第五章
夢小説設定
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秘密結社LDH敗北のニュースはすぐに裏社会を駆け巡った。
たちまち混乱に乗じてLDHの縄張りを荒らす奴らが増えたため、俺たちはノース、サウス、イースト、ウエストの街を手放し、縄張りはダウンタウンのみにまで後退した。
「HIROさんの意識が戻りました!」
大樹さんの声に、俺たちは部屋に駆け込む。
ベッドの上で、HIROさんは身を起こしていた。
「HIROさん…よかった、どうなることかと思っただろ」
篤志さんがほっと息をつく。
「心配かけた」
HIROさんは病室に集まった全チームのメンバーを見回して、優しく微笑んだ。
「みんなは大丈夫?」
「自分の心配してくださいよHIROさん」
「大樹が治してくれたんだ、もう平気だよ」
敬浩さんが呆れ顔でふっと笑う。
そうだ。HIROさんとはこういう人だった。
厳しい中にも優しさがあって、俺たちを第一に考えてくれて。
だからこそ、みさのことが心苦しい。
「…HIROさん、すみません」
「慎?」
HIROさんのまっすぐな目に俺が映る。
「みさが、向こう側に。黒幕らしき少年のことを『マスター』と」
「俺に力がなかったせいで止められませんでした。すみません」
樹さんが頭を下げた。さらに無事に回復しつつある亜嵐さんも悔しげに唇を噛む。
「いや…護衛を頼まれたのは俺なのに、俺が最後まで守り抜けなかったから。俺に責任があります」
去っていくみさの後ろ姿。
あいつは俺たちと敵対することを選んだ。
「…そうか。アレスの亡霊は、まだ生きていたか」
HIROさんが細く息を吐いた。そして俺たちに優しい笑みを向ける。
「慎、樹、亜嵐。よくやってくれた。お前らを責める奴は誰もいないよ。それから全員、苦しい状況でよく戦ってくれた。トップの俺がこんな情けない姿ですまない」
HIROさんは躊躇うことなく頭を下げる。その姿に、俺たちは改めてこの人の偉大さを痛感した。
この人だからこそ、俺たちは一生ついて行くと決めたのだ。
俺たちはみんな、同じ場所を目指す仲間。仲間を責めることなどできない。
でも、仲間のひとりだと思っていたはずのみさはもうここにはいない。そればかりが心に引っかかってしまうのだ。
「…じゃあ、現実的な話をしよう」
病室に簡易な会議セットを作り、HIROさんを中心にチームに分かれて座る。HIROさんの低く厳しい声が響く。
「事態はかつてないほどに悪化している。本社は崩壊、縄張りの縮小、武器の入手ルート分断…名実ともにLDHは地に落ちた」
みんな真剣にHIROさんの話を聞いていた。隣に座った壱馬さんがぎゅっと拳を握りしめる。
「死んでいった人のためにも、この状況を打開するには1度負けた相手を今度こそ倒すことだ。あいつらに奪われたものを全て奪い返すことだ」
そうだ、それ以外に方法はない。
奴らにやられっぱなしでは気が済まない。俺たちのプライドがそれを許さない。
「情報を集めよう。奴らが何者なのか、目的はなにか、規模はどのくらいなのか、本拠地はどこなのか…隅から隅まで調べあげよう」
「「「はい」」」
「それから…みさのことだけど」
HIROさんの眉間のしわが深くなる。
「みさは自分の意思で俺たちのもとを去った。もしあいつが敵対するつもりなら…俺たちも相応の対応をせざるを得ない」
ガタン!
大きな音が響いた。
俺が椅子を蹴って立ち上がった音だった。
「待ってください。あいつはあの人に逆らえない…HIROさんも分かってるんじゃないんですか?あいつに選択肢なんてなかったんです!」
「落ち着け慎!」
壱馬さんが俺の腕を引っ張って座らせようとした。それでも俺は止まらない。
「あの人について行くしかなかったって分かってるのに。あいつと戦うことなんて俺にはできません」
「慎!」
「…慎。みさだけが特別じゃない。死んでいった仲間はどうなる?俺はLDHを去っていく奴らを責めることも追いかけることもしない。でも、敵対する奴に容赦するつもりもない」
HIROさんの表情は険しかった。俺をまっすぐに見つめて、言い聞かせるようにゆっくりと言葉をなぞる。
「迷いがあるなら戦闘には出るな、慎。戦場じゃ目的のない奴から死んでいく」
「っ…」
その時、ずっと黙っていた樹さんが立ち上がった。無言で出口に向かう。AKIRAさんがその背中を呼び止めた。
「樹、どこに行くつもりだ」
「…」
振り返る。
その瞳は、激しい怒りに燃えていた。
「妹を取り返しに行きます。あれが最後なんて、納得できない。やっと出会えたたった一人の家族なんだ」
「待て樹!」
力矢さんの制止も聞かず、樹さんは出ていってしまった。陣さんがHIROさんに頷いてその後を追う。
重苦しい空気が俺たちの上に垂れ篭める。
HIROさんがぼそりと言った。
「辛いのは、みんな同じだよ」
たちまち混乱に乗じてLDHの縄張りを荒らす奴らが増えたため、俺たちはノース、サウス、イースト、ウエストの街を手放し、縄張りはダウンタウンのみにまで後退した。
「HIROさんの意識が戻りました!」
大樹さんの声に、俺たちは部屋に駆け込む。
ベッドの上で、HIROさんは身を起こしていた。
「HIROさん…よかった、どうなることかと思っただろ」
篤志さんがほっと息をつく。
「心配かけた」
HIROさんは病室に集まった全チームのメンバーを見回して、優しく微笑んだ。
「みんなは大丈夫?」
「自分の心配してくださいよHIROさん」
「大樹が治してくれたんだ、もう平気だよ」
敬浩さんが呆れ顔でふっと笑う。
そうだ。HIROさんとはこういう人だった。
厳しい中にも優しさがあって、俺たちを第一に考えてくれて。
だからこそ、みさのことが心苦しい。
「…HIROさん、すみません」
「慎?」
HIROさんのまっすぐな目に俺が映る。
「みさが、向こう側に。黒幕らしき少年のことを『マスター』と」
「俺に力がなかったせいで止められませんでした。すみません」
樹さんが頭を下げた。さらに無事に回復しつつある亜嵐さんも悔しげに唇を噛む。
「いや…護衛を頼まれたのは俺なのに、俺が最後まで守り抜けなかったから。俺に責任があります」
去っていくみさの後ろ姿。
あいつは俺たちと敵対することを選んだ。
「…そうか。アレスの亡霊は、まだ生きていたか」
HIROさんが細く息を吐いた。そして俺たちに優しい笑みを向ける。
「慎、樹、亜嵐。よくやってくれた。お前らを責める奴は誰もいないよ。それから全員、苦しい状況でよく戦ってくれた。トップの俺がこんな情けない姿ですまない」
HIROさんは躊躇うことなく頭を下げる。その姿に、俺たちは改めてこの人の偉大さを痛感した。
この人だからこそ、俺たちは一生ついて行くと決めたのだ。
俺たちはみんな、同じ場所を目指す仲間。仲間を責めることなどできない。
でも、仲間のひとりだと思っていたはずのみさはもうここにはいない。そればかりが心に引っかかってしまうのだ。
「…じゃあ、現実的な話をしよう」
病室に簡易な会議セットを作り、HIROさんを中心にチームに分かれて座る。HIROさんの低く厳しい声が響く。
「事態はかつてないほどに悪化している。本社は崩壊、縄張りの縮小、武器の入手ルート分断…名実ともにLDHは地に落ちた」
みんな真剣にHIROさんの話を聞いていた。隣に座った壱馬さんがぎゅっと拳を握りしめる。
「死んでいった人のためにも、この状況を打開するには1度負けた相手を今度こそ倒すことだ。あいつらに奪われたものを全て奪い返すことだ」
そうだ、それ以外に方法はない。
奴らにやられっぱなしでは気が済まない。俺たちのプライドがそれを許さない。
「情報を集めよう。奴らが何者なのか、目的はなにか、規模はどのくらいなのか、本拠地はどこなのか…隅から隅まで調べあげよう」
「「「はい」」」
「それから…みさのことだけど」
HIROさんの眉間のしわが深くなる。
「みさは自分の意思で俺たちのもとを去った。もしあいつが敵対するつもりなら…俺たちも相応の対応をせざるを得ない」
ガタン!
大きな音が響いた。
俺が椅子を蹴って立ち上がった音だった。
「待ってください。あいつはあの人に逆らえない…HIROさんも分かってるんじゃないんですか?あいつに選択肢なんてなかったんです!」
「落ち着け慎!」
壱馬さんが俺の腕を引っ張って座らせようとした。それでも俺は止まらない。
「あの人について行くしかなかったって分かってるのに。あいつと戦うことなんて俺にはできません」
「慎!」
「…慎。みさだけが特別じゃない。死んでいった仲間はどうなる?俺はLDHを去っていく奴らを責めることも追いかけることもしない。でも、敵対する奴に容赦するつもりもない」
HIROさんの表情は険しかった。俺をまっすぐに見つめて、言い聞かせるようにゆっくりと言葉をなぞる。
「迷いがあるなら戦闘には出るな、慎。戦場じゃ目的のない奴から死んでいく」
「っ…」
その時、ずっと黙っていた樹さんが立ち上がった。無言で出口に向かう。AKIRAさんがその背中を呼び止めた。
「樹、どこに行くつもりだ」
「…」
振り返る。
その瞳は、激しい怒りに燃えていた。
「妹を取り返しに行きます。あれが最後なんて、納得できない。やっと出会えたたった一人の家族なんだ」
「待て樹!」
力矢さんの制止も聞かず、樹さんは出ていってしまった。陣さんがHIROさんに頷いてその後を追う。
重苦しい空気が俺たちの上に垂れ篭める。
HIROさんがぼそりと言った。
「辛いのは、みんな同じだよ」