第二章
夢小説設定
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目を覚ますと、知らない天井だった。
少し視線を動かすと私の腕に繋がる点滴のパック。それから窓の外の夕陽。
頭がぼんやりして状況を把握しきれないまま反対側に目を向ければ、そこにはTHE RAMPAGEのマネージャーさんが座っていた。
「…あ、起きた?体調はどう?」
「……ッ!今日何日ですか!?」
勢いよく起き上がって、マネージャーさんに掴みかかる。
「お、落ち着いて。今日は27日だよ。雪平はあの後意識を失ってここ…奈良の救急病院に運ばれたんだ」
27日。
今日は島根でライブなのに。
健太の誕生日なのに。
私はまだ奈良にいる。
とっさに点滴の針をひっこ抜いた私を、マネージャーさんは慌てて制止した。
「落ち着け!今出発しても間に合わない。雪平が今日の公演に出られないことはメンバーにも伝えてあるし、モバイルでも公表した。それに…」
マネージャーさんは僅かに言い淀む。
「その、髪」
あんたなんかいらない、そう言っていた昨日の彼女。
THE RAMPAGEこそが私の居場所だと思っていたのに。
私は、思い違いをしていたのだろうか。
「悪かった。俺の責任だよ。もっともっと君たちの安全に配慮するべきだった。今日から客降りはしないことは、メンバーやスタッフには既に伝えてある」
私たちのマネージャーにしては珍しく落ち込んだ様子を見せて、彼はおもむろにスマホを取り出す。
「メンバーと話す?」
「…はい」
マネージャーからスマホを受け取って、耳にあてる。
通話の相手は力矢さんだった。
「あの、白奈です」
『え、白奈!?起きたの!?』
今頃楽屋に入っているだろうか。電話の向こうからは力矢さん以外のメンバーの声もしている。
「その…迷惑かけてすみませんでした。振り付けとか立ち位置とか、何とかなりそうですか」
『そんなの大丈夫だから、白奈はゆっくり休め。いつお前が帰ってきてもいいように、居場所は守っとくから』
頼もしいTHE RAMPAGEのお父さん。
私はじわりと溢れてきた涙を必死に堪えながら言った。
「ありがとうございます」
『うん。他のメンバーも話したいって言ってるんだけど、代わってもいい?』
「はい」
メンバーひとりひとりから温かい言葉をもらって、私はいよいよ涙が止まらない。
そして最後は、健太だった。
『白奈…?』
「健太、その、迷惑かけてごめん」
『いや…俺なんも出来なかった。近くにいたのに。発作が出ても俺が何とかするって言ったのに』
人のいないところに移動したのだろうか、電話の向こうから健太以外の気配は感じない。
『発作が出て、すげー怖かった。合宿の時より何倍も』
「怖かった?」
『その…とにかく怖かったんだよ』
いつも以上に日本語が下手だ。声の調子からしても、落ち込んでいるのが分かる。
『俺たちは、17人でTHE RAMPAGEだから。ひとりでも欠けたらダメだからさ』
ぐす、と鼻を鳴らす音。
ああ、泣いてるのか。健太も。
『アンチなんて俺がファンに変えさせるから。戻ってきてよ』
涙が止まらない私に、マネージャーさんが黙ってハンカチを差し出す。それで目元を押さえながら、私は何度も何度も頷いた。
「うん……うん。ありがとう」
あぁそうだ、それから健太に言わないといけないことがあったんだった。
「それから健太、誕生日おめでとう」
『…あ、そうか。俺今日誕生日だ』
「何、忘れてたの?」
『忘れてた。バタバタしてて』
「バカ」
ふっと、涙の合間に笑みが零れる。
「私の分までライブ、盛り上げてきて。THE RAMPAGEの音楽が伝わるように。私がいないからって遠慮してちゃダメだよ」
『…うん。バースデーボーイがぶち上げてくる』
「調子には乗んなよ」
『うっせ』
私の居場所は、やっぱりここがいい。
全員に認めてもらえなくたって、それでも文句の言いようのないくらいのダンスをすればいいだけの話なんだ。
私は、THE RAMPAGEが大好きだから。
「…ありがと健太。ライブ、頑張ろうね」
『うん。頑張ろうな。それじゃ』
通話が終わる。
私はスマホを返しながら、マネージャーさんにあるお願いをした。
「この近くに美容院ってありますか」
少し視線を動かすと私の腕に繋がる点滴のパック。それから窓の外の夕陽。
頭がぼんやりして状況を把握しきれないまま反対側に目を向ければ、そこにはTHE RAMPAGEのマネージャーさんが座っていた。
「…あ、起きた?体調はどう?」
「……ッ!今日何日ですか!?」
勢いよく起き上がって、マネージャーさんに掴みかかる。
「お、落ち着いて。今日は27日だよ。雪平はあの後意識を失ってここ…奈良の救急病院に運ばれたんだ」
27日。
今日は島根でライブなのに。
健太の誕生日なのに。
私はまだ奈良にいる。
とっさに点滴の針をひっこ抜いた私を、マネージャーさんは慌てて制止した。
「落ち着け!今出発しても間に合わない。雪平が今日の公演に出られないことはメンバーにも伝えてあるし、モバイルでも公表した。それに…」
マネージャーさんは僅かに言い淀む。
「その、髪」
あんたなんかいらない、そう言っていた昨日の彼女。
THE RAMPAGEこそが私の居場所だと思っていたのに。
私は、思い違いをしていたのだろうか。
「悪かった。俺の責任だよ。もっともっと君たちの安全に配慮するべきだった。今日から客降りはしないことは、メンバーやスタッフには既に伝えてある」
私たちのマネージャーにしては珍しく落ち込んだ様子を見せて、彼はおもむろにスマホを取り出す。
「メンバーと話す?」
「…はい」
マネージャーからスマホを受け取って、耳にあてる。
通話の相手は力矢さんだった。
「あの、白奈です」
『え、白奈!?起きたの!?』
今頃楽屋に入っているだろうか。電話の向こうからは力矢さん以外のメンバーの声もしている。
「その…迷惑かけてすみませんでした。振り付けとか立ち位置とか、何とかなりそうですか」
『そんなの大丈夫だから、白奈はゆっくり休め。いつお前が帰ってきてもいいように、居場所は守っとくから』
頼もしいTHE RAMPAGEのお父さん。
私はじわりと溢れてきた涙を必死に堪えながら言った。
「ありがとうございます」
『うん。他のメンバーも話したいって言ってるんだけど、代わってもいい?』
「はい」
メンバーひとりひとりから温かい言葉をもらって、私はいよいよ涙が止まらない。
そして最後は、健太だった。
『白奈…?』
「健太、その、迷惑かけてごめん」
『いや…俺なんも出来なかった。近くにいたのに。発作が出ても俺が何とかするって言ったのに』
人のいないところに移動したのだろうか、電話の向こうから健太以外の気配は感じない。
『発作が出て、すげー怖かった。合宿の時より何倍も』
「怖かった?」
『その…とにかく怖かったんだよ』
いつも以上に日本語が下手だ。声の調子からしても、落ち込んでいるのが分かる。
『俺たちは、17人でTHE RAMPAGEだから。ひとりでも欠けたらダメだからさ』
ぐす、と鼻を鳴らす音。
ああ、泣いてるのか。健太も。
『アンチなんて俺がファンに変えさせるから。戻ってきてよ』
涙が止まらない私に、マネージャーさんが黙ってハンカチを差し出す。それで目元を押さえながら、私は何度も何度も頷いた。
「うん……うん。ありがとう」
あぁそうだ、それから健太に言わないといけないことがあったんだった。
「それから健太、誕生日おめでとう」
『…あ、そうか。俺今日誕生日だ』
「何、忘れてたの?」
『忘れてた。バタバタしてて』
「バカ」
ふっと、涙の合間に笑みが零れる。
「私の分までライブ、盛り上げてきて。THE RAMPAGEの音楽が伝わるように。私がいないからって遠慮してちゃダメだよ」
『…うん。バースデーボーイがぶち上げてくる』
「調子には乗んなよ」
『うっせ』
私の居場所は、やっぱりここがいい。
全員に認めてもらえなくたって、それでも文句の言いようのないくらいのダンスをすればいいだけの話なんだ。
私は、THE RAMPAGEが大好きだから。
「…ありがと健太。ライブ、頑張ろうね」
『うん。頑張ろうな。それじゃ』
通話が終わる。
私はスマホを返しながら、マネージャーさんにあるお願いをした。
「この近くに美容院ってありますか」