第三章
夢小説設定
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「うかうかしてるから取られんねん。無理やりにでも自分のものにしないと女のコなんて逃げてってまうで。特にみさなんてこの世の男全てがライバルみたいなものなんやから」
見回りの最中。
助手席で壱馬さんが車窓の外に視線を固定したままニヤニヤ笑った。
無理やり自分のモノにしようとしてならなかった俺って何なんだろう。
自己嫌悪スパイラルに陥りながら俺はハンドルを切る。
「でもあいつ、恋人は作らない主義だって言ってました」
「相手は百戦錬磨の樹やで?そういや樹この前飲みに行った時に『みさと一緒にいると謎の安心感を覚える』て言ってたな」
何だそれ。
でも確かに最初の任務でみさが情報を拾ってきてくれてみんなで酒盛りをしていた夜、樹さんは腰に手を回したり、あーんをしたり、いつもと違う表情で笑っていたりした。
酔ったみさにキスもされてた気がする。
たぶんあの頃から狙ってたんだ。
ていうかホストクラブでは壱馬さんや北人さんに並ぶ人気を誇る樹さんがあんないい女に手を出さない訳が無い。こうなってくると誰がライバルか分からなくて疑心暗鬼に陥りそうだった。
この世の男全てがライバル。言い得て妙だ。
「…ま、樹のこともみさのことも責められへんな」
「はい」
どうして昨日、2人がキスしているところに通りかかってしまったのだろう。
どうして今朝ふたりが同じバイクに乗ってアジトに出勤してくるところに遭遇してしまったのだろう。
この世の終わりかと思うくらい気まずかった。
「ま、可愛い弟に俺からアドバイスしたるわ」
サングラスを鼻までずらしてこっちを見ると、壱馬さんは楽しげに右の口の端を吊り上げた。
「好きな女にはな、押して押して押しまくるんや。ちょっと強引なくらいが丁度いい」
「それが効くのは壱馬さんだからですよ」
「THE RAMPAGEの2大プリンスのひとりが何言ってんねん。大体いま1番みさと距離が近いの慎なんやからもっと自信持て」
それだけ言ってふい、と窓の外に目を向けた壱馬さんが突然身体を強ばらせた。
「っ慎、車止めろ」
「え、あ、はい」
路肩に駐車し、俺は壱馬さんの見る方に視線を送る。
道の反対側には一台のワンボックスカーが停まっていた。運転席と助手席に1人ずつ、それから後部座席の曇ガラスの奥にいくつかの人影がちらついている。
怪しい、直感でそう思った。
能力を使って、車の内部を透視する。
俺は思わず息を呑んだ。
ワンボックスカーの中には計8人気の男女。それぞれが殺傷性の高い銃火器を手に今にも外に飛び出そうとしている。
「奴らです」
「やっぱりな」
俺たちは素早く武器を準備しながら並行してアジトへ連絡を取った。
「こちら慎。センターストリートにて目標組織のメンバーと思われる人物を発見。計8人、黒いワンボックスカーで銃火器を装備している模様。住民の避難を最優先に交戦します」
『おっやっと来たか。待ちくたびれたよ~…これより陣を中継としたテレパス交信に切り替えまーす』
この声はみさ。相変わらず緊張感がないと思っていたら、すぐに耳元で力矢さんの声がした。
『こちら力矢。壱馬、慎、すぐに応援を向かわせる。いのち大事にな』
「「了解」」
壱馬さんはもう殺る気満々といった感じでサングラスの奥の目をギラつかせている。二人っきりで戦うというのは久々だった。
「スラム街で暴れてた頃に戻ったみたいやな」
「っすね」
「行くか兄弟」
「壱馬さんの背中は俺が守りますんで」
「頼もしいな」
俺はアクセルを思い切り踏み込んだ。ハンドルを切り、斜め後ろからワンボックスカーに体当たりする。
砕け散ったフロントガラスの破片が雨のように降り注ぐのを腕で防ぐ。
ワンボックスは突然の体当たりを防ぐ術もなく電柱に衝突した。
突然の出来事に人々は蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。LDHの縄張りで生きる人々は外で辛く苦しい思いをしてきた者ばかりなため、こういう危険を察知し逃げる能力は高い。
俺は静まり返った車の中に目を凝らした。
まだ生きている。
案の定ひしゃげたドアを蹴破って、カルト信者達が雪崩るように道路に飛び出してきた。
「チッ、全員無事かよ」
壱馬さんが割れたフロントガラスから飛び出していった。俺も外に出ると近くにあった背の低い街路樹に身を隠し、そこから銃口だけを突き出す。
逃げ惑う人に向かって発砲しようとしていた男が脇腹を撃ち抜かれて死んだ。
「まずひとり」
炎が物凄い速さで敵のうちのひとりに向かって進んでいく。がばりと大きく口を開いた蛇は、炎の牙で人ひとりを丸呑みにしてしまった。
生きながら炎に焼かれる人間の断末魔が響く。
壱馬さんはふっと口から炎を吐くと、低い声で笑った。
「THE RAMPAGE の縄張りで暴れようとは、いい度胸やなお前ら」
見回りの最中。
助手席で壱馬さんが車窓の外に視線を固定したままニヤニヤ笑った。
無理やり自分のモノにしようとしてならなかった俺って何なんだろう。
自己嫌悪スパイラルに陥りながら俺はハンドルを切る。
「でもあいつ、恋人は作らない主義だって言ってました」
「相手は百戦錬磨の樹やで?そういや樹この前飲みに行った時に『みさと一緒にいると謎の安心感を覚える』て言ってたな」
何だそれ。
でも確かに最初の任務でみさが情報を拾ってきてくれてみんなで酒盛りをしていた夜、樹さんは腰に手を回したり、あーんをしたり、いつもと違う表情で笑っていたりした。
酔ったみさにキスもされてた気がする。
たぶんあの頃から狙ってたんだ。
ていうかホストクラブでは壱馬さんや北人さんに並ぶ人気を誇る樹さんがあんないい女に手を出さない訳が無い。こうなってくると誰がライバルか分からなくて疑心暗鬼に陥りそうだった。
この世の男全てがライバル。言い得て妙だ。
「…ま、樹のこともみさのことも責められへんな」
「はい」
どうして昨日、2人がキスしているところに通りかかってしまったのだろう。
どうして今朝ふたりが同じバイクに乗ってアジトに出勤してくるところに遭遇してしまったのだろう。
この世の終わりかと思うくらい気まずかった。
「ま、可愛い弟に俺からアドバイスしたるわ」
サングラスを鼻までずらしてこっちを見ると、壱馬さんは楽しげに右の口の端を吊り上げた。
「好きな女にはな、押して押して押しまくるんや。ちょっと強引なくらいが丁度いい」
「それが効くのは壱馬さんだからですよ」
「THE RAMPAGEの2大プリンスのひとりが何言ってんねん。大体いま1番みさと距離が近いの慎なんやからもっと自信持て」
それだけ言ってふい、と窓の外に目を向けた壱馬さんが突然身体を強ばらせた。
「っ慎、車止めろ」
「え、あ、はい」
路肩に駐車し、俺は壱馬さんの見る方に視線を送る。
道の反対側には一台のワンボックスカーが停まっていた。運転席と助手席に1人ずつ、それから後部座席の曇ガラスの奥にいくつかの人影がちらついている。
怪しい、直感でそう思った。
能力を使って、車の内部を透視する。
俺は思わず息を呑んだ。
ワンボックスカーの中には計8人気の男女。それぞれが殺傷性の高い銃火器を手に今にも外に飛び出そうとしている。
「奴らです」
「やっぱりな」
俺たちは素早く武器を準備しながら並行してアジトへ連絡を取った。
「こちら慎。センターストリートにて目標組織のメンバーと思われる人物を発見。計8人、黒いワンボックスカーで銃火器を装備している模様。住民の避難を最優先に交戦します」
『おっやっと来たか。待ちくたびれたよ~…これより陣を中継としたテレパス交信に切り替えまーす』
この声はみさ。相変わらず緊張感がないと思っていたら、すぐに耳元で力矢さんの声がした。
『こちら力矢。壱馬、慎、すぐに応援を向かわせる。いのち大事にな』
「「了解」」
壱馬さんはもう殺る気満々といった感じでサングラスの奥の目をギラつかせている。二人っきりで戦うというのは久々だった。
「スラム街で暴れてた頃に戻ったみたいやな」
「っすね」
「行くか兄弟」
「壱馬さんの背中は俺が守りますんで」
「頼もしいな」
俺はアクセルを思い切り踏み込んだ。ハンドルを切り、斜め後ろからワンボックスカーに体当たりする。
砕け散ったフロントガラスの破片が雨のように降り注ぐのを腕で防ぐ。
ワンボックスは突然の体当たりを防ぐ術もなく電柱に衝突した。
突然の出来事に人々は蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。LDHの縄張りで生きる人々は外で辛く苦しい思いをしてきた者ばかりなため、こういう危険を察知し逃げる能力は高い。
俺は静まり返った車の中に目を凝らした。
まだ生きている。
案の定ひしゃげたドアを蹴破って、カルト信者達が雪崩るように道路に飛び出してきた。
「チッ、全員無事かよ」
壱馬さんが割れたフロントガラスから飛び出していった。俺も外に出ると近くにあった背の低い街路樹に身を隠し、そこから銃口だけを突き出す。
逃げ惑う人に向かって発砲しようとしていた男が脇腹を撃ち抜かれて死んだ。
「まずひとり」
炎が物凄い速さで敵のうちのひとりに向かって進んでいく。がばりと大きく口を開いた蛇は、炎の牙で人ひとりを丸呑みにしてしまった。
生きながら炎に焼かれる人間の断末魔が響く。
壱馬さんはふっと口から炎を吐くと、低い声で笑った。
「