第五章
夢小説設定
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初めて人を殺した。
仕方なかった。
だって死にたくなかったから。
頭蓋骨を粉砕されて転がる男からライフルと銃弾を奪い取って走り出す。
「母さん…………!」
館に続く道をテロリストたちが走っていくのが見えた。
母さんが、娼館のみんなが危ない。
俺は銃声と悲鳴が鳴り響く道をひた走った。途中で3人殺した。
館へと続く坂道を一気に駆け上がって、空きっぱなしの玄関に飛び込む。
今でもあの光景をはっきりと覚えている。
俺に優しくしてくれた館のみんなが、弾丸やナイフの餌食になって殺されていく瞬間を。
「逃げて!!!慎!!」
娼婦のひとりが俺を見て叫ぶ。次の瞬間には喉笛を切られて絶命した。
「あ…………あぁ………」
俺の口から声にならない声が零れ落ちる。
と、ふいに俺の耳に誰かの叫びが飛び込んできた。
「いやッ!!!!!離して!!!!」
はっと顔を上げた。
「母さん………!!」
「慎!!!!!!!」
母さんが男に髪を掴まれて部屋から引きずり出されてきた。右足から血が流れている。
きっと怪我をして隠れていたところを見つかってしまったのだ。
俺は母さんのもとへと駆け出した。
嫌だ。
やめてくれ。
母さんは、母さんだけは。
「母さん!!!!!!!!!!!!!!!!」
「慎………逃げて…………………………」
別れというものは、時に呆気ない。
たった1発の銃弾に頭を撃ち抜かれて、母さんは息絶えた。
俺の目の前で。
母さんは死んでしまった。
この感情を、人は何と呼ぶのだろう。
絶望?悲しみ?怒り?恐怖?
いや、どれでもない。
俺の視界を真っ黒に染め上げ、血を沸騰させ、脳みそをぐちゃぐちゃにして骨を砕き肉を裂くような激情。
「この女の息子か?さっさとママの後を追えよ」
銃口がこちらに向けられる。
「─────────許さない」
「あ?」
俺は銃口が向けられていることも気にせず、その場に立ち尽くしていた。
真っ黒な激情が俺の身体を、神経を、支配する。
「殺してやる」
殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる
「殺してやる」
次に気がついた時には血の海の真ん中に立っていた。
周りには俺が殺したテロリストたちがあられもない所を撃ち抜かれて倒れている。
ライフルひとつで、全員殺してしまったのだ。
今なら分かる。俺には人を殺す才能があったのだと。
しかし当時の俺はそんなことを知る由もなくただただ混乱していて、もはや俺の血かこいつらの返り血かも分からなかった。
身体中が痛い。
俺は歩き出した。
死後硬直が始まってカチカチになった母さんの屍を踏み越えて、館を後にする。
変わり果てた街を突っ切り、行く宛もなく歩き続けた。
見知らぬスラム街の路地裏まで歩いたところで、体力が底を尽きる。
ガシャリ手からライフルが滑り落ち、俺もその場に倒れ込んだ。
どくどくと、血が流れていく。
「俺、死ぬのかな」
答えは返ってこない。
「死にたくないな」
狭い空を見あげて呟く。
せっかくたくさん殺したのに、死んでしまうのは嫌だった。
でも、大切な人たちのもとへ行けるのならそれでいいような気もする。
(もう、どっちでもいいや)
俺は目を閉じた。
何も見えなくなる。
未来が見えても、遠くが見えても。大切なひとを守れないのならこんな目なんかあってもなくても変わらない。
こんな力も、こんな命も。
本当はどうでもいいんだ。こんな小汚い路地裏で誰に知られることもなく死んでいくのなら、それが俺の運命だったんだ。
俺はただ、幸せに暮らしたかっただけなのに。
「母さん……………………………………………」
意識が沈んでいく。
完全に途切れる一瞬前に、銀色の髪と青い瞳が俺を見て笑った気がした。
仕方なかった。
だって死にたくなかったから。
頭蓋骨を粉砕されて転がる男からライフルと銃弾を奪い取って走り出す。
「母さん…………!」
館に続く道をテロリストたちが走っていくのが見えた。
母さんが、娼館のみんなが危ない。
俺は銃声と悲鳴が鳴り響く道をひた走った。途中で3人殺した。
館へと続く坂道を一気に駆け上がって、空きっぱなしの玄関に飛び込む。
今でもあの光景をはっきりと覚えている。
俺に優しくしてくれた館のみんなが、弾丸やナイフの餌食になって殺されていく瞬間を。
「逃げて!!!慎!!」
娼婦のひとりが俺を見て叫ぶ。次の瞬間には喉笛を切られて絶命した。
「あ…………あぁ………」
俺の口から声にならない声が零れ落ちる。
と、ふいに俺の耳に誰かの叫びが飛び込んできた。
「いやッ!!!!!離して!!!!」
はっと顔を上げた。
「母さん………!!」
「慎!!!!!!!」
母さんが男に髪を掴まれて部屋から引きずり出されてきた。右足から血が流れている。
きっと怪我をして隠れていたところを見つかってしまったのだ。
俺は母さんのもとへと駆け出した。
嫌だ。
やめてくれ。
母さんは、母さんだけは。
「母さん!!!!!!!!!!!!!!!!」
「慎………逃げて…………………………」
別れというものは、時に呆気ない。
たった1発の銃弾に頭を撃ち抜かれて、母さんは息絶えた。
俺の目の前で。
母さんは死んでしまった。
この感情を、人は何と呼ぶのだろう。
絶望?悲しみ?怒り?恐怖?
いや、どれでもない。
俺の視界を真っ黒に染め上げ、血を沸騰させ、脳みそをぐちゃぐちゃにして骨を砕き肉を裂くような激情。
「この女の息子か?さっさとママの後を追えよ」
銃口がこちらに向けられる。
「─────────許さない」
「あ?」
俺は銃口が向けられていることも気にせず、その場に立ち尽くしていた。
真っ黒な激情が俺の身体を、神経を、支配する。
「殺してやる」
殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる
「殺してやる」
次に気がついた時には血の海の真ん中に立っていた。
周りには俺が殺したテロリストたちがあられもない所を撃ち抜かれて倒れている。
ライフルひとつで、全員殺してしまったのだ。
今なら分かる。俺には人を殺す才能があったのだと。
しかし当時の俺はそんなことを知る由もなくただただ混乱していて、もはや俺の血かこいつらの返り血かも分からなかった。
身体中が痛い。
俺は歩き出した。
死後硬直が始まってカチカチになった母さんの屍を踏み越えて、館を後にする。
変わり果てた街を突っ切り、行く宛もなく歩き続けた。
見知らぬスラム街の路地裏まで歩いたところで、体力が底を尽きる。
ガシャリ手からライフルが滑り落ち、俺もその場に倒れ込んだ。
どくどくと、血が流れていく。
「俺、死ぬのかな」
答えは返ってこない。
「死にたくないな」
狭い空を見あげて呟く。
せっかくたくさん殺したのに、死んでしまうのは嫌だった。
でも、大切な人たちのもとへ行けるのならそれでいいような気もする。
(もう、どっちでもいいや)
俺は目を閉じた。
何も見えなくなる。
未来が見えても、遠くが見えても。大切なひとを守れないのならこんな目なんかあってもなくても変わらない。
こんな力も、こんな命も。
本当はどうでもいいんだ。こんな小汚い路地裏で誰に知られることもなく死んでいくのなら、それが俺の運命だったんだ。
俺はただ、幸せに暮らしたかっただけなのに。
「母さん……………………………………………」
意識が沈んでいく。
完全に途切れる一瞬前に、銀色の髪と青い瞳が俺を見て笑った気がした。