第三章
夢小説設定
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「呼吸に集中して。一定のリズムを作るの」
暗闇にみさの声が柔らかく響く。
吸って、吐いて。吸って、吐いて。
「目を開けて。呼吸はそのまま。自分が何を『見たい』のか、明確な意思を持つこと」
目を開く。暗い部屋の床に置いてあるりんごをじっと見つめる。
俺が見たいもの。
それは未来。
このりんごの未来。
ふわりと、視界の奥の方にぼやけた映像が浮かび上がった。
何だ…?
でももっとはっきり見たくて目を凝らした瞬間に呼吸法を忘れた。
「あ、」
ぼやけていた映像が一瞬で掻き消える。
ぱちりと電気がついて、いつものみさの地下室が明るく照らされた。
「もう少しなんだけどな~」
「あー、くそ」
りんごを拾い上げて、みさはしゃり、とそれを齧った。
「未来を見る、か…自分の能力にこんなこと言うのも何だけど、ほんとにそんなことできるのか?」
「やるしかないでしょ。その目が時間も超えた視野を持つようになれば、きっとまこっちゃんに敵う奴は誰もいなくなる。最強だよ」
りんごを咀嚼しながらみさが事も無げに言い放った。
みさの指導のもとで能力『広目天』の開発に取り組み始めたのが1週間前。
1日2時間、こうして未来や過去を見る訓練をしているがなかなか上手くいかない。
「今日はここまでだね。まだ明日、空いた時間にここに来て」
「…分かった」
俺はみさの手首を掴んで反対側からりんごに齧り付いた。
甘く爽やかな果汁が疲労した身体に染み込んでいく。
「うま」
「答えは『私とまこっちゃんに食べられる』だったね」
「…あ、確かに」
「はい、あげる。これ食べて今日の反省」
みさから押し付けられたりんごを手に地下室を後にした俺は廊下で見回りから帰ってきた樹さんに遭遇した。
「あ、樹さんお疲れ様です」
「おつかれ慎。今日も訓練?」
「はい。でも全然上手くいかなくて」
「そっか」
樹さんの瞳が一瞬翳った。
…何だ?
「あんまり無理しないようにな」
「あ、はい、あざす」
その昏いものの意味を知る前に樹さんはふ、と笑って俺の肩を軽く叩くと歩いていってしまった。
今のは何だったんだろう。
不思議に思ってその背中を見送る。
一瞬、さっき地下室で見たようなもやが樹さんにダブって見えた気がしたが目を凝らした時には消えてしまった。
「…?」
首を傾げてりんごをかじる。
甘い果汁が口の中いっぱいに広がった。
暗闇にみさの声が柔らかく響く。
吸って、吐いて。吸って、吐いて。
「目を開けて。呼吸はそのまま。自分が何を『見たい』のか、明確な意思を持つこと」
目を開く。暗い部屋の床に置いてあるりんごをじっと見つめる。
俺が見たいもの。
それは未来。
このりんごの未来。
ふわりと、視界の奥の方にぼやけた映像が浮かび上がった。
何だ…?
でももっとはっきり見たくて目を凝らした瞬間に呼吸法を忘れた。
「あ、」
ぼやけていた映像が一瞬で掻き消える。
ぱちりと電気がついて、いつものみさの地下室が明るく照らされた。
「もう少しなんだけどな~」
「あー、くそ」
りんごを拾い上げて、みさはしゃり、とそれを齧った。
「未来を見る、か…自分の能力にこんなこと言うのも何だけど、ほんとにそんなことできるのか?」
「やるしかないでしょ。その目が時間も超えた視野を持つようになれば、きっとまこっちゃんに敵う奴は誰もいなくなる。最強だよ」
りんごを咀嚼しながらみさが事も無げに言い放った。
みさの指導のもとで能力『広目天』の開発に取り組み始めたのが1週間前。
1日2時間、こうして未来や過去を見る訓練をしているがなかなか上手くいかない。
「今日はここまでだね。まだ明日、空いた時間にここに来て」
「…分かった」
俺はみさの手首を掴んで反対側からりんごに齧り付いた。
甘く爽やかな果汁が疲労した身体に染み込んでいく。
「うま」
「答えは『私とまこっちゃんに食べられる』だったね」
「…あ、確かに」
「はい、あげる。これ食べて今日の反省」
みさから押し付けられたりんごを手に地下室を後にした俺は廊下で見回りから帰ってきた樹さんに遭遇した。
「あ、樹さんお疲れ様です」
「おつかれ慎。今日も訓練?」
「はい。でも全然上手くいかなくて」
「そっか」
樹さんの瞳が一瞬翳った。
…何だ?
「あんまり無理しないようにな」
「あ、はい、あざす」
その昏いものの意味を知る前に樹さんはふ、と笑って俺の肩を軽く叩くと歩いていってしまった。
今のは何だったんだろう。
不思議に思ってその背中を見送る。
一瞬、さっき地下室で見たようなもやが樹さんにダブって見えた気がしたが目を凝らした時には消えてしまった。
「…?」
首を傾げてりんごをかじる。
甘い果汁が口の中いっぱいに広がった。