日常
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7人に夕方の渋谷を連れ回された。インスタ映えスポットを物凄い速さでハシゴし、古着屋さんを物凄い速さでひやかして周り、人気のクレープ屋さんのクレープを物凄い速さで食べ、物凄い速さで夜の7時になった。
龍のスマホが震えた。電話だ。
「はい…はい、分かりました」
短い通話を終え、龍がみんなと小さく頷き合う。何だこれ。拓磨がひとり状況についていけない私を見て、力強く言った。
「撤収!」
「ふぇ?」
その言葉を合図に再び海青が私を姫抱きに抱えた。そして猛然と地下鉄駅へ走る。
気がついた時には寮の玄関前だった。ようやく地面に下ろしてもらってひと息つく。
「もう…ほんと何なの?どうしたの急に?」
「いいから。開けて、ドア」
取り付く島もない樹が顎をしゃくる。私は諦めてプッシュドアノブを押した。
上がり框に立っていたのは、陣さんと力也さんのリーダーコンビ。
「「おかえり!」」
「え、あ、ただいま……って、何!?何ですか!?」
突然陣さんが後ろに回って手で私の目元を覆った。力也さんが私の両手を掴む。
「こっちこっち…あ、足元段差あるから気をつけて」
「右に曲がるで~」
「何何何!?何なんですかほんとに!」
前が見えず、頼りになるのは力也さんの誘導だけ。でも、この道順は体が覚えている。
行き先は共用スペースだ。
「はいストップ。手、離すけどそこから動かないでね」
「目隠しはまだ取らへんけどな」
部屋の中にたくさんの人の気配。たぶん、16人。メンバーみんないる気がする。
「どうしたんですか!?手、取ってくださいよ陣さん!」
「じゃあ行くぞお前ら!」
「「3!2!1!」」
ぱっと、陣さんの手が目元から離れた。部屋の眩しさで一瞬、何も見えなくなる。
しばらくぱちぱち瞬きして、ようやく部屋の中がはっきり見えた。
思わず、手を口元に当てて息を呑む。
広い共用スペースの真ん中に、黒く光るグランドピアノ。
「_______________…な、んで………これ、」
あの時の。
そう言おうと思った時、壱馬がピアノの後ろから姿を現す。
「前に、みさが弾いとったピアノ。ビビった?」
ぶわっと、涙が零れる。
「あーすぐ泣くやん。泣かれると弱いんやけど」
「……何で、だってこれ100万近く…」
「ほんまは俺のお金で買おうと思ってたんやけどな」
照れくさそうに頭を搔く壱馬の肩を陸くんが叩いた。
「壱馬ばっかにカッコイイことさせてやんないよ?」
「俺が壱馬からみさちゃんがピアノ弾きたいのに弾けないでいることとか聞き出してん。そんで、せっかくメンバー16人もおるんやからみんなでお金出し合って買おうって決めて」
陣さんがそう言って笑った。
そうか、さっき外に連れ出されたのはこれを搬入するのを私に悟られないようにするためだったんだ。残りの9人で部屋にこれが置けるだけのスペースを作って運び込んでくれてたんだ。
涙が止まらない。嗚咽の隙間から、必死に「ありがとう」と伝える。
「みさせっかくいい耳持ってるんやしすげぇ上手いのに聞けるのあの1回きりなんて嫌や。俺はもっとみさのピアノが聞きたい」
壱馬が歩みよってきて、親指でそっと私の涙を拭った。
「な?頼むわ」
壱馬はずるい、そう思った。みんなもずるい。そんな顔でそんなこと言って、こんなことして。
私はぼろぼろ涙を零しながら、それでも精一杯笑ってみせる。
「もちろん。何回でも弾くよ。このピアノで。本当にありがとう」
龍のスマホが震えた。電話だ。
「はい…はい、分かりました」
短い通話を終え、龍がみんなと小さく頷き合う。何だこれ。拓磨がひとり状況についていけない私を見て、力強く言った。
「撤収!」
「ふぇ?」
その言葉を合図に再び海青が私を姫抱きに抱えた。そして猛然と地下鉄駅へ走る。
気がついた時には寮の玄関前だった。ようやく地面に下ろしてもらってひと息つく。
「もう…ほんと何なの?どうしたの急に?」
「いいから。開けて、ドア」
取り付く島もない樹が顎をしゃくる。私は諦めてプッシュドアノブを押した。
上がり框に立っていたのは、陣さんと力也さんのリーダーコンビ。
「「おかえり!」」
「え、あ、ただいま……って、何!?何ですか!?」
突然陣さんが後ろに回って手で私の目元を覆った。力也さんが私の両手を掴む。
「こっちこっち…あ、足元段差あるから気をつけて」
「右に曲がるで~」
「何何何!?何なんですかほんとに!」
前が見えず、頼りになるのは力也さんの誘導だけ。でも、この道順は体が覚えている。
行き先は共用スペースだ。
「はいストップ。手、離すけどそこから動かないでね」
「目隠しはまだ取らへんけどな」
部屋の中にたくさんの人の気配。たぶん、16人。メンバーみんないる気がする。
「どうしたんですか!?手、取ってくださいよ陣さん!」
「じゃあ行くぞお前ら!」
「「3!2!1!」」
ぱっと、陣さんの手が目元から離れた。部屋の眩しさで一瞬、何も見えなくなる。
しばらくぱちぱち瞬きして、ようやく部屋の中がはっきり見えた。
思わず、手を口元に当てて息を呑む。
広い共用スペースの真ん中に、黒く光るグランドピアノ。
「_______________…な、んで………これ、」
あの時の。
そう言おうと思った時、壱馬がピアノの後ろから姿を現す。
「前に、みさが弾いとったピアノ。ビビった?」
ぶわっと、涙が零れる。
「あーすぐ泣くやん。泣かれると弱いんやけど」
「……何で、だってこれ100万近く…」
「ほんまは俺のお金で買おうと思ってたんやけどな」
照れくさそうに頭を搔く壱馬の肩を陸くんが叩いた。
「壱馬ばっかにカッコイイことさせてやんないよ?」
「俺が壱馬からみさちゃんがピアノ弾きたいのに弾けないでいることとか聞き出してん。そんで、せっかくメンバー16人もおるんやからみんなでお金出し合って買おうって決めて」
陣さんがそう言って笑った。
そうか、さっき外に連れ出されたのはこれを搬入するのを私に悟られないようにするためだったんだ。残りの9人で部屋にこれが置けるだけのスペースを作って運び込んでくれてたんだ。
涙が止まらない。嗚咽の隙間から、必死に「ありがとう」と伝える。
「みさせっかくいい耳持ってるんやしすげぇ上手いのに聞けるのあの1回きりなんて嫌や。俺はもっとみさのピアノが聞きたい」
壱馬が歩みよってきて、親指でそっと私の涙を拭った。
「な?頼むわ」
壱馬はずるい、そう思った。みんなもずるい。そんな顔でそんなこと言って、こんなことして。
私はぼろぼろ涙を零しながら、それでも精一杯笑ってみせる。
「もちろん。何回でも弾くよ。このピアノで。本当にありがとう」