第二章
夢小説設定
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「あぁHIROか。うん、うん元気だよ…だーかーらぁちゃんと仕事はやってるって言ってんじゃん。リッキーから報告あったでしょ、過保護もいい加減にしてよおっさん…HIROこそ働き詰めでアヤに怒られても知らないからね、うん、はいはいじゃあね、はーい」
HIROからのテレビ電話をぷつりと切る。私がパソコンに向き直って調べ物を再開しようとすると、ふいに背後から声がかかった。
「HIROさん?」
「ん、あぁまこっちゃんか。そうだけど」
さすがは機動部隊THE RAMPAGE、気配を全く感じさせない。いつからそこにいたんだろう。
「…そっか」
慎はいつもの椅子に座ると肩からライフルを下ろして磨き始めた。
「仕事だったの?」
「いや、龍友さんにライフル治してもらってきた」
「あぁ、りゅーとか」
GENERATIONSとは2年前一緒に仕事をしたことがある。中々に大変な任務だった。
「何か用?」
「…いや、別に」
「は?」
どうしたんだこいつ。何かさっきから目を合わせようとしないし。
と思ったら、唐突に口を開いた。
「昨日の夜のこと覚えてる?」
昨日の夜?
何かあったっけ?楽しいことがあった記憶はあるけど具体的なことは…
「いや、何も」
「…あっそ」
いやほんとどうしたんだ。様子がおかしい。
「HIROさんとなんの話してたの」
「え?いやなんかすごい心配してくるんだよね。過保護すぎるしいい加減めんどくさくて。いつまで私を子供扱いするんだっつの」
「仲良いんだね」
「腐れ縁だよ」
くされえん、慎が小さく呟いた。しばらくライフルのバレルを磨いていたがふいにガタンと椅子を蹴るようにして立ち上がる。
そしてずんずん距離を詰めると、私の座る椅子の背もたれに手をついて、椅子ごと自分の方に向かせた。
目の前に慎の整った顔がある。
「まこっちゃん…?」
「みさ、さ。何でここにいるの」
「え?」
慎の青みがかった黒い瞳がぎらぎらと燃えていた。その奥で光る感情が何か分からず、私は首を傾げる。
「何でLDHにいて、なんでHIROさんと普通に喋っていられるの」
「何でって、」
「悔しいとか悲しいとか、そういう感情ないわけ?」
どうしてしまったんだろう慎は。
悔しい、悲しい?
一体何のことを言っているのか。
「生憎これまでの人生で何かに悔しがったり悲しんだりしたことはないかな」
とりあえず質問に答える。目の前で燃える慎の瞳を見据えて、顎をくいっと上げると唇が触れ合いそうなほどの距離だった。
慎の瞳からふっとひかりが消えた。
「…心までお人形さんかよ」
「は?」
何のことだ、と聞く前に慎が私の手首を掴んで引っ張った。あまりに強く握られたのでぎち、肌の擦れる音が鳴る。
「え、ちょっと、」
私の抗議の声も聞かず慎は無言で私をぐいぐい引っ張って部屋を出る。途中でメンバーの誰かに声をかけられたけど答える余裕もなかった。ついに店の外まで来てしまう。
そこには夜の街のネオンに照らされた黒塗りの大型バイクが止まっていて、慎は私の手をしっかり握ったまま頭にヘルメットをがぽりと被せてきた。
慎こんなデカいバイク乗り回してやがるのか、なんてぼんやり考えてたら膝の裏に腕を差し込んで姫抱きに抱えあげられる。
軽々シート後方に座らせられて、間伐入れずに慎の大きな背中で視界が覆われた。
ぐるる、と肉食獣の唸り声のようにエンジン音が鳴る。振動で身体が揺れて太ももがくすぐったい。
「まこっちゃ、」
「掴まってて」
慎はまた私の手首を掴んで自分の腰に掴まらせた。私が大人しく抱きつくと慎はアクセルグリップを握りこむ。
ヘルメットの下からこぼれる髪が風にあおられる。景色がざあざあと勢いよく後ろに流れていく。
服越しの慎の背中がとても温かくて、どこに連れていかれるのかも分からない状況なのに不思議と心地よかった。
それから10分ほど走って着いたのは小洒落たマンション。その地下駐車場にバイクを停めて、慎は自分のと私のヘルメットを外してぞんざいにシートに置いた。
再び私の手首を掴んでエントランスを通り抜けエレベーターに乗る。この辺りで私は既に抵抗することを諦めていた。
無言。
今日の慎の行動は論理的に説明出来るものが何もない。頭のバグでも起こったのか?どうしたんだ?
10階でエレベーターが止まった。柔らかい絨毯のひかれた廊下はまるでホテルだが、慎はゆっくり鑑賞する時間も与えずにずんずん進み、角部屋の玄関扉にカードキーを押し当てた。
「ここ…」
「俺ん家」
短く答えて、慎は扉をガチャリと開ける。ぐいっと手を引っ張られて私はつんのめるように部屋に入った。
「あぶっ、危ないって」
「うるさい」
振り返ったところで慎が私の身体を玄関扉に押し付けた。耳の後ろに手を回され、身体は慎と扉に挟まれる。
逃げられない。
至近距離で覗き込む慎の瞳には、さっき地下室で見たあの炎が揺らめいていた。
危険な瞳だ。
危険で、くらくらするほど美しい。
慎の熱い吐息が唇にかかる。
動けない。動きたくない。
唇が重なる。
「ん…ぅ、ふぁ……あ、ッ、」
息をしようと口を開けたところを見計らって、慎が舌を捩じ込んでくる。歯列をなぞられ、上顎を熱い舌が滑っていく感覚に背骨が甘く震える。
押し付けられた慎の体の熱と、背中に感じる扉の冷たさとのコントラストに頭がどうにかなりそうだった。
「…ふ、」
長い長いキスをようやく終えて、慎が顔を離す。
扇情的な色をたたえた瞳がきゅっと細められた。
その時になって気づく。
黒真珠のような瞳の奧に宿る悲しみに。
「俺がみさを人間にしてあげる」
HIROからのテレビ電話をぷつりと切る。私がパソコンに向き直って調べ物を再開しようとすると、ふいに背後から声がかかった。
「HIROさん?」
「ん、あぁまこっちゃんか。そうだけど」
さすがは機動部隊THE RAMPAGE、気配を全く感じさせない。いつからそこにいたんだろう。
「…そっか」
慎はいつもの椅子に座ると肩からライフルを下ろして磨き始めた。
「仕事だったの?」
「いや、龍友さんにライフル治してもらってきた」
「あぁ、りゅーとか」
GENERATIONSとは2年前一緒に仕事をしたことがある。中々に大変な任務だった。
「何か用?」
「…いや、別に」
「は?」
どうしたんだこいつ。何かさっきから目を合わせようとしないし。
と思ったら、唐突に口を開いた。
「昨日の夜のこと覚えてる?」
昨日の夜?
何かあったっけ?楽しいことがあった記憶はあるけど具体的なことは…
「いや、何も」
「…あっそ」
いやほんとどうしたんだ。様子がおかしい。
「HIROさんとなんの話してたの」
「え?いやなんかすごい心配してくるんだよね。過保護すぎるしいい加減めんどくさくて。いつまで私を子供扱いするんだっつの」
「仲良いんだね」
「腐れ縁だよ」
くされえん、慎が小さく呟いた。しばらくライフルのバレルを磨いていたがふいにガタンと椅子を蹴るようにして立ち上がる。
そしてずんずん距離を詰めると、私の座る椅子の背もたれに手をついて、椅子ごと自分の方に向かせた。
目の前に慎の整った顔がある。
「まこっちゃん…?」
「みさ、さ。何でここにいるの」
「え?」
慎の青みがかった黒い瞳がぎらぎらと燃えていた。その奥で光る感情が何か分からず、私は首を傾げる。
「何でLDHにいて、なんでHIROさんと普通に喋っていられるの」
「何でって、」
「悔しいとか悲しいとか、そういう感情ないわけ?」
どうしてしまったんだろう慎は。
悔しい、悲しい?
一体何のことを言っているのか。
「生憎これまでの人生で何かに悔しがったり悲しんだりしたことはないかな」
とりあえず質問に答える。目の前で燃える慎の瞳を見据えて、顎をくいっと上げると唇が触れ合いそうなほどの距離だった。
慎の瞳からふっとひかりが消えた。
「…心までお人形さんかよ」
「は?」
何のことだ、と聞く前に慎が私の手首を掴んで引っ張った。あまりに強く握られたのでぎち、肌の擦れる音が鳴る。
「え、ちょっと、」
私の抗議の声も聞かず慎は無言で私をぐいぐい引っ張って部屋を出る。途中でメンバーの誰かに声をかけられたけど答える余裕もなかった。ついに店の外まで来てしまう。
そこには夜の街のネオンに照らされた黒塗りの大型バイクが止まっていて、慎は私の手をしっかり握ったまま頭にヘルメットをがぽりと被せてきた。
慎こんなデカいバイク乗り回してやがるのか、なんてぼんやり考えてたら膝の裏に腕を差し込んで姫抱きに抱えあげられる。
軽々シート後方に座らせられて、間伐入れずに慎の大きな背中で視界が覆われた。
ぐるる、と肉食獣の唸り声のようにエンジン音が鳴る。振動で身体が揺れて太ももがくすぐったい。
「まこっちゃ、」
「掴まってて」
慎はまた私の手首を掴んで自分の腰に掴まらせた。私が大人しく抱きつくと慎はアクセルグリップを握りこむ。
ヘルメットの下からこぼれる髪が風にあおられる。景色がざあざあと勢いよく後ろに流れていく。
服越しの慎の背中がとても温かくて、どこに連れていかれるのかも分からない状況なのに不思議と心地よかった。
それから10分ほど走って着いたのは小洒落たマンション。その地下駐車場にバイクを停めて、慎は自分のと私のヘルメットを外してぞんざいにシートに置いた。
再び私の手首を掴んでエントランスを通り抜けエレベーターに乗る。この辺りで私は既に抵抗することを諦めていた。
無言。
今日の慎の行動は論理的に説明出来るものが何もない。頭のバグでも起こったのか?どうしたんだ?
10階でエレベーターが止まった。柔らかい絨毯のひかれた廊下はまるでホテルだが、慎はゆっくり鑑賞する時間も与えずにずんずん進み、角部屋の玄関扉にカードキーを押し当てた。
「ここ…」
「俺ん家」
短く答えて、慎は扉をガチャリと開ける。ぐいっと手を引っ張られて私はつんのめるように部屋に入った。
「あぶっ、危ないって」
「うるさい」
振り返ったところで慎が私の身体を玄関扉に押し付けた。耳の後ろに手を回され、身体は慎と扉に挟まれる。
逃げられない。
至近距離で覗き込む慎の瞳には、さっき地下室で見たあの炎が揺らめいていた。
危険な瞳だ。
危険で、くらくらするほど美しい。
慎の熱い吐息が唇にかかる。
動けない。動きたくない。
唇が重なる。
「ん…ぅ、ふぁ……あ、ッ、」
息をしようと口を開けたところを見計らって、慎が舌を捩じ込んでくる。歯列をなぞられ、上顎を熱い舌が滑っていく感覚に背骨が甘く震える。
押し付けられた慎の体の熱と、背中に感じる扉の冷たさとのコントラストに頭がどうにかなりそうだった。
「…ふ、」
長い長いキスをようやく終えて、慎が顔を離す。
扇情的な色をたたえた瞳がきゅっと細められた。
その時になって気づく。
黒真珠のような瞳の奧に宿る悲しみに。
「俺がみさを人間にしてあげる」