第三章
夢小説設定
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「なおこちゃんもっと飲みなよ。はいこれ」
「はい!なーんで持ってんの?なーんで持ってんの?飲み足りないから持ってんの!はーい飲んで飲んで飲んで飲んでー!」
くそ、また俺か、と心の中で顔を顰めながら俺はシャンパンを飲み干した。
頭がふわふわする。
今日の客は何度目かの来店になるが、異常なまでに酒が強い上にキャストにも同じくらい飲ませてくる。この前はあの力矢さんが潰れかけていた。
酒には強い方だと思うけど、この手の鉄の肝臓を持ってるタイプに付き合いきれるほどじゃない。
「慎すごーい!もぉ~ほんとかっこいい~」
客が俺の腕にぎゅっと抱きつく。きつい香水の匂いが鼻について余計にくらくらした。
「私ぃ、慎みたいにかっこよくてオシャレでクールな男の人と付き合いたいんだよね~」
「俺みたいなのがタイプなの?」
「ていうか慎が好き~」
「ふふ、ありがと」
何とか返事をしているけど正直自分が何を言っているのかよく分からない。
普段なら誰かが気を利かせてヘルプに入ってくれるのだが、あいにく今日は忙しくて16人全員が客についてしまっている。俺ひとりで何とかしなければならない。
(吐きそう…)
そろそろ限界が近いが、客の前で潰れるなんて醜態を晒すのはまずい。
俺は正気を保つために手のひらに爪をぐっと食い込ませた。
「慎?だいじょうぶ?」
「だ、大丈夫。まだまだ余裕だから。次何飲む?」
「じゃあドンペリ」
…ん?
誰か別の人の声が聞こえた気がする。
水琴窟から響く澄んだ水の音のような、美しい声。
酔いすぎて幻聴まで聞こえるようになったか。
「…え、あなた誰なの?今慎がついてるのは私なんだけど?」
あぁ、幻覚まで見える。白金の巻き毛と青い瞳を持つ絶望的なまでに美しい女の幻覚が。
「誰って、客。まこっちゃんの太客でーす」
なんかやけにリアルな幻覚だな。酔った昂秀が能力を暴走させてるんじゃないかレベルでリアルだ。
だってほら、触れるし。冷たい髪の毛の手触りが心地よい。
この客みたいな人工的な甘ったるい匂いじゃなくて、森林の深い香りがふんわり微かに香ってくる。
「ちょっと、慎も何か言ってよ!よく分かんないけどこの人つまみ出して!」
「大丈夫、幻覚だから」
「幻覚じゃないわよ!」
「…え?」
みさが俺の顔を覗き込んだ。
「まこっちゃん酔いすぎだね~。まぁ確かに私の美しさは現実離れしてるかもしれないけどさ」
「…ほんとにみさ?」
「嬉しいことにね」
俺は呆気にとられてみさの髪を撫で、頬に触れ、その唇に指を這わせる。
柔らかい。
ダウンタウンで夜景を見た日から何ヶ月経った?そうだ、確か3ヶ月。業務連絡以外はLINEやメールを送ってもめったに返ってこないし、電話にも出てくれないから生きているのかもよく分からなかった。
「…確かめさせて」
ここが店内だということも、客がいることも完全に頭の中から消え去った。
みさの艶やかな唇を奪う。
食んで、吸って、押し付けて。
甘やかなキスを堪能して、顔を離した頃には俺の顔はアルコールとは別の熱で火照っていた。
「、は…連絡くらい寄越せバカ」
「バカはそっちでしょ」
「何が」
みさが黙って指さした方に目を向ける。
そこには般若のような顔で俺を見る客がいた。
…あ、やばい。
そう思った瞬間、顔にグラスの水をばしゃりとかけられる。
「もう二度と来ないわ!!!」
店を出ていく客の背中を呆然と見送る。前髪から水がポタリと滴り落ちた。
「ホスト失格だね~、あ、やましょ久しぶり」
「うわっ!?何でみさがいんだよ!ていうかまこっちゃんびしょびしょじゃんどうした!?」
「はい!なーんで持ってんの?なーんで持ってんの?飲み足りないから持ってんの!はーい飲んで飲んで飲んで飲んでー!」
くそ、また俺か、と心の中で顔を顰めながら俺はシャンパンを飲み干した。
頭がふわふわする。
今日の客は何度目かの来店になるが、異常なまでに酒が強い上にキャストにも同じくらい飲ませてくる。この前はあの力矢さんが潰れかけていた。
酒には強い方だと思うけど、この手の鉄の肝臓を持ってるタイプに付き合いきれるほどじゃない。
「慎すごーい!もぉ~ほんとかっこいい~」
客が俺の腕にぎゅっと抱きつく。きつい香水の匂いが鼻について余計にくらくらした。
「私ぃ、慎みたいにかっこよくてオシャレでクールな男の人と付き合いたいんだよね~」
「俺みたいなのがタイプなの?」
「ていうか慎が好き~」
「ふふ、ありがと」
何とか返事をしているけど正直自分が何を言っているのかよく分からない。
普段なら誰かが気を利かせてヘルプに入ってくれるのだが、あいにく今日は忙しくて16人全員が客についてしまっている。俺ひとりで何とかしなければならない。
(吐きそう…)
そろそろ限界が近いが、客の前で潰れるなんて醜態を晒すのはまずい。
俺は正気を保つために手のひらに爪をぐっと食い込ませた。
「慎?だいじょうぶ?」
「だ、大丈夫。まだまだ余裕だから。次何飲む?」
「じゃあドンペリ」
…ん?
誰か別の人の声が聞こえた気がする。
水琴窟から響く澄んだ水の音のような、美しい声。
酔いすぎて幻聴まで聞こえるようになったか。
「…え、あなた誰なの?今慎がついてるのは私なんだけど?」
あぁ、幻覚まで見える。白金の巻き毛と青い瞳を持つ絶望的なまでに美しい女の幻覚が。
「誰って、客。まこっちゃんの太客でーす」
なんかやけにリアルな幻覚だな。酔った昂秀が能力を暴走させてるんじゃないかレベルでリアルだ。
だってほら、触れるし。冷たい髪の毛の手触りが心地よい。
この客みたいな人工的な甘ったるい匂いじゃなくて、森林の深い香りがふんわり微かに香ってくる。
「ちょっと、慎も何か言ってよ!よく分かんないけどこの人つまみ出して!」
「大丈夫、幻覚だから」
「幻覚じゃないわよ!」
「…え?」
みさが俺の顔を覗き込んだ。
「まこっちゃん酔いすぎだね~。まぁ確かに私の美しさは現実離れしてるかもしれないけどさ」
「…ほんとにみさ?」
「嬉しいことにね」
俺は呆気にとられてみさの髪を撫で、頬に触れ、その唇に指を這わせる。
柔らかい。
ダウンタウンで夜景を見た日から何ヶ月経った?そうだ、確か3ヶ月。業務連絡以外はLINEやメールを送ってもめったに返ってこないし、電話にも出てくれないから生きているのかもよく分からなかった。
「…確かめさせて」
ここが店内だということも、客がいることも完全に頭の中から消え去った。
みさの艶やかな唇を奪う。
食んで、吸って、押し付けて。
甘やかなキスを堪能して、顔を離した頃には俺の顔はアルコールとは別の熱で火照っていた。
「、は…連絡くらい寄越せバカ」
「バカはそっちでしょ」
「何が」
みさが黙って指さした方に目を向ける。
そこには般若のような顔で俺を見る客がいた。
…あ、やばい。
そう思った瞬間、顔にグラスの水をばしゃりとかけられる。
「もう二度と来ないわ!!!」
店を出ていく客の背中を呆然と見送る。前髪から水がポタリと滴り落ちた。
「ホスト失格だね~、あ、やましょ久しぶり」
「うわっ!?何でみさがいんだよ!ていうかまこっちゃんびしょびしょじゃんどうした!?」