第二章
夢小説設定
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「おかえりみさ」
私は腕を組んで革張りのチェアに腰掛けるHIROにため息をぶつけた。
「相変わらず食えない笑顔だね」
「そんなことないよ」
「どうだか」
「THE RAMPAGEはどうだった?」
無事に貿易会社も叩き潰し任務を終えたのはつい先日のこと。私はそこでTHE RAMPAGEとは一旦別れ、今まで拠点としていたダウンタウンに戻ってきたのだ。
ダウンタウンを守るのはEXILE。LDHの本丸があるこの街は縄張りの最奥に位置している。
「それを調べるために私をウェスタンシティに送り込んだんでしょ」
「調べるんじゃない。俺は任務の合間に個々のスキルとかTHE RAMPAGE全体としての働きぶりとかを見てきてほしいって…」
私が黙って見つめていると、HIROは言葉を途中で切って苦笑いした。
「…いや、聞こうか」
私は手のひらサイズの投射機をHIROのデスクにコトンと置いた。スイッチを押すと力也の顔写真とプロフィールの詳細がホロとして浮かび上がる。
「まずエリオット・ロシャード・力矢。リーダーのひとりとして常に俯瞰からの指示役を担当してた。基本的には冷静だけど、たまに客観性にかけるフシがあるね。メンバーへの思入れが強すぎて…」
一緒に仕事をして感じた私の講評をつらつらと述べていく。
セカンドもジェネも、三代目と仕事をした時もそうだった。私をサポメンとして派遣する裏で、メンバーの仕事ぶりや戦い方、スキルなどをこっそりチェックさせるのだ。
悪趣味にも程があると思うのだが、直接手の届かない場所にいるチームの状態を私を通じて把握し、気にかけているHIROなりの配慮らしい。
大事な仲間に無茶な仕事を頼んで殺したくないんだ、すこし寂しげにそう笑っていたのを思い出す。
「…で、長谷川慎。スナイパーとしての腕は申し分ないね。能力もうまく活用してる。でも透視と望遠以外は使いこなせてないかな、過去や未来も見るみたいだけど突発的な発作みたいなものみたいらしいから、これを意図的に見れるようになればチーム全体もぐっと活動の質があがってくる。あとは自分の感情のコントロールもへたくそ。急にキスとか抱いてきたりとかする。私が可愛すぎるのが問題かもしれないけど」
「もうTHE RAMPAGEにも手を出したのか?」
「手を出してきたのはあっちだから」
「お前な…誰彼構わずそういうことしてたら病気になるぞ」
「そういうHIROだって私とシてたじゃん。パートナーできる前までは」
「…降参」
「よろしい」
HIROは軽く肩を竦めると、スクリーンに映った慎の顔を眺めながら自分の無精髭が生えた顎を撫でた。
「『広目天』…慎のトレーニングの内容を少し変えてみるか。あと慎が若干精神的に弱いのはな、たぶん慎の過去と絡んでる。知ってるか?」
「知らないし興味もない」
「何だ、調べてると思った」
別に調べようと思えばLDHのメンバー全員の来歴を隅から隅まで調べ尽くすことなど簡単にできる。
でも私がそれをやらないのは、労力の無駄だってだけじゃなくて。
「『今を生きろ、未来にある理想郷 のために』。いつも言ってるのはHIROでしょ」
HIROがちょっと驚いたような顔をして私を見た。
「なに」
「…いや」
しばらく何かを考えて、HIROはぼそりと呟いた。
「変わったな。みさ」
「え?」
「何か安心したわ」
「は?」
「お人形さんみたいな顔してた10年前とは別人だよ。あいつらと仕事させてよかった」
変わった?私が?
10年前といえば私がLDHに入った時。
どうだろう。確かに以前よりは周囲が騒がしくなったけど、私自身は変わったとは思っていない。
あの人の亡霊を心に住まわせて、五十嵐広行という別の男に転がされている。それだけだ。
私は10年前から、いや、生まれた瞬間から。
何も変わらない。
訳が分からずひとりで嬉しそうにしているHIROをただじっとり睨んでみるが、HIROはそれも気にせず私に穏やかに微笑みかけた。
「…まぁ、慎だけじゃない。THE RAMPAGEのやつらはそれぞれ心に何か暗いものを背負ってる。ゆっくり見守ってやってくれ」
「他人に干渉するとか、そういうめんどくさいことは私はやらないし向いてない。分かってんでしょ」
「俺は結構適任だと思うけど?ほら、2年前ジェネと組んでた時。あの時はみさのおかげで玲於が成長できただろ。それから三代目と初めて仕事した時は隆二を救ってくれた」
「それはたまたまなりゆきでそうなっただけ」
人間らしい心の機微とか、そういうのは私にはよく分からない。私はバカじゃないから(むしろ天才だから)そういうのが苦手な理由も分かる。
(私には感情が欠落している)
もちろん私だって喜ぶし甘いもの食べて幸せだと思う。でもなにかに怒ったり悲しんだり嫉妬したり、逆に涙が出るほど嬉しいと思ったり、そういうのはよく分からない。経験したことがない。
自分にないものを他人の心から見出すなんて無理な話だ。
それを分かっておきながら、この男は私にそういったことをやらせようとする。
ほんとに食えない。
「それで、あとのメンバーは?」
「あぁ、それから阿多龍太郎。龍ちゃんは…」
話を流された気がしなくもないが私はとりあえず本題に戻る。それぞれの講評を終えた私は投射機のスイッチを切った。
「ま、ざっとこんなもん」
「ありがとうみさ、参考にさせてもらうよ。今日はゆっくり休んでくれ。今まで使ってた地下室はそのままにしてあるから」
「別に疲れてないから仕事できるけど」
「ここんとこ働き詰めだろ?いいから休め」
有無を言わせぬ口調で言われたので、私は渋々ながらも大人しく従うことにした。
部屋を出ていこうとしたところで、HIROが私の名前を呼んだ。振り返る。
「綺麗になったな」
また訳の分からないことを…
本当に何を考えているのかよく分からない。
「もともと綺麗だから」
それだけ返してスタスタと出ていく。自動で閉じたドアの向こうでは、HIROが嬉しそうにくつくつと笑っていた。
「慎か…これは面白くなってきたな」
私は腕を組んで革張りのチェアに腰掛けるHIROにため息をぶつけた。
「相変わらず食えない笑顔だね」
「そんなことないよ」
「どうだか」
「THE RAMPAGEはどうだった?」
無事に貿易会社も叩き潰し任務を終えたのはつい先日のこと。私はそこでTHE RAMPAGEとは一旦別れ、今まで拠点としていたダウンタウンに戻ってきたのだ。
ダウンタウンを守るのはEXILE。LDHの本丸があるこの街は縄張りの最奥に位置している。
「それを調べるために私をウェスタンシティに送り込んだんでしょ」
「調べるんじゃない。俺は任務の合間に個々のスキルとかTHE RAMPAGE全体としての働きぶりとかを見てきてほしいって…」
私が黙って見つめていると、HIROは言葉を途中で切って苦笑いした。
「…いや、聞こうか」
私は手のひらサイズの投射機をHIROのデスクにコトンと置いた。スイッチを押すと力也の顔写真とプロフィールの詳細がホロとして浮かび上がる。
「まずエリオット・ロシャード・力矢。リーダーのひとりとして常に俯瞰からの指示役を担当してた。基本的には冷静だけど、たまに客観性にかけるフシがあるね。メンバーへの思入れが強すぎて…」
一緒に仕事をして感じた私の講評をつらつらと述べていく。
セカンドもジェネも、三代目と仕事をした時もそうだった。私をサポメンとして派遣する裏で、メンバーの仕事ぶりや戦い方、スキルなどをこっそりチェックさせるのだ。
悪趣味にも程があると思うのだが、直接手の届かない場所にいるチームの状態を私を通じて把握し、気にかけているHIROなりの配慮らしい。
大事な仲間に無茶な仕事を頼んで殺したくないんだ、すこし寂しげにそう笑っていたのを思い出す。
「…で、長谷川慎。スナイパーとしての腕は申し分ないね。能力もうまく活用してる。でも透視と望遠以外は使いこなせてないかな、過去や未来も見るみたいだけど突発的な発作みたいなものみたいらしいから、これを意図的に見れるようになればチーム全体もぐっと活動の質があがってくる。あとは自分の感情のコントロールもへたくそ。急にキスとか抱いてきたりとかする。私が可愛すぎるのが問題かもしれないけど」
「もうTHE RAMPAGEにも手を出したのか?」
「手を出してきたのはあっちだから」
「お前な…誰彼構わずそういうことしてたら病気になるぞ」
「そういうHIROだって私とシてたじゃん。パートナーできる前までは」
「…降参」
「よろしい」
HIROは軽く肩を竦めると、スクリーンに映った慎の顔を眺めながら自分の無精髭が生えた顎を撫でた。
「『広目天』…慎のトレーニングの内容を少し変えてみるか。あと慎が若干精神的に弱いのはな、たぶん慎の過去と絡んでる。知ってるか?」
「知らないし興味もない」
「何だ、調べてると思った」
別に調べようと思えばLDHのメンバー全員の来歴を隅から隅まで調べ尽くすことなど簡単にできる。
でも私がそれをやらないのは、労力の無駄だってだけじゃなくて。
「『今を生きろ、未来にある
HIROがちょっと驚いたような顔をして私を見た。
「なに」
「…いや」
しばらく何かを考えて、HIROはぼそりと呟いた。
「変わったな。みさ」
「え?」
「何か安心したわ」
「は?」
「お人形さんみたいな顔してた10年前とは別人だよ。あいつらと仕事させてよかった」
変わった?私が?
10年前といえば私がLDHに入った時。
どうだろう。確かに以前よりは周囲が騒がしくなったけど、私自身は変わったとは思っていない。
あの人の亡霊を心に住まわせて、五十嵐広行という別の男に転がされている。それだけだ。
私は10年前から、いや、生まれた瞬間から。
何も変わらない。
訳が分からずひとりで嬉しそうにしているHIROをただじっとり睨んでみるが、HIROはそれも気にせず私に穏やかに微笑みかけた。
「…まぁ、慎だけじゃない。THE RAMPAGEのやつらはそれぞれ心に何か暗いものを背負ってる。ゆっくり見守ってやってくれ」
「他人に干渉するとか、そういうめんどくさいことは私はやらないし向いてない。分かってんでしょ」
「俺は結構適任だと思うけど?ほら、2年前ジェネと組んでた時。あの時はみさのおかげで玲於が成長できただろ。それから三代目と初めて仕事した時は隆二を救ってくれた」
「それはたまたまなりゆきでそうなっただけ」
人間らしい心の機微とか、そういうのは私にはよく分からない。私はバカじゃないから(むしろ天才だから)そういうのが苦手な理由も分かる。
(私には感情が欠落している)
もちろん私だって喜ぶし甘いもの食べて幸せだと思う。でもなにかに怒ったり悲しんだり嫉妬したり、逆に涙が出るほど嬉しいと思ったり、そういうのはよく分からない。経験したことがない。
自分にないものを他人の心から見出すなんて無理な話だ。
それを分かっておきながら、この男は私にそういったことをやらせようとする。
ほんとに食えない。
「それで、あとのメンバーは?」
「あぁ、それから阿多龍太郎。龍ちゃんは…」
話を流された気がしなくもないが私はとりあえず本題に戻る。それぞれの講評を終えた私は投射機のスイッチを切った。
「ま、ざっとこんなもん」
「ありがとうみさ、参考にさせてもらうよ。今日はゆっくり休んでくれ。今まで使ってた地下室はそのままにしてあるから」
「別に疲れてないから仕事できるけど」
「ここんとこ働き詰めだろ?いいから休め」
有無を言わせぬ口調で言われたので、私は渋々ながらも大人しく従うことにした。
部屋を出ていこうとしたところで、HIROが私の名前を呼んだ。振り返る。
「綺麗になったな」
また訳の分からないことを…
本当に何を考えているのかよく分からない。
「もともと綺麗だから」
それだけ返してスタスタと出ていく。自動で閉じたドアの向こうでは、HIROが嬉しそうにくつくつと笑っていた。
「慎か…これは面白くなってきたな」