日常
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新年明けて、1月25日。
『Lightning』の発売日。
「みさー!!」
事務所から帰ってくるなり陣さんが共用スペースに駆け込んできた。やましょーくんと慎と樹、健太くんに手伝ってもらいながらみんなの洗濯物を畳んでいた私はビックリして顔を上げる。
「ど、どうしたんですか?」
「これ!遅くなってほんと悪い、俺らの最初のシングル!関係者用に配ってるやつ!」
洗濯物の山を蹴散らして(やましょーくんがめっちゃ怒ってる)、陣さんは私の手にCDを握らせる。
「!!」
ようやく。ようやくなんだ。
みんなの音楽を、やっと聞くことができる。
「見ていいですか!?」
「もちろんやで」
私は慌ててテレビのDVDデッキに円盤をセットし、バラエティを見ていた陸くんの抗議も無視して勝手に入力切替をする。
いつの間にか共用スペースには16人全員が集まっていて、みんながテレビ画面を注視していた。
『思いのまま
Move that body from side to side
一瞬の衝撃 Like a lightning』
絶対音感を備えている私の耳はかなり敏感で、少しでも音程が狂っていたりするとそれが苦痛になる。外出の際は耳栓代わりのイヤフォンが必須なほどだ。
でも、この曲は不思議なほどすんなりと私の耳を通った。
陸くんの伸びのあるハイトーンも、北人の甘く響くミドルも、壱馬のラップも。
もちろん、パフォーマーのみんなのダンスも。
全部が私の中に入ってきて、かき乱して、染み込んでいく。
これが。
これがTHE RAMPAGEなんだ。
一曲聞き終えた途端に、みんながふうっと息をつく。なぜか場の空気がピリッと緊張していた。
「…どうやった?」
陣さんが恐る恐る、といった感じで聞く。
私は呆然と暗くなったテレビの液晶を眺めていた。
「_________________…『RAMPAGE』…暴れ回る」
「みさ…?泣いてるん?」
壱馬に尋ねられて、え、と振り向く。
その拍子に私の頬をあたたかい雫がこぼれ落ちた。
「…あれ?」
「え、え、え、何で泣いてんの!?ちょ、誰かティッシュ!」
「誰だよみさ泣かした奴!」
「やばいやばい、何か分かんないけどすみませんでした!」
みんながてんやわんやしている中で、私自身何で泣いているのかもよく分からず、涙を止める方法なんてもっと分からない。
「あ、あれ、何で私泣いてるんだろ…」
「落ち着き。何か知らんけど」
壱馬に背中をさすってもらって、龍が持ってきてくれたティッシュで目元を抑える。
「何だろう、歌もダンスも私の思ってたより100倍すごくて、こう、ぐわーって来るっていうか…みんなの暴れ回ってやるっていう気持ちがすごく伝わってきてグループ名がRAMPAGEっていう意味もやっと分かったし、とにかく、何か感動しちゃって…」
しゃくりあげながら必死に気持ちを伝えようとするんだけど上手く言葉にできないのがもどかしい。それでもみんなには充分だったようで、背中をさすってくれていた壱馬の手が私の頭にぽんと置かれた。
「俺らに一番近くて一番大切な人にこんなに伝わったんなら、すげー嬉しい。こっからが勝負やし、俺らの暴れ回る姿、ちゃんと見といてな?」
その夜、あのMVが頭の中で何度も何度も再生されてなかなか寝付けなかった。こんな風に興奮して、謎の衝動に駆られるのなんて久々だ。
今までならそばにピアノがあって、それを弾くことで熱量を発散していたのに。
…そうか、ピアノがないからこんなにももどかしいんだ。ピアノがあれば。鍵盤に触れてさえいれば。
あぁ、
ピアノが弾きたい。