第二章
夢小説設定
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夢を見ていた。
大きく、殺風景な部屋。
銀髪の小さな少女が鋭い目をした男の隣に立っている。
その向かい側で対峙するのは俺が知るよりもだいぶ若いHIROさん。
男とHIROさんが激しくぶつかり合う。ナイフがぎらりと閃き、互いの急所を的確に狙う。間一髪のところでそれを躱す。
少女は淡いブルーの瞳でそれをまっすぐに見つめている。そこからはなんの感情も伺えない。
人形、という言葉が俺の頭に浮かんだ。
男と若かりしHIROさんとの超人的な戦いは長く続いた。互いの実力は拮抗していた。
しかし、その瞬間は唐突に訪れる。
男はもはや若くなかった。体力が底を尽き、一瞬反応が遅れた。
その瞬間に、HIROさんの瞳がかっと金色の光を帯びた。
ぐさり
男の左胸に、ナイフが柄まで突き刺さる。
男ががくりと膝をついた。口から大量の血が溢れる。刃は心臓だけでなく肺も貫いていた。男はこのまま自分の血で溺れて死ぬのだろう。
少女は顔色ひとつ変えない。じっと、血を吐き続ける男の背中を見つめている。
と、男が少女を振り返った。
地を這って、ゆっくりと少女に近づいていく。男が通った床に、血の道ができる。長い時間をかけて、ようやくその手が少女のスカートの裾を掴んだ。
膝立ちで掻き抱くようにして、少女の背中に腕を回す。まろいその頬を撫でると、鮮血がべったりと白い肌を赤く染めた。
『私は死なない。お前の、ここで。生き続ける』
まだふくらまない少女の胸に手のひらを当てて、男が囁いた。
そしてその体勢のまま、こと切れた。
少女は男を軽く揺すり、そしてHIROさんを見あげる。
半分だけ赤く染まった小さな唇が開く。
『________________』
「まこっちゃん?」
びくりと身体が跳ねた。
一瞬自分がどこにいるのか分からなくて、焦って飛び起きる。
朝だ。正しくは明け方。
それから、俺の家。いつもの寝室。
隣にはみさもいる。
プラチナの光を帯びた銀髪の巻き毛。
淡いブルーの瞳。
あの少女。
「夢…?」
「寝ぼけてんの?現実だよ、昨日私をめちゃくちゃに抱いたじゃん」
思考回路がまだ繋がりきってない。こいつが何を言っているのか分からない。
…いや、待てよ。
俺は裸の自分の上半身を見下ろし、同じくなにも着ていないみさを見て。
思い出した。
そうだ。
昨日の夜、キレてしまって。理性があの地下室で一気に吹き飛んでしまった。
それで俺ん家まで連れてきて、無理やり。
最悪だ。
みさの白い肌のあちこちに残る鬱血痕が見ていられなくて、自分が情けなくて、俺はどさりとベッドに倒れ込んだ。
「ねぇ、ていうかさ」
みさが俺の顔を上から覗き込んだ。ふありと銀色がひと房俺の頬に落ちてくる。
こんなにも美しいひとを、俺は傷つけた。
「何で泣いてるの?」
「…え?」
目元を拭ってみる。
指先が濡れた。
あれ、何で泣いてるんだろう。
「まこっちゃんが窒息しそうなくらい私をぎゅうぎゅうするから起きちゃったじゃん」
「…え」
「ていうか寝ながら能力使わないでよ。瞼にうっすら光が透けてて面白すぎるから。未来でも見た?」
「は?」
寝ながら?目が光ってた?
じゃあ俺が見たあれは、
あの銀髪に青い瞳の少女は。
『そのボスを殺したのってさ、HIROさんらしいんだよ』
亜嵐さんの声が脳内をガンガン叩く。
俺が見たのは夢でも、未来でも、遠くの場所で起こっている出来事でもない。
あれは、みさの過去の一部だ。
大きく、殺風景な部屋。
銀髪の小さな少女が鋭い目をした男の隣に立っている。
その向かい側で対峙するのは俺が知るよりもだいぶ若いHIROさん。
男とHIROさんが激しくぶつかり合う。ナイフがぎらりと閃き、互いの急所を的確に狙う。間一髪のところでそれを躱す。
少女は淡いブルーの瞳でそれをまっすぐに見つめている。そこからはなんの感情も伺えない。
人形、という言葉が俺の頭に浮かんだ。
男と若かりしHIROさんとの超人的な戦いは長く続いた。互いの実力は拮抗していた。
しかし、その瞬間は唐突に訪れる。
男はもはや若くなかった。体力が底を尽き、一瞬反応が遅れた。
その瞬間に、HIROさんの瞳がかっと金色の光を帯びた。
ぐさり
男の左胸に、ナイフが柄まで突き刺さる。
男ががくりと膝をついた。口から大量の血が溢れる。刃は心臓だけでなく肺も貫いていた。男はこのまま自分の血で溺れて死ぬのだろう。
少女は顔色ひとつ変えない。じっと、血を吐き続ける男の背中を見つめている。
と、男が少女を振り返った。
地を這って、ゆっくりと少女に近づいていく。男が通った床に、血の道ができる。長い時間をかけて、ようやくその手が少女のスカートの裾を掴んだ。
膝立ちで掻き抱くようにして、少女の背中に腕を回す。まろいその頬を撫でると、鮮血がべったりと白い肌を赤く染めた。
『私は死なない。お前の、ここで。生き続ける』
まだふくらまない少女の胸に手のひらを当てて、男が囁いた。
そしてその体勢のまま、こと切れた。
少女は男を軽く揺すり、そしてHIROさんを見あげる。
半分だけ赤く染まった小さな唇が開く。
『________________』
「まこっちゃん?」
びくりと身体が跳ねた。
一瞬自分がどこにいるのか分からなくて、焦って飛び起きる。
朝だ。正しくは明け方。
それから、俺の家。いつもの寝室。
隣にはみさもいる。
プラチナの光を帯びた銀髪の巻き毛。
淡いブルーの瞳。
あの少女。
「夢…?」
「寝ぼけてんの?現実だよ、昨日私をめちゃくちゃに抱いたじゃん」
思考回路がまだ繋がりきってない。こいつが何を言っているのか分からない。
…いや、待てよ。
俺は裸の自分の上半身を見下ろし、同じくなにも着ていないみさを見て。
思い出した。
そうだ。
昨日の夜、キレてしまって。理性があの地下室で一気に吹き飛んでしまった。
それで俺ん家まで連れてきて、無理やり。
最悪だ。
みさの白い肌のあちこちに残る鬱血痕が見ていられなくて、自分が情けなくて、俺はどさりとベッドに倒れ込んだ。
「ねぇ、ていうかさ」
みさが俺の顔を上から覗き込んだ。ふありと銀色がひと房俺の頬に落ちてくる。
こんなにも美しいひとを、俺は傷つけた。
「何で泣いてるの?」
「…え?」
目元を拭ってみる。
指先が濡れた。
あれ、何で泣いてるんだろう。
「まこっちゃんが窒息しそうなくらい私をぎゅうぎゅうするから起きちゃったじゃん」
「…え」
「ていうか寝ながら能力使わないでよ。瞼にうっすら光が透けてて面白すぎるから。未来でも見た?」
「は?」
寝ながら?目が光ってた?
じゃあ俺が見たあれは、
あの銀髪に青い瞳の少女は。
『そのボスを殺したのってさ、HIROさんらしいんだよ』
亜嵐さんの声が脳内をガンガン叩く。
俺が見たのは夢でも、未来でも、遠くの場所で起こっている出来事でもない。
あれは、みさの過去の一部だ。