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「メリークリスマス!みさサンタです!」
「陣さん、変な生き物が来ました」
「無視しろ無視。大体サンタさんは朝の5時に堂々とドアから入って来おへん。真夜中に煙突から不法侵入してくるんや」
クリスマスだからって何故か一人部屋の陣さんのところでむさ苦しく雑魚寝していたメンバーが私をチラリと見てまた寝ようとする。
2日前まで福岡でライブだったみんなは東京に戻ってまだ18時間。そりゃ眠いだろうけど。
「えーとこれは…拓磨のやつだ。前に欲しがってたネックレス。で、こっちは海青のランニングシューズで、」
「まじ!?ありがとうみさ!」
「よっしゃあみさサイコー!」
「陣くん、拓磨と海青が陥落したけど」
「ブラックサンタや…」
そうして明け方の部屋に突撃しクリスマスプレゼントを配り終えた私はバタバタと朝ごはんを作り、みんなが起きだしてきたところで出かける準備を完了させる。
「ふぁ…あれ、みさどっか行くの?」
「うん、ちょっと用事。夜ご飯にはなるべく帰ってこれるようにするから」
北人の眠そうな目がまん丸になる。
「えっみさ彼氏いたの?」
「違うよ!…あ、時間やばい、じゃあ、」
ダイニングの扉を開けようとする一瞬前に向こう側から開かれる。寝起きで髪ボサボサの壱馬だった。
「はよーす…え、みさ出かけるん?」
「夜ご飯までには戻るから!行ってきます!」
「え、でも今日、」
本格的に時間がギリギリだった私は壱馬の言葉もよく聞かずに家を飛び出した。
今日はスタジオで朝からピアノのレッスン。フランス人の先生に彼氏はいないといったらじゃあ朝から練習できるねと予定をぶち込まれたのだ。
「君の弾き方は暴れ回ってるみたいだね」
「…?」
「いいかい、君の世界はとても色鮮やかで素晴らしい。でもそれを独り占めしていてはだめだ。聞かせるように弾くんだ。君の世界に聞き手を迎え入れてあげるんだ」
フランス紳士らしい詩的かつ情熱的な表現。全く分からない。
そんなこんなで四苦八苦しながら、気がつけばもう外は薄暗くなり始めていた。レッスンはこれで終了らしい。ずっと動かしっぱなしで突っ張る指を解しながら地下鉄に乗り、寮へ急ぐ。
「さむ…ギリギリ7時までには晩御飯作れるかな…」
ようやく寮が見えてきた。
そこで気づく。
寮の入口門のところで誰かが寒そうにしゃがみこんでいる。
あれは…
「壱馬…?」
近づいてみてやはり壱馬だと確認できた途端、私は慌ててしゃがみこむ壱馬に駆け寄って行った。
「ちょ、ちょっと壱馬どうしたのこんな所で!風邪ひくよ?」
話しかけられてようやく私を見上げた壱馬の瞳は、今まで見たことのない感情で燃えていた。私は思わず怯んで一歩下がる。
「…嘘ばっかやな」
壱馬はゆっくりと立ち上がって私の方に足を踏み出した。明らかに機嫌が悪い。私はじりじりと後ずさりするが、背中が寮のまわりを囲む塀にぶつかりもう下がれない。
「何が、嘘?」
「今日予定ないとか嘘ついて」
「ご、ごめん急に入っちゃって…」
「つーかさ、そもそもあん時に聞いた悩みってそんなことやなかったんと違う?そこから嘘やろ」
「そ、それは本当に…!」
壱馬が私の顔の横の壁にどん、と両手をついた。肩がびくりと震えてしまう。
どうしよう、怖い。
「彼氏とデートやろ。相手は?まさかあの合コン時の男?」
「違うよ!そんなんじゃない!」
「じゃあ何なん?今日、どこで何しとった?」
一体どうしたというのだろう。何でこんなに怒っているのか。
ピアノのレッスンだなんて言えない。でもこれ以上嘘を重ねたくもない。
「…言えない」
ぼそりと呟く。恐ろしいほどの沈黙と突き刺すような寒さで頭がどうにかなりそうだった。
おもむろに壱馬が口を開いた。
「あっそ」
私の顎を掴んで上を向かせる。
目の前にある壱馬の瞳のあまりの鋭さに、抵抗するのも忘れて息を飲んだ。
危険で、綺麗な瞳だと思った。
唇から妙に熱を持った白い息が漏れる。
徐々に2人の距離が縮まっていく。あと1cm。
「彼氏おらへんなら、俺何してもええやんな」
0cm。
唇が重なる。
外気の寒さと壱馬の体温との温度差に驚いて、いやそうじゃないと冷静な自分がつっこむ。
身体をおして離そうとするが壱馬の右手は私の後頭部に、左手は私の腰にガッチリとまわっているためビクともしない。角度を変え触れるだけのキスを繰り返す。
何で、何で、何で。
ただ混乱するばかりで、私は渾身の力を込めどん、壱馬を突き飛ばす。
涙で視界が歪に歪んだ。
「…最低」
私は混乱と悲しさと悔しさで、とにかくもうこれ以上壱馬の顔を見たくなくてクリスマスの街へ駆け出した。
「陣さん、変な生き物が来ました」
「無視しろ無視。大体サンタさんは朝の5時に堂々とドアから入って来おへん。真夜中に煙突から不法侵入してくるんや」
クリスマスだからって何故か一人部屋の陣さんのところでむさ苦しく雑魚寝していたメンバーが私をチラリと見てまた寝ようとする。
2日前まで福岡でライブだったみんなは東京に戻ってまだ18時間。そりゃ眠いだろうけど。
「えーとこれは…拓磨のやつだ。前に欲しがってたネックレス。で、こっちは海青のランニングシューズで、」
「まじ!?ありがとうみさ!」
「よっしゃあみさサイコー!」
「陣くん、拓磨と海青が陥落したけど」
「ブラックサンタや…」
そうして明け方の部屋に突撃しクリスマスプレゼントを配り終えた私はバタバタと朝ごはんを作り、みんなが起きだしてきたところで出かける準備を完了させる。
「ふぁ…あれ、みさどっか行くの?」
「うん、ちょっと用事。夜ご飯にはなるべく帰ってこれるようにするから」
北人の眠そうな目がまん丸になる。
「えっみさ彼氏いたの?」
「違うよ!…あ、時間やばい、じゃあ、」
ダイニングの扉を開けようとする一瞬前に向こう側から開かれる。寝起きで髪ボサボサの壱馬だった。
「はよーす…え、みさ出かけるん?」
「夜ご飯までには戻るから!行ってきます!」
「え、でも今日、」
本格的に時間がギリギリだった私は壱馬の言葉もよく聞かずに家を飛び出した。
今日はスタジオで朝からピアノのレッスン。フランス人の先生に彼氏はいないといったらじゃあ朝から練習できるねと予定をぶち込まれたのだ。
「君の弾き方は暴れ回ってるみたいだね」
「…?」
「いいかい、君の世界はとても色鮮やかで素晴らしい。でもそれを独り占めしていてはだめだ。聞かせるように弾くんだ。君の世界に聞き手を迎え入れてあげるんだ」
フランス紳士らしい詩的かつ情熱的な表現。全く分からない。
そんなこんなで四苦八苦しながら、気がつけばもう外は薄暗くなり始めていた。レッスンはこれで終了らしい。ずっと動かしっぱなしで突っ張る指を解しながら地下鉄に乗り、寮へ急ぐ。
「さむ…ギリギリ7時までには晩御飯作れるかな…」
ようやく寮が見えてきた。
そこで気づく。
寮の入口門のところで誰かが寒そうにしゃがみこんでいる。
あれは…
「壱馬…?」
近づいてみてやはり壱馬だと確認できた途端、私は慌ててしゃがみこむ壱馬に駆け寄って行った。
「ちょ、ちょっと壱馬どうしたのこんな所で!風邪ひくよ?」
話しかけられてようやく私を見上げた壱馬の瞳は、今まで見たことのない感情で燃えていた。私は思わず怯んで一歩下がる。
「…嘘ばっかやな」
壱馬はゆっくりと立ち上がって私の方に足を踏み出した。明らかに機嫌が悪い。私はじりじりと後ずさりするが、背中が寮のまわりを囲む塀にぶつかりもう下がれない。
「何が、嘘?」
「今日予定ないとか嘘ついて」
「ご、ごめん急に入っちゃって…」
「つーかさ、そもそもあん時に聞いた悩みってそんなことやなかったんと違う?そこから嘘やろ」
「そ、それは本当に…!」
壱馬が私の顔の横の壁にどん、と両手をついた。肩がびくりと震えてしまう。
どうしよう、怖い。
「彼氏とデートやろ。相手は?まさかあの合コン時の男?」
「違うよ!そんなんじゃない!」
「じゃあ何なん?今日、どこで何しとった?」
一体どうしたというのだろう。何でこんなに怒っているのか。
ピアノのレッスンだなんて言えない。でもこれ以上嘘を重ねたくもない。
「…言えない」
ぼそりと呟く。恐ろしいほどの沈黙と突き刺すような寒さで頭がどうにかなりそうだった。
おもむろに壱馬が口を開いた。
「あっそ」
私の顎を掴んで上を向かせる。
目の前にある壱馬の瞳のあまりの鋭さに、抵抗するのも忘れて息を飲んだ。
危険で、綺麗な瞳だと思った。
唇から妙に熱を持った白い息が漏れる。
徐々に2人の距離が縮まっていく。あと1cm。
「彼氏おらへんなら、俺何してもええやんな」
0cm。
唇が重なる。
外気の寒さと壱馬の体温との温度差に驚いて、いやそうじゃないと冷静な自分がつっこむ。
身体をおして離そうとするが壱馬の右手は私の後頭部に、左手は私の腰にガッチリとまわっているためビクともしない。角度を変え触れるだけのキスを繰り返す。
何で、何で、何で。
ただ混乱するばかりで、私は渾身の力を込めどん、壱馬を突き飛ばす。
涙で視界が歪に歪んだ。
「…最低」
私は混乱と悲しさと悔しさで、とにかくもうこれ以上壱馬の顔を見たくなくてクリスマスの街へ駆け出した。