第四章
夢小説設定
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「…やっぱここが本丸ってわけじゃないか」
この前の車で見た記憶を辿って到着した場所はどう見てもただの倉庫で、直接的な手がかりは無さそうだった。
あたりを調べていた翔平と拓磨、陣、陸も何も見つけられず悔しそうに顔を歪める。
「みさ、どうや。何か記憶は残ってへんか」
「うーん…」
能力を使ってぐるりと空っぽの倉庫を見回してみるが手がかりとなりそうなものは何も見えなかった。
「無いね。残念ながら」
「また最初に逆戻りですね…」
拓磨が肩を落とす。私はそんな拓磨の大きな背中をばしんと叩いた。
「こら、落ち込まない。少なくともあの女の人は何者かから情報を得ていた。それが分かっただけでも進歩だよ」
「でも、肝心のその何者かっていうのが分かんねぇじゃん。みさの昔のこととか、いっちゃんの親父のこととか知ってるってことは…どういうことっすか?」
「え?いや、分からへん」
翔平に突然話を振られ陣が首をぶんぶん横に振った。
私は口元に拳を当てて小さく唸る。
「そもそもそんな人いないはずなんだけどな…」
「え?」
「ドクターのことはともかく、私の存在はアレス…あ、私が昔いたマフィアの名前ね、そのアレスファミリーの中でもごく一部の幹部しか知らないことだったの。でも10年前の大きな抗争で彼らは全員死んだ。つまり私の存在とドクターの両方を知っている人間はもうこの世にはいないはずなんだよ」
すると陸が「あ!」と人差し指を立てた。
「幽霊と話せる能力者が敵の組織にいるとか。その人がそのアレスの幹部に色々聞いたんだよ」
「もしそうだとして、私とドクターのことを聞き出して何になるの?」
「あ…そうか」
だだっ広い倉庫の中をぐるぐる歩き回りながら、私は思考の海に沈んでいく。
命が還るという彼らの信条。知るはずのない情報。
何だろう、何かが引っかかる。
私はもう一度能力を使って倉庫の記憶に目を凝らした。
「…え?」
数年前まで時間を遡ったところで、私は『彼』に気がついた。
中性的な顔立ちの、10歳前後の少年。黒髪に黒い瞳をしている。
彼は夜の倉庫にひとりで現れた。
あたりをぐるりと見渡して、首を傾げる。
そのまま倉庫を出ようとして、ふいにこちらを振り返った。
目が合った、そう思ったらニヤリと笑う。
ぞくりと寒気がした。
(私を見た…?)
まさか、ありえない。
でも、あの少年の笑顔が忘れられなかった。
全てを見透かすような黒い瞳。
そうだ、私たちに謎だけを残して死んだ彼女も同じ目をしていた。
ブラックホール。
「っ、ねぇちょっとあれ見て」
私は4人を呼び寄せると、少年の映像を可視化した。
「なんやあいつ…こっち見た?たまたまか?」
「夜中にこんな所で、しかもひとりで何してるんだろう」
陣と陸が眉間に皺を寄せる。
「何か俺、あいつ嫌い」
超主観的なコメントを述べたのは翔平。
「これ、いつの記憶?」
「ええと…1年と14日前だねたっくん」
「一年前…?例のカルト集団と関係あるかないか、微妙なラインだな」
私はこちらを見て笑う少年の顔をじっと見つめた。
見ず知らずの他人だ。
でも、何だろう。
纏う空気が、どこか『あの人』に似ている気がする。
「…ちょっと調べる必要がありそうだね」
「せやな。今はとにかく怪しいと思ったものは片っ端から調べるべきや」
「じゃあとりあえず、アジトに戻ろうか」
「腹減ったー」
「もう昼飯の時間ですね」
みんなそんなことを言いながら行きにも乗ってきた車に乗り込む。
オープンカーの後部座席で、私は遠ざかる倉庫を振り返った。
あの少年。
『あの人』。
「…まさかね」
この前の車で見た記憶を辿って到着した場所はどう見てもただの倉庫で、直接的な手がかりは無さそうだった。
あたりを調べていた翔平と拓磨、陣、陸も何も見つけられず悔しそうに顔を歪める。
「みさ、どうや。何か記憶は残ってへんか」
「うーん…」
能力を使ってぐるりと空っぽの倉庫を見回してみるが手がかりとなりそうなものは何も見えなかった。
「無いね。残念ながら」
「また最初に逆戻りですね…」
拓磨が肩を落とす。私はそんな拓磨の大きな背中をばしんと叩いた。
「こら、落ち込まない。少なくともあの女の人は何者かから情報を得ていた。それが分かっただけでも進歩だよ」
「でも、肝心のその何者かっていうのが分かんねぇじゃん。みさの昔のこととか、いっちゃんの親父のこととか知ってるってことは…どういうことっすか?」
「え?いや、分からへん」
翔平に突然話を振られ陣が首をぶんぶん横に振った。
私は口元に拳を当てて小さく唸る。
「そもそもそんな人いないはずなんだけどな…」
「え?」
「ドクターのことはともかく、私の存在はアレス…あ、私が昔いたマフィアの名前ね、そのアレスファミリーの中でもごく一部の幹部しか知らないことだったの。でも10年前の大きな抗争で彼らは全員死んだ。つまり私の存在とドクターの両方を知っている人間はもうこの世にはいないはずなんだよ」
すると陸が「あ!」と人差し指を立てた。
「幽霊と話せる能力者が敵の組織にいるとか。その人がそのアレスの幹部に色々聞いたんだよ」
「もしそうだとして、私とドクターのことを聞き出して何になるの?」
「あ…そうか」
だだっ広い倉庫の中をぐるぐる歩き回りながら、私は思考の海に沈んでいく。
命が還るという彼らの信条。知るはずのない情報。
何だろう、何かが引っかかる。
私はもう一度能力を使って倉庫の記憶に目を凝らした。
「…え?」
数年前まで時間を遡ったところで、私は『彼』に気がついた。
中性的な顔立ちの、10歳前後の少年。黒髪に黒い瞳をしている。
彼は夜の倉庫にひとりで現れた。
あたりをぐるりと見渡して、首を傾げる。
そのまま倉庫を出ようとして、ふいにこちらを振り返った。
目が合った、そう思ったらニヤリと笑う。
ぞくりと寒気がした。
(私を見た…?)
まさか、ありえない。
でも、あの少年の笑顔が忘れられなかった。
全てを見透かすような黒い瞳。
そうだ、私たちに謎だけを残して死んだ彼女も同じ目をしていた。
ブラックホール。
「っ、ねぇちょっとあれ見て」
私は4人を呼び寄せると、少年の映像を可視化した。
「なんやあいつ…こっち見た?たまたまか?」
「夜中にこんな所で、しかもひとりで何してるんだろう」
陣と陸が眉間に皺を寄せる。
「何か俺、あいつ嫌い」
超主観的なコメントを述べたのは翔平。
「これ、いつの記憶?」
「ええと…1年と14日前だねたっくん」
「一年前…?例のカルト集団と関係あるかないか、微妙なラインだな」
私はこちらを見て笑う少年の顔をじっと見つめた。
見ず知らずの他人だ。
でも、何だろう。
纏う空気が、どこか『あの人』に似ている気がする。
「…ちょっと調べる必要がありそうだね」
「せやな。今はとにかく怪しいと思ったものは片っ端から調べるべきや」
「じゃあとりあえず、アジトに戻ろうか」
「腹減ったー」
「もう昼飯の時間ですね」
みんなそんなことを言いながら行きにも乗ってきた車に乗り込む。
オープンカーの後部座席で、私は遠ざかる倉庫を振り返った。
あの少年。
『あの人』。
「…まさかね」