか分からないから1度しか言わない。よく聞いてて』
「みさの声…」
時々苦しげな咳が交じるのが気になるが、間違いなくあいつの声だ。
「…でも、声を真似ることのできる能力者とかやったら?罠の可能性もある」
「みさから陣さんに思念を送ったんなら陣さんの顔をハッキリ覚えてないと精神感応はできないんですよね」
「陣さんの顔が敵に割れてたら?早まるな慎。向こうは俺らを負かした強敵なんや、油断できひん」
でも、たとえこれが罠だとしても。
『ここに来ちゃダメ。彼には敵わない。また負けるだけだよ』
俺たちは止まれない。
『マスターが何を目的にこの組織を作ったのかは分からない。でも邪魔をする人間は全員消すハラなの。そういう人なの。こっちはもうみんなの動きに勘づいてる。みすみす死にに来るつもり?バカなことはやめてさっさと理想郷でも何でも探しに行って』
「みさ」
ダウンタウンの中心部に差し掛かる。もうすぐで仮本社だ。
「俺たちは死なないから」
『そんなの、』
「みさも一緒に行こう。俺たちの理想郷 へ」
ブレーキハンドルを握り込む。
俺と壱馬さんの真正面でずらりと横一列に並んだ車やバイク。
LDH、EXILE、EXILE THE SECOND、三代目 J Soul Brothers、GENERATIONS、そしてTHE RAMPAGEの5つの大きな旗が風で翻る。
武器を携えたLDH戦闘員総勢39名。
あまりにも精悍な光景だった。
俺と壱馬さんもその列に加わる。
列の中心にいたHIROさんが低い声で言った。
「俺たちが負けっぱなしじゃいられねぇってことぐらい、お前なら分かるだろ」
『分かってるからこうして忠告してんじゃんこのバカ』
「なぁ、みさ。お前はどちら側の人間なんだ?それじゃまるで俺たちを守ろうとしているみたいだ」
沈黙。
1分後、みさの苦しげな声が返ってきた。
『…今の私には、みんなを殺せない』
でも、と声はさらに続ける。
『このままあの人のそばに居続けたら、私はきっと10年前に戻ってしまう。あの人に殺せと命令されたらきっと躊躇いなくみんなを殺してしまう。私はそれが嫌だ』
みさのこんな声を聞くのは初めてだった。
自身の創造主と俺たちの間で板挟みにされて苦しんでいるのが伝わってくる。
あの男はみさの育ての親であり、最初の恋人でもあり、世界の全てであり、絶対神だったんだろう。
俺はそいつを越えなければならないのだ。
みさの青い眸を思い浮かべる。
(約束したんだ)
幸せになると。
俺の幸せは、あいつを自由にすることだ。アレスの亡霊からも、さらには俺たちからも解放して、自分の意思で自分の運命を決めさせること。
たとえみさが俺や俺たちを選ばなくても構わない。
それが、みさが自分で決めた幸せならば。
「さっき言っただろ。俺たちは死なないって」
『まこっちゃん…』
もう手のひらから大切なものが零れていくのを見ているだけの幼い日の俺じゃない。
俺は、みさを守りたい。
好きだから。
恋をしているから。
「みさみたいなネトゲ廃人に殺されたなんて、死んでも死にきれへんわ」
壱馬さんも楽しそうに笑う。
HIROさんがオープンカーの後部座席で立ち上がった。LDHの大きな旗を肩に担いで、天を仰ぐ。
「俺たちは止まらねぇ。約束の地が待ってる」
これが最後のチャンスだ、と呟いたHIROさんの低い声が鼓膜を、身体を、ビリビリと震わせる。
「そいつにLDHの仲間や罪のない一般人をたくさん殺された。俺たちは死んでいった人たちのために戦わなきゃならないんだ。選ぶのはお前だ、みさ…俺たちと戦うか、一緒に来るか」
『…私に選択肢なんてない』
「いいや、見ていないだけだ。お前には選ぶ権利がある」
『そんなの、』
その時、みさがはっと息を呑む音が聞こえた。一気に声に緊張感が増す。
『あの人が戻ってきた。忠告はしたからね。弔い合戦なんてバカな真似はやめて。絶対に来ちゃダメだよ』
ぷつりと、思念が切れた。陣さんの瞳から金色の光が消える。
みんながHIROさんを見た。
何を言われるかは分かっている。
分かってるんだ。俺たちも、あいつも。
戦わなきゃいけないことくらい。
「行こう。もう止まれない」
『みさ、みさ無事!?嫌なこととかされてない!?』
『いっちゃんうるさい。大きい声出すと耳痛くなるから』
樹さんの畳み掛けるような質問にみさらしい辛辣な返事が返ってくる。
『けほっ…いつあの人が戻ってくるか分からないから1度しか言わない。よく聞いてて』
「みさの声…」
時々苦しげな咳が交じるのが気になるが、間違いなくあいつの声だ。
「…でも、声を真似ることのできる能力者とかやったら?罠の可能性もある」
「みさから陣さんに思念を送ったんなら陣さんの顔をハッキリ覚えてないと精神感応はできないんですよね」
「陣さんの顔が敵に割れてたら?早まるな慎。向こうは俺らを負かした強敵なんや、油断できひん」
でも、たとえこれが罠だとしても。
『ここに来ちゃダメ。彼には敵わない。また負けるだけだよ』
俺たちは止まれない。
『マスターが何を目的にこの組織を作ったのかは分からない。でも邪魔をする人間は全員消すハラなの。そういう人なの。こっちはもうみんなの動きに勘づいてる。みすみす死にに来るつもり?バカなことはやめてさっさと理想郷でも何でも探しに行って』
「みさ」
ダウンタウンの中心部に差し掛かる。もうすぐで仮本社だ。
「俺たちは死なないから」
『そんなの、』
「みさも一緒に行こう。俺たちの
ブレーキハンドルを握り込む。
俺と壱馬さんの真正面でずらりと横一列に並んだ車やバイク。
LDH、EXILE、EXILE THE SECOND、三代目 J Soul Brothers、GENERATIONS、そしてTHE RAMPAGEの5つの大きな旗が風で翻る。
武器を携えたLDH戦闘員総勢39名。
あまりにも精悍な光景だった。
俺と壱馬さんもその列に加わる。
列の中心にいたHIROさんが低い声で言った。
「俺たちが負けっぱなしじゃいられねぇってことぐらい、お前なら分かるだろ」
『分かってるからこうして忠告してんじゃんこのバカ』
「なぁ、みさ。お前はどちら側の人間なんだ?それじゃまるで俺たちを守ろうとしているみたいだ」
沈黙。
1分後、みさの苦しげな声が返ってきた。
『…今の私には、みんなを殺せない』
でも、と声はさらに続ける。
『このままあの人のそばに居続けたら、私はきっと10年前に戻ってしまう。あの人に殺せと命令されたらきっと躊躇いなくみんなを殺してしまう。私はそれが嫌だ』
みさのこんな声を聞くのは初めてだった。
自身の創造主と俺たちの間で板挟みにされて苦しんでいるのが伝わってくる。
あの男はみさの育ての親であり、最初の恋人でもあり、世界の全てであり、絶対神だったんだろう。
俺はそいつを越えなければならないのだ。
みさの青い眸を思い浮かべる。
(約束したんだ)
幸せになると。
俺の幸せは、あいつを自由にすることだ。アレスの亡霊からも、さらには俺たちからも解放して、自分の意思で自分の運命を決めさせること。
たとえみさが俺や俺たちを選ばなくても構わない。
それが、みさが自分で決めた幸せならば。
「さっき言っただろ。俺たちは死なないって」
『まこっちゃん…』
もう手のひらから大切なものが零れていくのを見ているだけの幼い日の俺じゃない。
俺は、みさを守りたい。
好きだから。
恋をしているから。
「みさみたいなネトゲ廃人に殺されたなんて、死んでも死にきれへんわ」
壱馬さんも楽しそうに笑う。
HIROさんがオープンカーの後部座席で立ち上がった。LDHの大きな旗を肩に担いで、天を仰ぐ。
「俺たちは止まらねぇ。約束の地が待ってる」
これが最後のチャンスだ、と呟いたHIROさんの低い声が鼓膜を、身体を、ビリビリと震わせる。
「そいつにLDHの仲間や罪のない一般人をたくさん殺された。俺たちは死んでいった人たちのために戦わなきゃならないんだ。選ぶのはお前だ、みさ…俺たちと戦うか、一緒に来るか」
『…私に選択肢なんてない』
「いいや、見ていないだけだ。お前には選ぶ権利がある」
『そんなの、』
その時、みさがはっと息を呑む音が聞こえた。一気に声に緊張感が増す。
『あの人が戻ってきた。忠告はしたからね。弔い合戦なんてバカな真似はやめて。絶対に来ちゃダメだよ』
ぷつりと、思念が切れた。陣さんの瞳から金色の光が消える。
みんながHIROさんを見た。
何を言われるかは分かっている。
分かってるんだ。俺たちも、あいつも。
戦わなきゃいけないことくらい。
「行こう。もう止まれない」