第五章
夢小説設定
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彼は常に私のそはにぴったりと寄り添っていた。ひとりになれる時間はほぼ無い。
今日もコンピュータに向かい合う私の隣で、マスターはじっと私を観察していた。
「ハッキングの腕が上がったね。LDHで培ったものかい?」
「…どうでしょう。10年もあれば、自然に成長するものですし」
「あぁ…そうだね。君がいない10年間のなんと空虚だったことか。ようやく取り戻した」
マスターの手が私の髪を撫で、自らの口元に持っていく。ちゅ、と銀色の髪にキスをしたマスターはふと何かに気がついたように顔を顰めた。
「他の男の匂いがする」
1週間も経ったのに、まだ名残りが残っていたのだろうか。
私は微かな動揺を隠して、キーボードを叩き続ける。
「いけない子だ。君には僕だけだとあれほど言ったのに」
「っ、」
子供とは思えない力で、彼が私の首を掴んだ。じわじわと気道が締められていく。
私は抵抗しない。薄く開いた目で、マスターをまっすぐに見つめる。
マスターのブラックホールのような眸の奥で、紅蓮の色欲が燃えていた。
そうだ、この感覚。
強烈な愛に余すことなく絡め取られていく快感。長らく忘れていた。
マスターの言う通りだ。マスター以外何もいらない。
この人さえいればいい。
私はただ愛されるためだけの人形。
『みさは作りものの人形なんかじゃない』
ふいに聞こえてきた、慎の言葉。
その声は私の身体の裡を沈んでいき、こつんとつま先に引っかかる。
それがどうにも気になってしまうのだ。
慎の声が引っかかったつま先だけは、マスターのものになってくれないのだ。
息が苦しい。
別にこのまま死んでもいいのだけれど、何となくつま先が気になって私は目を閉じる。
意識から慎の声を締め出したくて。
どうせ死ぬのならば、すべてはマスターのために捧げたい。
その時だった。
「教祖さま!」
扉の向こうからマスターを呼ぶ声がした。
「どうやらLDHがこちらの居場所を嗅ぎつけたようです。至急教団への指示を…!」
「……わかった。すぐに行く」
マスターの手からふっと力が抜ける。一気に肺に空気が入ってきて、私は椅子からガシャンと落ちた。激しく咳き込む。
「…みさ、すぐに戻るからいい子で待っているんだよ」
さっきまでとは一変、マスターは柔らかく微笑むと部屋を出ていった。
窓もない部屋には、私とコンピュータだけ。
ようやくひとりになれた。
私は痛む喉元をさすりながら椅子に座り直す。
慎の声。
どんなに頑張っても消えてくれない、あの言葉。
『みさは作りものの人形なんかじゃない』
(私はどうしたいんだろう)
私はどちら側の人間なんだろう。
私が選んだものは一体何なんだろう。
この世に私の頭脳を持ってしても分からないものがあるとすれば、マスターの心の中だけだと思っていた。
でも、どうやらそれだけじゃないらしい。
私は頭の中に陣の顔を思い浮かべて、強く念じた。
届くはずだと願って。
(陣…陣聞こえる?返事して)
数秒後。
『みさ……!?みさか!?』
陣の能力で応答があった。私は外に聞かれないよう小さく早口で喋る。
「あまり時間がない。至急、LDHのみんなに繋げて。伝えたいことがあるの」
今日もコンピュータに向かい合う私の隣で、マスターはじっと私を観察していた。
「ハッキングの腕が上がったね。LDHで培ったものかい?」
「…どうでしょう。10年もあれば、自然に成長するものですし」
「あぁ…そうだね。君がいない10年間のなんと空虚だったことか。ようやく取り戻した」
マスターの手が私の髪を撫で、自らの口元に持っていく。ちゅ、と銀色の髪にキスをしたマスターはふと何かに気がついたように顔を顰めた。
「他の男の匂いがする」
1週間も経ったのに、まだ名残りが残っていたのだろうか。
私は微かな動揺を隠して、キーボードを叩き続ける。
「いけない子だ。君には僕だけだとあれほど言ったのに」
「っ、」
子供とは思えない力で、彼が私の首を掴んだ。じわじわと気道が締められていく。
私は抵抗しない。薄く開いた目で、マスターをまっすぐに見つめる。
マスターのブラックホールのような眸の奥で、紅蓮の色欲が燃えていた。
そうだ、この感覚。
強烈な愛に余すことなく絡め取られていく快感。長らく忘れていた。
マスターの言う通りだ。マスター以外何もいらない。
この人さえいればいい。
私はただ愛されるためだけの人形。
『みさは作りものの人形なんかじゃない』
ふいに聞こえてきた、慎の言葉。
その声は私の身体の裡を沈んでいき、こつんとつま先に引っかかる。
それがどうにも気になってしまうのだ。
慎の声が引っかかったつま先だけは、マスターのものになってくれないのだ。
息が苦しい。
別にこのまま死んでもいいのだけれど、何となくつま先が気になって私は目を閉じる。
意識から慎の声を締め出したくて。
どうせ死ぬのならば、すべてはマスターのために捧げたい。
その時だった。
「教祖さま!」
扉の向こうからマスターを呼ぶ声がした。
「どうやらLDHがこちらの居場所を嗅ぎつけたようです。至急教団への指示を…!」
「……わかった。すぐに行く」
マスターの手からふっと力が抜ける。一気に肺に空気が入ってきて、私は椅子からガシャンと落ちた。激しく咳き込む。
「…みさ、すぐに戻るからいい子で待っているんだよ」
さっきまでとは一変、マスターは柔らかく微笑むと部屋を出ていった。
窓もない部屋には、私とコンピュータだけ。
ようやくひとりになれた。
私は痛む喉元をさすりながら椅子に座り直す。
慎の声。
どんなに頑張っても消えてくれない、あの言葉。
『みさは作りものの人形なんかじゃない』
(私はどうしたいんだろう)
私はどちら側の人間なんだろう。
私が選んだものは一体何なんだろう。
この世に私の頭脳を持ってしても分からないものがあるとすれば、マスターの心の中だけだと思っていた。
でも、どうやらそれだけじゃないらしい。
私は頭の中に陣の顔を思い浮かべて、強く念じた。
届くはずだと願って。
(陣…陣聞こえる?返事して)
数秒後。
『みさ……!?みさか!?』
陣の能力で応答があった。私は外に聞かれないよう小さく早口で喋る。
「あまり時間がない。至急、LDHのみんなに繋げて。伝えたいことがあるの」