第四章
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どうにかたどり着いた3階の管制室はまさかのもぬけの殻で、俺たちは襲いかかる敵を倒しながらみさを探し回った。
俺の透視能力でようやく見つけた、巨大な地下室。
そこへ繋がる階段に敵が群がるのを見て、血が沸騰するかのような怒りと焦燥を感じた。
無我夢中で殺しまくり、ようやく地下室への入口が見えたと思ったら。
なぜか10歳前後の黒髪の少年がいて、みさがいて、亜嵐さんが撃たれていた。
「亜嵐!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「亜嵐さん!!!!!!!!!!!!!!!」
叫んだのは俺か、樹さんか。
激しい怒りに駆られて、無防備に背中を向ける少年へ右の回し蹴りを叩き込もうとした。
しかし。
背中に目でも付いているかのような反応で、少年はそれを躱す。
「な…!?」
続けざまに樹さんの氷が少年を襲うが、これも鮮やかに避けられてしまった。
地下室に転がり込んだ俺たちを見下ろして、少年は愉快そうに肩を揺らす。
その底なしに闇が広がる瞳に、背筋をぞわりと寒気がはい登った。
何なんだ、こいつは。
「いい動きだね」
少年が言う。
まだ声変わりも終わっていないような高く甘い声だったが、ここにも底なしの不気味さがあった。
そこで、ふと思い出す。
みさが言っていた、倉庫に現れた黒髪の少年。見た目も年齢も合致する。
こいつがそうなのか…?
「君は…あぁ、噂の凄腕スナイパーくんか。で、そっちがドクター藤原の忘れ形見。大きくなったね」
知っている。樹さんのことを。
はるかに年下の少年がまるで老人のようなことを平然と言う様子はどこか滑稽で、そして薄ら寒かった。
亜嵐さんに止血を施していた樹さんが低く唸るように問うた。
「誰だお前」
「僕が誰かだって?」
にいっと、薄い唇が弧を描く。
そして、俺たちの背後で立ち尽くすみさに目を向けた。
さっきまで真っ黒なブラックホールだった瞳にかすかな色が宿る。
それはたぶん、愛の色だ。
「それは、みさが知ってるはずだよ…愛しい僕のアフロディーテ」
アフロディーテ。俺が足の指を折った、あの女が口にしていた。
アレスのボスが名付けたという美を司る女神の名。
みさは淡いブルーの瞳を大きく見開いて、少年を凝視していた。身体が微かに震えているのは恐怖からか、はたまた
喜びか。
「マスター……………?」
主人 。
つまり、みさを創り出したマフィア、アレスファミリーのボス?
いやでも俺が見た過去の中では、彼は壮年の男性だったはず。
こんな子供なはずがない。
ガチャリ
みさの手からハンドガンが滑り落ちた。
その青い瞳いっぱいに少年を映して、みさは驚愕の表情を浮かべている。
「マスター…?でも、そんなはず、」
「僕を疑うの?みさ」
みさ。
ただ名前を呼んだだけなのに、言い様のない恐怖が俺の心に突き刺さる。
みさの華奢な肩がビクリと震えた。
少年はゆっくりと部屋の中を通り過ぎ、最奥でぴたりと足を止める。
「…あなたは10年前に死んだ。間違いありません」
「ああそうだ。五十嵐広行に負け、君の目の前で殺された。あの時の僕には若い頃の体力がなかった、それが敗因だ」
でも、今こうして蘇った。
少年が嗤う。
「蘇った…」
ふと俺は前に見た未来を思い出した。
遠ざかる背中、さよならの言葉。
とっさにみさの手を掴む。
俺を見上げたその瞳は、俺には伺いしれない何かの狭間で揺れていた。
「まこっちゃ、」
「ダメだみさ」
何がダメなのかは分からない。
自分には分かりえないことがこの2人の間にあるという、得体の知れない恐怖に駆られて口走った言葉だった。
その時、頭上から一際大きな爆発音が鳴り響いた。ぐらりとバランスを崩しそうなほど足元が大きく揺れる。
天井を見上げた樹さんの顔に絶望が浮かぶ。
「まじかよ…」
建物全体が崩れ始めていた。
コンクリートの天井にビシビシと亀裂が入り、小さな破片が降り注ぐ。
まずい。このままだと全員ガレキの下敷きになる。
俺がみさの手を引っ張って出口に向かおうとしたその時、少年がまたみさを呼んだ。
こんな緊迫した状況にはまるで似つかわしくない、静かな声だった。
「戻っておいで、みさ」
みさの足がぴたりと止まる。
降り注ぐガレキの向こうで、少年は微笑んでいた。
「君は誰のものだったのかを忘れてしまったのかい?」
ビルの崩壊は止まらない。
俺は地面に縫い付けられたように動こうとしないみさの手を必死に引っ張った。
樹さんも空いている方の手を掴む。
「みさ、ダメだ。行くな」
樹さんが言ったその言葉は懇願に近かった。俺も崩壊の轟音にかき消されないよう、必死に叫ぶ。
「みさ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
みさが俺と樹さんを見上げた。
目が合う。
淡いブルーの虹彩に宿っていたのは決意の色だった。
まさか、そんな、
そう言おうとした瞬間にみさの膝が俺のみぞおちに食い込む。肺の中の空気が全て外に出て、一瞬視界がホワイトアウトした。
受け身を取る間もなく、出口へと繋がる階段まで吹っ飛ばされる。
「まこっちゃん!!!!!ッ、ぐ」
続けざまに樹さんも蹴り飛ばされる。さらに意識のない亜嵐さんの身体も樹さんの上にどさりと降ってきた。
降り注ぐガレキの向こうで、みさが背を向ける。
あの時見た光景と全く同じ。
あぁ、俺はまた失うのか。
大切な人を。
「さよなら」
俺の透視能力でようやく見つけた、巨大な地下室。
そこへ繋がる階段に敵が群がるのを見て、血が沸騰するかのような怒りと焦燥を感じた。
無我夢中で殺しまくり、ようやく地下室への入口が見えたと思ったら。
なぜか10歳前後の黒髪の少年がいて、みさがいて、亜嵐さんが撃たれていた。
「亜嵐!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「亜嵐さん!!!!!!!!!!!!!!!」
叫んだのは俺か、樹さんか。
激しい怒りに駆られて、無防備に背中を向ける少年へ右の回し蹴りを叩き込もうとした。
しかし。
背中に目でも付いているかのような反応で、少年はそれを躱す。
「な…!?」
続けざまに樹さんの氷が少年を襲うが、これも鮮やかに避けられてしまった。
地下室に転がり込んだ俺たちを見下ろして、少年は愉快そうに肩を揺らす。
その底なしに闇が広がる瞳に、背筋をぞわりと寒気がはい登った。
何なんだ、こいつは。
「いい動きだね」
少年が言う。
まだ声変わりも終わっていないような高く甘い声だったが、ここにも底なしの不気味さがあった。
そこで、ふと思い出す。
みさが言っていた、倉庫に現れた黒髪の少年。見た目も年齢も合致する。
こいつがそうなのか…?
「君は…あぁ、噂の凄腕スナイパーくんか。で、そっちがドクター藤原の忘れ形見。大きくなったね」
知っている。樹さんのことを。
はるかに年下の少年がまるで老人のようなことを平然と言う様子はどこか滑稽で、そして薄ら寒かった。
亜嵐さんに止血を施していた樹さんが低く唸るように問うた。
「誰だお前」
「僕が誰かだって?」
にいっと、薄い唇が弧を描く。
そして、俺たちの背後で立ち尽くすみさに目を向けた。
さっきまで真っ黒なブラックホールだった瞳にかすかな色が宿る。
それはたぶん、愛の色だ。
「それは、みさが知ってるはずだよ…愛しい僕のアフロディーテ」
アフロディーテ。俺が足の指を折った、あの女が口にしていた。
アレスのボスが名付けたという美を司る女神の名。
みさは淡いブルーの瞳を大きく見開いて、少年を凝視していた。身体が微かに震えているのは恐怖からか、はたまた
喜びか。
「マスター……………?」
つまり、みさを創り出したマフィア、アレスファミリーのボス?
いやでも俺が見た過去の中では、彼は壮年の男性だったはず。
こんな子供なはずがない。
ガチャリ
みさの手からハンドガンが滑り落ちた。
その青い瞳いっぱいに少年を映して、みさは驚愕の表情を浮かべている。
「マスター…?でも、そんなはず、」
「僕を疑うの?みさ」
みさ。
ただ名前を呼んだだけなのに、言い様のない恐怖が俺の心に突き刺さる。
みさの華奢な肩がビクリと震えた。
少年はゆっくりと部屋の中を通り過ぎ、最奥でぴたりと足を止める。
「…あなたは10年前に死んだ。間違いありません」
「ああそうだ。五十嵐広行に負け、君の目の前で殺された。あの時の僕には若い頃の体力がなかった、それが敗因だ」
でも、今こうして蘇った。
少年が嗤う。
「蘇った…」
ふと俺は前に見た未来を思い出した。
遠ざかる背中、さよならの言葉。
とっさにみさの手を掴む。
俺を見上げたその瞳は、俺には伺いしれない何かの狭間で揺れていた。
「まこっちゃ、」
「ダメだみさ」
何がダメなのかは分からない。
自分には分かりえないことがこの2人の間にあるという、得体の知れない恐怖に駆られて口走った言葉だった。
その時、頭上から一際大きな爆発音が鳴り響いた。ぐらりとバランスを崩しそうなほど足元が大きく揺れる。
天井を見上げた樹さんの顔に絶望が浮かぶ。
「まじかよ…」
建物全体が崩れ始めていた。
コンクリートの天井にビシビシと亀裂が入り、小さな破片が降り注ぐ。
まずい。このままだと全員ガレキの下敷きになる。
俺がみさの手を引っ張って出口に向かおうとしたその時、少年がまたみさを呼んだ。
こんな緊迫した状況にはまるで似つかわしくない、静かな声だった。
「戻っておいで、みさ」
みさの足がぴたりと止まる。
降り注ぐガレキの向こうで、少年は微笑んでいた。
「君は誰のものだったのかを忘れてしまったのかい?」
ビルの崩壊は止まらない。
俺は地面に縫い付けられたように動こうとしないみさの手を必死に引っ張った。
樹さんも空いている方の手を掴む。
「みさ、ダメだ。行くな」
樹さんが言ったその言葉は懇願に近かった。俺も崩壊の轟音にかき消されないよう、必死に叫ぶ。
「みさ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
みさが俺と樹さんを見上げた。
目が合う。
淡いブルーの虹彩に宿っていたのは決意の色だった。
まさか、そんな、
そう言おうとした瞬間にみさの膝が俺のみぞおちに食い込む。肺の中の空気が全て外に出て、一瞬視界がホワイトアウトした。
受け身を取る間もなく、出口へと繋がる階段まで吹っ飛ばされる。
「まこっちゃん!!!!!ッ、ぐ」
続けざまに樹さんも蹴り飛ばされる。さらに意識のない亜嵐さんの身体も樹さんの上にどさりと降ってきた。
降り注ぐガレキの向こうで、みさが背を向ける。
あの時見た光景と全く同じ。
あぁ、俺はまた失うのか。
大切な人を。
「さよなら」