第三章
夢小説設定
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「にゃー」
「へ?」
CLUB THE RAMPAGEの地下室でパソコンとにらめっこしていたら突然猫の鳴き声がして、私は驚いて振り返った。
子猫だ。可愛らしい首輪をつけた白と茶色のマンチカン。
「何で猫…?」
猫はぺたぺたと部屋に入ってくると、私の足元で立ち止まりこっちを見上げる。
一体どこから紛れ込んできたのだろうか。
まさか海青みたいに動物に化けるタイプの能力者とか…?いやでも目が光ってないから普通の猫か。
何にせよ動物は苦手だ。
足元に擦り寄ってくる子猫を恐る恐る抱き上げてみる。
「にゃー」
「えぇ…どっから入ってきたの君……」
あ、待てよ。そういえばTHE RAMPAGEには自他ともに認める大の猫好きがいたな。
「さてはいっちゃんの飼い猫だな?」
噂をすれば何とやら。廊下を走る足音が聞こえてきたと思ったら、樹がひょっこり顔を出した。
「あ、じゅじゅこんなところにいた」
「にゃー」
「やっぱりいっちゃんの猫か」
はい、と抱いていた猫を突き出すと樹は壊れ物を扱うかのように優しく仔猫を受け取った。いつもはクールな樹が珍しく頬を緩めてデレデレしてる。
「ごめん、今朝家出る時にじゅじゅ体調悪そうだったから心配で連れてきてたんだ。ケージに入れてたんだけどいつの間にかいなくなってて」
「体調悪いとか、分かるもんなの?」
「分かるよ。家族だから」
「ふーん」
家族、か。
マトモな家族すら持たない私からしたらペットを家族だと言い切る人の心情なんて全く理解できないけど、そんなこと口に出したら樹にくびり殺されそうなので言わないでおく。
「もう元気そう。みんなに可愛がってもらったかな」
「良かったじゃん」
「にゃー」
樹の腕の中にいた猫が私の方を見てひと鳴き。
「ん、何?みさに撫でてもらいたいの?」
「ええ?いいよ」
「でもじゅじゅ触ってって言ってるから。ほら」
何だこいつ猫が絡むとすごいぐいぐい来るな。抗議の声をあげる前に樹は椅子に座った私の膝に猫を置いた。
私の膝の上に後ろ足で立って肩に前足をかけ、至近距離でじいっと見つめてくるまん丸な目。
眩しい。純真無垢なその瞳が眩しい。
「にゃ」
そっと小さな頭に触れる。
柔らかい毛が気持ちよかった。そのまま背中も毛並みに沿って撫でてやると、じゅじゅという名前の仔猫は気持ちよさそうにぐるぐる喉を鳴らす。
「はは、みさのこと気に入ったみたい」
「気に入られても困る」
しばらく撫でられて満足したらしいじゅじゅは、私の前にしゃがみこんで様子を見守っていた樹の肩にぴょんと飛び乗った。
「ふふ、」
「ほんと猫好きなんだね。でれっでれじゃん」
「…小さい頃から、猫だけが友達だったんだ。学校にも行ってなかったから」
樹は少し寂しそうに笑った。
あぁ、そうか。
THE RAMPAGEメンバーの過去についてはよく知らないし知らなくていいと思っているが、樹の過去だけは違う。
よく知っている。
私の出生とも関わってくる話だから。
「みさって猫みたいだよね」
猫を抱きながら、樹は唐突に言い出した。
「そう?初めて言われた」
「気まぐれで、自由なところとか。目も猫っぽい。色気があるし。あと何か一緒にいて落ち着く」
「何それ」
変な口説き文句みたいで笑ってしまった。つられて樹も微笑む。
「慎と仲がいいけど付き合ってるの?」
「え?いや別に」
「能力の訓練とかしてるじゃん」
「まぁそれは…THE RAMPAGE全体の戦闘力にも関わってくる話だし。ていうか私恋人とか面倒だから作らない主義」
何か今日の樹は話がぽんぽん飛ぶな。脈略がないから一瞬戸惑ってしまう。
「そっか。よかった」
よかった?
不思議に思って私の前にしゃがむ樹を見る。
樹が私の座る椅子の肘掛に手をついて、膝立ちの姿勢のままぐっと身を乗り出す。
にゃあ、鳴き声をあげた仔猫がぴょんと樹の腕から飛び降りた。
「じゃあ俺とこういうことしても、いいってことだよね」
ふわりと柔らかい感触があった。
あぁ、私今、
樹にキスされてる。
下からやわく食むようなキスはまさにとろけるほど甘やかで、頭の中にあった慎の顔が霞んでいく。
…あれ、ていうか何で私今まこっちゃんのこと思い出してたんだろう。
ま、いっか。気持ちよければ何だって。
親指の腹でうなじを撫でられ、背筋にぞくりと震えが走る。
1分後、ようやく樹は唇を離した。
「っは…モテすぎるのも困りものだね」
「俺、何番目の男?」
「もう数えてないから分かんない。ていうか大体キスなんて今どき友達どうしでもするでしょ」
「キスから先に行けばいいんだろ」
「いっちゃんって結構肉食だよね。この前だってアフターで打ってたらしいじゃん」
「それ、言ったの誰」
「しょへ。おっきい声で言ってたの聞こえてきた」
「翔平……いや、あれは気が向いたから」
「うーわ静寂の貴公子とか言っといて実は遊び人かよいっちゃん」
「いつもじゃないよ。猫は気まぐれって言うだろ」
そばで大人しく毛繕いをしていたじゅじゅが、樹の言葉に相槌を打つように「にゃあ」と鳴いた。
「ほら。じゅじゅもそう言ってる」
「さすがに猫語は分かんないから」
「俺が教えてあげる」
あぁ、これはお客さんたちがこぞって樹に貢ぎたがるのも分かる気がする。手のひらの上で転がされてる感が女としてはたまらないんだろうな、何て考えながら、
でも、私は違う。
私は樹にひとつだけ、忠告を与えることにした。
「後悔しても知らないよ」
樹がこの言葉をどう受け止めたのかは分からないが、私を見上げて微笑む顔に迷いは感じられなかった。
「後悔なんて、するわけない」
「へ?」
CLUB THE RAMPAGEの地下室でパソコンとにらめっこしていたら突然猫の鳴き声がして、私は驚いて振り返った。
子猫だ。可愛らしい首輪をつけた白と茶色のマンチカン。
「何で猫…?」
猫はぺたぺたと部屋に入ってくると、私の足元で立ち止まりこっちを見上げる。
一体どこから紛れ込んできたのだろうか。
まさか海青みたいに動物に化けるタイプの能力者とか…?いやでも目が光ってないから普通の猫か。
何にせよ動物は苦手だ。
足元に擦り寄ってくる子猫を恐る恐る抱き上げてみる。
「にゃー」
「えぇ…どっから入ってきたの君……」
あ、待てよ。そういえばTHE RAMPAGEには自他ともに認める大の猫好きがいたな。
「さてはいっちゃんの飼い猫だな?」
噂をすれば何とやら。廊下を走る足音が聞こえてきたと思ったら、樹がひょっこり顔を出した。
「あ、じゅじゅこんなところにいた」
「にゃー」
「やっぱりいっちゃんの猫か」
はい、と抱いていた猫を突き出すと樹は壊れ物を扱うかのように優しく仔猫を受け取った。いつもはクールな樹が珍しく頬を緩めてデレデレしてる。
「ごめん、今朝家出る時にじゅじゅ体調悪そうだったから心配で連れてきてたんだ。ケージに入れてたんだけどいつの間にかいなくなってて」
「体調悪いとか、分かるもんなの?」
「分かるよ。家族だから」
「ふーん」
家族、か。
マトモな家族すら持たない私からしたらペットを家族だと言い切る人の心情なんて全く理解できないけど、そんなこと口に出したら樹にくびり殺されそうなので言わないでおく。
「もう元気そう。みんなに可愛がってもらったかな」
「良かったじゃん」
「にゃー」
樹の腕の中にいた猫が私の方を見てひと鳴き。
「ん、何?みさに撫でてもらいたいの?」
「ええ?いいよ」
「でもじゅじゅ触ってって言ってるから。ほら」
何だこいつ猫が絡むとすごいぐいぐい来るな。抗議の声をあげる前に樹は椅子に座った私の膝に猫を置いた。
私の膝の上に後ろ足で立って肩に前足をかけ、至近距離でじいっと見つめてくるまん丸な目。
眩しい。純真無垢なその瞳が眩しい。
「にゃ」
そっと小さな頭に触れる。
柔らかい毛が気持ちよかった。そのまま背中も毛並みに沿って撫でてやると、じゅじゅという名前の仔猫は気持ちよさそうにぐるぐる喉を鳴らす。
「はは、みさのこと気に入ったみたい」
「気に入られても困る」
しばらく撫でられて満足したらしいじゅじゅは、私の前にしゃがみこんで様子を見守っていた樹の肩にぴょんと飛び乗った。
「ふふ、」
「ほんと猫好きなんだね。でれっでれじゃん」
「…小さい頃から、猫だけが友達だったんだ。学校にも行ってなかったから」
樹は少し寂しそうに笑った。
あぁ、そうか。
THE RAMPAGEメンバーの過去についてはよく知らないし知らなくていいと思っているが、樹の過去だけは違う。
よく知っている。
私の出生とも関わってくる話だから。
「みさって猫みたいだよね」
猫を抱きながら、樹は唐突に言い出した。
「そう?初めて言われた」
「気まぐれで、自由なところとか。目も猫っぽい。色気があるし。あと何か一緒にいて落ち着く」
「何それ」
変な口説き文句みたいで笑ってしまった。つられて樹も微笑む。
「慎と仲がいいけど付き合ってるの?」
「え?いや別に」
「能力の訓練とかしてるじゃん」
「まぁそれは…THE RAMPAGE全体の戦闘力にも関わってくる話だし。ていうか私恋人とか面倒だから作らない主義」
何か今日の樹は話がぽんぽん飛ぶな。脈略がないから一瞬戸惑ってしまう。
「そっか。よかった」
よかった?
不思議に思って私の前にしゃがむ樹を見る。
樹が私の座る椅子の肘掛に手をついて、膝立ちの姿勢のままぐっと身を乗り出す。
にゃあ、鳴き声をあげた仔猫がぴょんと樹の腕から飛び降りた。
「じゃあ俺とこういうことしても、いいってことだよね」
ふわりと柔らかい感触があった。
あぁ、私今、
樹にキスされてる。
下からやわく食むようなキスはまさにとろけるほど甘やかで、頭の中にあった慎の顔が霞んでいく。
…あれ、ていうか何で私今まこっちゃんのこと思い出してたんだろう。
ま、いっか。気持ちよければ何だって。
親指の腹でうなじを撫でられ、背筋にぞくりと震えが走る。
1分後、ようやく樹は唇を離した。
「っは…モテすぎるのも困りものだね」
「俺、何番目の男?」
「もう数えてないから分かんない。ていうか大体キスなんて今どき友達どうしでもするでしょ」
「キスから先に行けばいいんだろ」
「いっちゃんって結構肉食だよね。この前だってアフターで打ってたらしいじゃん」
「それ、言ったの誰」
「しょへ。おっきい声で言ってたの聞こえてきた」
「翔平……いや、あれは気が向いたから」
「うーわ静寂の貴公子とか言っといて実は遊び人かよいっちゃん」
「いつもじゃないよ。猫は気まぐれって言うだろ」
そばで大人しく毛繕いをしていたじゅじゅが、樹の言葉に相槌を打つように「にゃあ」と鳴いた。
「ほら。じゅじゅもそう言ってる」
「さすがに猫語は分かんないから」
「俺が教えてあげる」
あぁ、これはお客さんたちがこぞって樹に貢ぎたがるのも分かる気がする。手のひらの上で転がされてる感が女としてはたまらないんだろうな、何て考えながら、
でも、私は違う。
私は樹にひとつだけ、忠告を与えることにした。
「後悔しても知らないよ」
樹がこの言葉をどう受け止めたのかは分からないが、私を見上げて微笑む顔に迷いは感じられなかった。
「後悔なんて、するわけない」