第四章
夢小説設定
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今宵は見事なまでの満月だった。隣で夜空を見上げた北人さんが小さくため息をつく。
「あんなに月が明るかったら星が見えない」
「出た。ロマンチストほくちゃん」
バリケードの外に向けた視線はそのままに、陸さんが笑う。
「嫌な月やな…静かすぎる」
壱馬さんがため息をついた。指の先に火を灯し、煙草をくゆらせる。
ウエスタンシティが何者かの襲撃を受けたのは今朝のこと。俺の予知をうけ武器などの準備をしていたため、対応は迅速だった。
アジトを中心に半径1kmほどのバリケードを作り、そこに街の住人を囲いこんだ。敵が女子供問わず目に入った人間を片っ端から殺していたからだ。
正体も、目的も分からない。倒しても倒しても死体を踏み越えて新たな敵が突っ込んでくる。戦う意思のない者まで殺していく。
正直、不気味だった。
夜になり一旦攻撃は止んだが油断していられない。俺たちはバリケードの中に散らばり、交代で睡眠を取りながら見張りを行っている。
「拓磨、たーくーま。いびきうるせぇよ」
「寝かせといてやりなよまこっちゃん。時間ある時に休まないと体が持たない」
北人さんが言いながら俺に携帯食糧の袋をぽんと放る。俺はそばでひっくりかえっていびきをかく拓磨を揺するのを止め、栄養素の塊みたいなブロックに歯を立てた。
「…やっぱり、例のカルト集団なんですかね」
「さぁな。でも、死ぬことも怖くないみたいな無茶苦茶な戦い方は似てる気がする」
「そうか、まこっちゃんと壱馬は一回戦ったんだよね」
「はい。壱馬さんの言う通り、自己犠牲を何とも思わない感じは前に戦った奴らと共通してます。ただ、執拗に俺たちを攻めたてる目的が分からない」
「前にみさが言ってたやろ。カルト宗教なんて訳の分からんものを信じてる時点で目的なんか考えても無駄なんや」
紫煙を吐いて、壱馬さんが呟く。
そうだ、みさ。
あの未来で言っていた『さよなら』がどうしても気になって、さっきから何度も携帯に電話をかけているが全く出る様子がない。
まぁみさのことだからネットサーフィンに夢中になって気づいていないのだろうが。
その時、ふいに俺たちの耳元に陣さんの緊迫した声が響いた。
『こちら陣。全員落ち着いて聞いてくれ』
陣さんは今本社に連絡を取っていたはず。どうしたんだろう。
『本社が何者かに襲撃された。たった今HIROさんから無線で連絡があったから間違いない』
俺はその言葉で弾かれたように立ち上がった。ダウンタウンの方向に目を凝らす。
能力を使って本社ビルにピントを合わせると確かにその周囲に数百人もの敵が群がり、EXILEのメンバーと交戦していた。
「本当だ…本社が襲われてる…!」
「そんなバカな!だってダウンタウンに到達するにはTRIBEの守る4つの街を通らなきゃいけないんだよ?どっかが突破されたってこと?」
陸さんが金髪をくしゃりと掴んで顔をゆがめた。
LDHのナワバリは本丸であるダウンタウンの四方を俺たちTHE RAMPAGEのウエスタンシティ、GENERATIONSのサウスタウン、三代目 J SOUL BROTHERSのイーストタウン、EXILE THE SECONDのノースシティが囲うようにして守っている。
ダウンタウンへ向かうにはその4つの街のどこかを通らなければならないということであり、つまり能力者揃いのEXILE TRIBEチームのいずれかを倒さなければならないのである。
俺たちのところはまだギリギリ戦線を保っているし、他のチームのどこかが突破されたという情報も入っていない。一体何が起こっているというんだ。
混乱する俺たちに、陣さんが早口で続ける。
『そんな情報は入ってきてないから分からへんけど、ノースもイーストもサウスもほぼ同時に襲われてる。たぶんここへの攻撃も再開されるやろ』
俺はぐるりと360度周囲を見回した。
確かに縄張りのあちこちで戦いの火花が散っている。さらにここへ近づいてくる敵の車も確認できた。
「こちら慎。奴らが来ます。敵の数、おそらく300人以上」
『こちら力矢。全員戦闘準備だ。街の住人は必ず守り切れ。このバリケードだけは絶対に突破させるなよ』
「どうなってんだよ…」
煙草の吸殻を握り潰して、壱馬さんがハンドガンを手に取った。俺もスナイパーライフルに弾を装填する。
ダウンタウンの方角を振り返る。
本社にはみさがいるはずだ。すぐにでも本社に駆けつけたいと思ったが、あそこを守るのはLDH最強と謳われるEXILE。あの人たちに任せておけば大丈夫だろう。
俺が今やるべき事は、ここで、俺たちの街を守り抜くこと。
『EXILEと兼任のメンバーは大丈夫なんですかね…本社の守りは手薄になってたら…』
龍が尋ねるのが聞こえた。
『大丈夫や。THE SECONDからはAKIRAさんが、3代目からは直人さんと岩さんが、ジェネからは亜嵐さんがそれぞれダウンタウンに応援に入ってる。HIROさんは「体力も資源も他チームより消耗してるTHE RAMPAGEには自分の戦いに集中してほしい」って言っとった。俺もそれが1番いいと思う。今戦力を分散させるのは得策やない』
陣さんの言う通りだ。今目の前の戦いを疎かにしてここが突破されればさらに多くの敵がダウンタウンに流れ込むことになる。
俺たちは死んでもここで敵を食い止めなければならない。
「…!来た」
バリケードの隙間から外を伺っていた陸さんが呟いて小機関銃を構える。
夜の闇から滲み出てきたように、数え切れないほどの敵が包囲網をじわじわと狭めていた。誰もが瞳に不気味な炎を揺らめかせている。
『死んでもここを通すな。でも絶対に死ぬなよ。死んだら俺がもう1回殺すからな』
めちゃくちゃなことを言う。力矢さんの乱暴だが熱い鼓舞の言葉に俺たちは思わず笑みを浮かべた。
萎れていた気持ちを奮い立たせる。
みさ、無事でいろよ。
心の中で呟いて、俺はライフルの引き金を引いた。
「あんなに月が明るかったら星が見えない」
「出た。ロマンチストほくちゃん」
バリケードの外に向けた視線はそのままに、陸さんが笑う。
「嫌な月やな…静かすぎる」
壱馬さんがため息をついた。指の先に火を灯し、煙草をくゆらせる。
ウエスタンシティが何者かの襲撃を受けたのは今朝のこと。俺の予知をうけ武器などの準備をしていたため、対応は迅速だった。
アジトを中心に半径1kmほどのバリケードを作り、そこに街の住人を囲いこんだ。敵が女子供問わず目に入った人間を片っ端から殺していたからだ。
正体も、目的も分からない。倒しても倒しても死体を踏み越えて新たな敵が突っ込んでくる。戦う意思のない者まで殺していく。
正直、不気味だった。
夜になり一旦攻撃は止んだが油断していられない。俺たちはバリケードの中に散らばり、交代で睡眠を取りながら見張りを行っている。
「拓磨、たーくーま。いびきうるせぇよ」
「寝かせといてやりなよまこっちゃん。時間ある時に休まないと体が持たない」
北人さんが言いながら俺に携帯食糧の袋をぽんと放る。俺はそばでひっくりかえっていびきをかく拓磨を揺するのを止め、栄養素の塊みたいなブロックに歯を立てた。
「…やっぱり、例のカルト集団なんですかね」
「さぁな。でも、死ぬことも怖くないみたいな無茶苦茶な戦い方は似てる気がする」
「そうか、まこっちゃんと壱馬は一回戦ったんだよね」
「はい。壱馬さんの言う通り、自己犠牲を何とも思わない感じは前に戦った奴らと共通してます。ただ、執拗に俺たちを攻めたてる目的が分からない」
「前にみさが言ってたやろ。カルト宗教なんて訳の分からんものを信じてる時点で目的なんか考えても無駄なんや」
紫煙を吐いて、壱馬さんが呟く。
そうだ、みさ。
あの未来で言っていた『さよなら』がどうしても気になって、さっきから何度も携帯に電話をかけているが全く出る様子がない。
まぁみさのことだからネットサーフィンに夢中になって気づいていないのだろうが。
その時、ふいに俺たちの耳元に陣さんの緊迫した声が響いた。
『こちら陣。全員落ち着いて聞いてくれ』
陣さんは今本社に連絡を取っていたはず。どうしたんだろう。
『本社が何者かに襲撃された。たった今HIROさんから無線で連絡があったから間違いない』
俺はその言葉で弾かれたように立ち上がった。ダウンタウンの方向に目を凝らす。
能力を使って本社ビルにピントを合わせると確かにその周囲に数百人もの敵が群がり、EXILEのメンバーと交戦していた。
「本当だ…本社が襲われてる…!」
「そんなバカな!だってダウンタウンに到達するにはTRIBEの守る4つの街を通らなきゃいけないんだよ?どっかが突破されたってこと?」
陸さんが金髪をくしゃりと掴んで顔をゆがめた。
LDHのナワバリは本丸であるダウンタウンの四方を俺たちTHE RAMPAGEのウエスタンシティ、GENERATIONSのサウスタウン、三代目 J SOUL BROTHERSのイーストタウン、EXILE THE SECONDのノースシティが囲うようにして守っている。
ダウンタウンへ向かうにはその4つの街のどこかを通らなければならないということであり、つまり能力者揃いのEXILE TRIBEチームのいずれかを倒さなければならないのである。
俺たちのところはまだギリギリ戦線を保っているし、他のチームのどこかが突破されたという情報も入っていない。一体何が起こっているというんだ。
混乱する俺たちに、陣さんが早口で続ける。
『そんな情報は入ってきてないから分からへんけど、ノースもイーストもサウスもほぼ同時に襲われてる。たぶんここへの攻撃も再開されるやろ』
俺はぐるりと360度周囲を見回した。
確かに縄張りのあちこちで戦いの火花が散っている。さらにここへ近づいてくる敵の車も確認できた。
「こちら慎。奴らが来ます。敵の数、おそらく300人以上」
『こちら力矢。全員戦闘準備だ。街の住人は必ず守り切れ。このバリケードだけは絶対に突破させるなよ』
「どうなってんだよ…」
煙草の吸殻を握り潰して、壱馬さんがハンドガンを手に取った。俺もスナイパーライフルに弾を装填する。
ダウンタウンの方角を振り返る。
本社にはみさがいるはずだ。すぐにでも本社に駆けつけたいと思ったが、あそこを守るのはLDH最強と謳われるEXILE。あの人たちに任せておけば大丈夫だろう。
俺が今やるべき事は、ここで、俺たちの街を守り抜くこと。
『EXILEと兼任のメンバーは大丈夫なんですかね…本社の守りは手薄になってたら…』
龍が尋ねるのが聞こえた。
『大丈夫や。THE SECONDからはAKIRAさんが、3代目からは直人さんと岩さんが、ジェネからは亜嵐さんがそれぞれダウンタウンに応援に入ってる。HIROさんは「体力も資源も他チームより消耗してるTHE RAMPAGEには自分の戦いに集中してほしい」って言っとった。俺もそれが1番いいと思う。今戦力を分散させるのは得策やない』
陣さんの言う通りだ。今目の前の戦いを疎かにしてここが突破されればさらに多くの敵がダウンタウンに流れ込むことになる。
俺たちは死んでもここで敵を食い止めなければならない。
「…!来た」
バリケードの隙間から外を伺っていた陸さんが呟いて小機関銃を構える。
夜の闇から滲み出てきたように、数え切れないほどの敵が包囲網をじわじわと狭めていた。誰もが瞳に不気味な炎を揺らめかせている。
『死んでもここを通すな。でも絶対に死ぬなよ。死んだら俺がもう1回殺すからな』
めちゃくちゃなことを言う。力矢さんの乱暴だが熱い鼓舞の言葉に俺たちは思わず笑みを浮かべた。
萎れていた気持ちを奮い立たせる。
みさ、無事でいろよ。
心の中で呟いて、俺はライフルの引き金を引いた。