第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
彼女は持っていたカバンの中からノートパソコンを取り出すと、ものすごい速さでキーボードを叩き始めた。
と、画面の外側についた極小レンズから立体ホロが投影される。
現れたのは、LDH構成員数百人のトップに立つ男だった。
『お、久しぶりだなお前ら』
「HIROさん!!ちわす!!」
「「こんちわーす!」」
俺たちは慌てて頭を下げる。五十嵐広行、通称HIROさんはLDHの人間なら誰もが憧れてやまない存在だった。
『みさどうだ久しぶりの外の空気は。いつまでも地下に閉じこもってネットサーフィンなんかしてたら気が滅入るだろ』
「余計なお世話だから。私はそれが一番落ち着くの。ていうかケーキ!有名パティシエの新作タルト、ちゃんと奢ってよ?」
『ははっ、ほんと甘党だなぁ』
その場にいた全員が呆気に取られていた。
「HIROさんに余計なお世話って言ったであの子…」
「さっきも訳の分からない能力使ってたっぽいし、何者ですかね…?」
壱馬さんとひそひそ話す。
『…さて、今回いきなりそいつを送り込んだりしたのは理由がある。驚かせて悪かったな』
「いえ、大丈夫です。それで理由って?」
『大きな依頼が入ってな。THE RAMPAGEに任せたいと思って』
「依頼…」
『そうだ。みさ』
「はいよー」
再びみさの指が猛然と動く。HIROさんの隣に浮かび上がったのは日本政府のエンブレムと2人の男の顔、それから何かの数値だった。
「依頼主は日本政府。内容はある貿易会社とテロ組織との闇取引の証拠を押さえたうえで両者を徹底的に潰すこと。報酬はまぁ、何たって超国家機関だし低く見積もってもひとり800万ってところかな」
「政府!?」
「はっぴゃくまん…」
みんな唖然としている。
俺たち能力者の多くはその特殊性や凶悪性から国から見放され、辛酸をなめてきた者たちだ。国家ですら手に余る超自然の力を能力者自身も持て余し、結果裏社会で暮らすかスラム街で飢え死ぬしかなかった。実際LDHの構成員で政府にいい思い出がある人間など皆無だ。
俺だって…
そこまで考えて思考を停止する。
思い出したくないもの思い出しちまった。
とにかく、俺は政府もテロリストも嫌いだ。
「お偉いさん方が危惧しているのはここの2つの組織が手を組んだと思われる時期から急速に拡大した武器の密輸と麻薬の闇市場。このまま行けば国家転覆だってレベルでやばいらしいから、うちに泣きついてきたってわけね。まぁ警察も自衛隊もポンコツ極まりないし国の行政機関が秘密結社に頼らないといけないくらいだからいよいよ日本も終わりだね~」
みさまるで他人事のように呟く。
「…俺は」
思わず言葉が零れ出ていた。
「権力を振りかざすしかできない奴らが自分の地位に立ち続けるための手伝いみたいなマネはしたくありません」
「慎!」
陣さんにたしなめられて、そこから先の言葉をぐっと飲み込む。HIROさんは俺の言葉に微笑んで深く頷いた。
『慎の気持ちはよく分かる。俺も連中は嫌いだ。政府に迎合するつもりは毛頭ないよ』
「でも、」
『俺たちの、LDHの目指すものは何だったかを思い出してほしい。俺たちは俺たちなりのやり方で、俺たちだけの理想郷を作る。そうだろ?この訳の分からない力でも護れるものがあるって信じたいんだ、俺は』
HIROさんの過去は誰も知らない。
でも、その強さならよく知っているから。
『依頼主は関係ない。もしこの話が本当なら俺たちの縄張りも、その中で暮らす奴らにも危険が迫ってることになる。俺たちは俺たちの道を通す。護るべきものを守り抜く。だからこの仕事をお前たちに任せたい。その若さとパワーに期待している』
そうだ。俺たちにはやらなきゃいけない理由がある。
この居場所と、仲間と共にあること。みんなを護ること。
俺たちだけの理想郷を。
「…はい」
『よし、頼んだぞ。まぁ話は長くなったが今回は情報戦も鍵になるだろうからな、俺のとっておきのカード、天才ハッカーをサポートとして送り込んだわけだ』
天才ハッカー?
みんながお人形めいた女を振り返った。
いやさっき自分で天才とか言ってたけど、まさか本当にそういう感じなの?
『性格はちょっと変わってるがハッキングの技術は世界トップクラスと言っても過言じゃないくらいの腕利きだから。お前らどんどん頼っていけよ。みさも仲良くやれよ?』
「仕事はやるよ」
『こら』
HIROさんにそこまで言わしめるとは。見た目と態度からして明らかに常人を超えた何かを持っていると思ったのだが、どこまでスペックを盛れば気が済むのだろう。
まるで人間が理想の人間を作ったみたいだ、なんてぼんやり眺めていたらばっちり目が合った。
見つめあっていたのは一瞬のはずなのに、あのガラス玉の瞳には全てがお見通しな気がして。
(苦手だな…)
みさの第一印象なんて、そのくらいだった。
後からこの認識がいかに甘かったかを思い知ることになるなんて、この頃の俺は知るよしもなかったんだ。
と、画面の外側についた極小レンズから立体ホロが投影される。
現れたのは、LDH構成員数百人のトップに立つ男だった。
『お、久しぶりだなお前ら』
「HIROさん!!ちわす!!」
「「こんちわーす!」」
俺たちは慌てて頭を下げる。五十嵐広行、通称HIROさんはLDHの人間なら誰もが憧れてやまない存在だった。
『みさどうだ久しぶりの外の空気は。いつまでも地下に閉じこもってネットサーフィンなんかしてたら気が滅入るだろ』
「余計なお世話だから。私はそれが一番落ち着くの。ていうかケーキ!有名パティシエの新作タルト、ちゃんと奢ってよ?」
『ははっ、ほんと甘党だなぁ』
その場にいた全員が呆気に取られていた。
「HIROさんに余計なお世話って言ったであの子…」
「さっきも訳の分からない能力使ってたっぽいし、何者ですかね…?」
壱馬さんとひそひそ話す。
『…さて、今回いきなりそいつを送り込んだりしたのは理由がある。驚かせて悪かったな』
「いえ、大丈夫です。それで理由って?」
『大きな依頼が入ってな。THE RAMPAGEに任せたいと思って』
「依頼…」
『そうだ。みさ』
「はいよー」
再びみさの指が猛然と動く。HIROさんの隣に浮かび上がったのは日本政府のエンブレムと2人の男の顔、それから何かの数値だった。
「依頼主は日本政府。内容はある貿易会社とテロ組織との闇取引の証拠を押さえたうえで両者を徹底的に潰すこと。報酬はまぁ、何たって超国家機関だし低く見積もってもひとり800万ってところかな」
「政府!?」
「はっぴゃくまん…」
みんな唖然としている。
俺たち能力者の多くはその特殊性や凶悪性から国から見放され、辛酸をなめてきた者たちだ。国家ですら手に余る超自然の力を能力者自身も持て余し、結果裏社会で暮らすかスラム街で飢え死ぬしかなかった。実際LDHの構成員で政府にいい思い出がある人間など皆無だ。
俺だって…
そこまで考えて思考を停止する。
思い出したくないもの思い出しちまった。
とにかく、俺は政府もテロリストも嫌いだ。
「お偉いさん方が危惧しているのはここの2つの組織が手を組んだと思われる時期から急速に拡大した武器の密輸と麻薬の闇市場。このまま行けば国家転覆だってレベルでやばいらしいから、うちに泣きついてきたってわけね。まぁ警察も自衛隊もポンコツ極まりないし国の行政機関が秘密結社に頼らないといけないくらいだからいよいよ日本も終わりだね~」
みさまるで他人事のように呟く。
「…俺は」
思わず言葉が零れ出ていた。
「権力を振りかざすしかできない奴らが自分の地位に立ち続けるための手伝いみたいなマネはしたくありません」
「慎!」
陣さんにたしなめられて、そこから先の言葉をぐっと飲み込む。HIROさんは俺の言葉に微笑んで深く頷いた。
『慎の気持ちはよく分かる。俺も連中は嫌いだ。政府に迎合するつもりは毛頭ないよ』
「でも、」
『俺たちの、LDHの目指すものは何だったかを思い出してほしい。俺たちは俺たちなりのやり方で、俺たちだけの理想郷を作る。そうだろ?この訳の分からない力でも護れるものがあるって信じたいんだ、俺は』
HIROさんの過去は誰も知らない。
でも、その強さならよく知っているから。
『依頼主は関係ない。もしこの話が本当なら俺たちの縄張りも、その中で暮らす奴らにも危険が迫ってることになる。俺たちは俺たちの道を通す。護るべきものを守り抜く。だからこの仕事をお前たちに任せたい。その若さとパワーに期待している』
そうだ。俺たちにはやらなきゃいけない理由がある。
この居場所と、仲間と共にあること。みんなを護ること。
俺たちだけの理想郷を。
「…はい」
『よし、頼んだぞ。まぁ話は長くなったが今回は情報戦も鍵になるだろうからな、俺のとっておきのカード、天才ハッカーをサポートとして送り込んだわけだ』
天才ハッカー?
みんながお人形めいた女を振り返った。
いやさっき自分で天才とか言ってたけど、まさか本当にそういう感じなの?
『性格はちょっと変わってるがハッキングの技術は世界トップクラスと言っても過言じゃないくらいの腕利きだから。お前らどんどん頼っていけよ。みさも仲良くやれよ?』
「仕事はやるよ」
『こら』
HIROさんにそこまで言わしめるとは。見た目と態度からして明らかに常人を超えた何かを持っていると思ったのだが、どこまでスペックを盛れば気が済むのだろう。
まるで人間が理想の人間を作ったみたいだ、なんてぼんやり眺めていたらばっちり目が合った。
見つめあっていたのは一瞬のはずなのに、あのガラス玉の瞳には全てがお見通しな気がして。
(苦手だな…)
みさの第一印象なんて、そのくらいだった。
後からこの認識がいかに甘かったかを思い知ることになるなんて、この頃の俺は知るよしもなかったんだ。