第四章
夢小説設定
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「ダウンタウンに戻るの?」
私の地下室で、いつもの椅子に座った慎が言った。今日のお供はルービックキューブらしい。
解けないくせに、心の中で思いながら私は荷物や機材を鞄に放り込んでいく。
「うん。ちょっと本社で詳しく調べたくて。HIROに聞きたいこともあったし。明後日には戻るから」
「調べるって、昨日倉庫で見たっていう子供?」
「そう。どうにも引っかかるんだよね」
慎はルービックキューブを無作為にいじくりまわしながら荷物をまとめる私の挙動を眺めていた。
「よく樹さんが許したね。みさと一瞬でも離れるのが嫌だって感じなのに」
「だから3日で帰ってくるって約束させられた」
「なるほど」
樹は私が妹だと分かってからそれこそ目に入れても痛くないというほどに可愛がっている。家族を失い孤独に生きてきたことの反動なのだろうが四六時中一緒にいたがるし仕事で離れている時も鬼のように連絡が来る。この前なんてバチバチの乱闘中に電話を寄越してくるものだから思わず「仕事に集中しろ!」と怒鳴ってしまった。不真面目で有名な私に怒られるのだから相当だ。反省してほしい。
しかしそんな私の横で不安げに眉根を寄せている慎。私は顔をあげてニヤつく。
「3日だけだって。そんなに私と離れたくないの?」
「出た。無敵ポジティブ」
「私のこと大好きなくせにー」
「そう思ってんなら付き合ってよ」
「やだ。恋人とかめんどくさい」
私は慎の手からルービックキューブを取りあげ、ニヤリと笑った。ろくに手元も見ずにカシャカシャと組み替えていく。
ものの数秒で6面揃ったルービックキューブを受け取った慎は、不満げにそれを手の中で弄んだ。
「本社まで送っていこうか?見回りはしばらく後だし」
「ううん、大丈夫。アッシー君呼んでるから」
「それ死語だよ。ちなみに誰なの」
「敬浩」
「お前な…大先輩だろ」
慎が呆れ顔でため息をつく。
そして私の手を掴み引き寄せた。
慎の男らしく引き締まった胸板にとん、とぶつかる。
「…充電」
「はいはい」
私ももう慎のスキンシップには慣れてしまった。その腕の中で大人しく充電される。
とくん、とくん
慎の鼓動に耳を澄ませていると不思議と安心する。ふいにキスがしたいという衝動にかられ、私は両手を伸ばして慎の顔を挟み込んだ。
踵を浮かす。
瞼を閉じる。
ちゅ、とリップ音が響いた。
再び目を開けると、目の前に慎の呆けた顔があって笑ってしまう。
「ふふ、変な顔」
慎の頬がじわじわと赤く染まっていく。
「みさからキスしてくれることなんて全然なかったのに」
「気が向いただけ。これが最後かもよ?」
私はするりと慎の腕から抜け出すと、鞄を持ち直して歩き出した。
「あっ、ちょっと待って」
「待たない。敬浩もうすぐ来ちゃうもん」
私はくすくす笑いながら廊下を駆けていく。
自分も頬が熱いのには気づかないふりをして。
私の地下室で、いつもの椅子に座った慎が言った。今日のお供はルービックキューブらしい。
解けないくせに、心の中で思いながら私は荷物や機材を鞄に放り込んでいく。
「うん。ちょっと本社で詳しく調べたくて。HIROに聞きたいこともあったし。明後日には戻るから」
「調べるって、昨日倉庫で見たっていう子供?」
「そう。どうにも引っかかるんだよね」
慎はルービックキューブを無作為にいじくりまわしながら荷物をまとめる私の挙動を眺めていた。
「よく樹さんが許したね。みさと一瞬でも離れるのが嫌だって感じなのに」
「だから3日で帰ってくるって約束させられた」
「なるほど」
樹は私が妹だと分かってからそれこそ目に入れても痛くないというほどに可愛がっている。家族を失い孤独に生きてきたことの反動なのだろうが四六時中一緒にいたがるし仕事で離れている時も鬼のように連絡が来る。この前なんてバチバチの乱闘中に電話を寄越してくるものだから思わず「仕事に集中しろ!」と怒鳴ってしまった。不真面目で有名な私に怒られるのだから相当だ。反省してほしい。
しかしそんな私の横で不安げに眉根を寄せている慎。私は顔をあげてニヤつく。
「3日だけだって。そんなに私と離れたくないの?」
「出た。無敵ポジティブ」
「私のこと大好きなくせにー」
「そう思ってんなら付き合ってよ」
「やだ。恋人とかめんどくさい」
私は慎の手からルービックキューブを取りあげ、ニヤリと笑った。ろくに手元も見ずにカシャカシャと組み替えていく。
ものの数秒で6面揃ったルービックキューブを受け取った慎は、不満げにそれを手の中で弄んだ。
「本社まで送っていこうか?見回りはしばらく後だし」
「ううん、大丈夫。アッシー君呼んでるから」
「それ死語だよ。ちなみに誰なの」
「敬浩」
「お前な…大先輩だろ」
慎が呆れ顔でため息をつく。
そして私の手を掴み引き寄せた。
慎の男らしく引き締まった胸板にとん、とぶつかる。
「…充電」
「はいはい」
私ももう慎のスキンシップには慣れてしまった。その腕の中で大人しく充電される。
とくん、とくん
慎の鼓動に耳を澄ませていると不思議と安心する。ふいにキスがしたいという衝動にかられ、私は両手を伸ばして慎の顔を挟み込んだ。
踵を浮かす。
瞼を閉じる。
ちゅ、とリップ音が響いた。
再び目を開けると、目の前に慎の呆けた顔があって笑ってしまう。
「ふふ、変な顔」
慎の頬がじわじわと赤く染まっていく。
「みさからキスしてくれることなんて全然なかったのに」
「気が向いただけ。これが最後かもよ?」
私はするりと慎の腕から抜け出すと、鞄を持ち直して歩き出した。
「あっ、ちょっと待って」
「待たない。敬浩もうすぐ来ちゃうもん」
私はくすくす笑いながら廊下を駆けていく。
自分も頬が熱いのには気づかないふりをして。