出会い
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実家の片隅にぽつんと置かれた、アップライトのピアノ。貧乏で無駄なものなど買えなかった我が家で唯一の贅沢品だった。
私はいわゆる絶対音感の持ち主で、調律も自力でこなした。鉛筆やノートよりも鍵盤を触る回数の方が多いくらい、小さい頃の私はピアノを弾き続けた。
ピアニストという職業は私の憧れそのものだった。
だが、現実というものは案外淡白だ。
お金のない家には私を音大に通わせることなどとてもじゃないが無理だった。その代わりと言っては何だが、両親が許したのは奨学金をもらって地元の国公立大学に通うこと。この頃から私のモットーは『身の程を知れ』になった。無難な大学生活を送り、あっという間に就活の時期が来た。
思えば、あれこそが『身の程』を知って生きてきた私の人生の転換点だったのだ。
「LDH社員…?」
新グループの寮生活サポート、住み込みだから家賃も浮くし、何より給料がいい。これなら両親への仕送りもできそう。料理や家事には自信もあるし。
特に資格も持たず、大学4年の春になっても内定が貰えていなかった私はその募集にすぐさま飛びついた。そしてあれよあれよという間に最終面接まで進み、無事に採用となった。
何だか怒涛のような展開だな…
これからの私の仕事場兼自宅となる大きな家を見上げ、感慨に浸る。
ピンポーン
私よりも数日ほど前に、新グループのメンバーさん達は入寮を済ませているらしい。私は恐る恐るインターホンを鳴らす。
『…はい』
「あ、今日からこちらで働かせていただく夏目という者ですが…」
『あ~そっか今日からか。今開けます』
ハスキーな男の声。メンバーさんの詳しいことはまだ何も知らされてないから、誰の声かは全く分からない。
私が緊張で荷物をぎゅっと抱えて待っていると、いきなり扉が開いた。
その向こうに、彼がいたんだ。
私の人生を大きく変えることになる、彼が。
「…はじめまして。川村壱馬です」
私はいわゆる絶対音感の持ち主で、調律も自力でこなした。鉛筆やノートよりも鍵盤を触る回数の方が多いくらい、小さい頃の私はピアノを弾き続けた。
ピアニストという職業は私の憧れそのものだった。
だが、現実というものは案外淡白だ。
お金のない家には私を音大に通わせることなどとてもじゃないが無理だった。その代わりと言っては何だが、両親が許したのは奨学金をもらって地元の国公立大学に通うこと。この頃から私のモットーは『身の程を知れ』になった。無難な大学生活を送り、あっという間に就活の時期が来た。
思えば、あれこそが『身の程』を知って生きてきた私の人生の転換点だったのだ。
「LDH社員…?」
新グループの寮生活サポート、住み込みだから家賃も浮くし、何より給料がいい。これなら両親への仕送りもできそう。料理や家事には自信もあるし。
特に資格も持たず、大学4年の春になっても内定が貰えていなかった私はその募集にすぐさま飛びついた。そしてあれよあれよという間に最終面接まで進み、無事に採用となった。
何だか怒涛のような展開だな…
これからの私の仕事場兼自宅となる大きな家を見上げ、感慨に浸る。
ピンポーン
私よりも数日ほど前に、新グループのメンバーさん達は入寮を済ませているらしい。私は恐る恐るインターホンを鳴らす。
『…はい』
「あ、今日からこちらで働かせていただく夏目という者ですが…」
『あ~そっか今日からか。今開けます』
ハスキーな男の声。メンバーさんの詳しいことはまだ何も知らされてないから、誰の声かは全く分からない。
私が緊張で荷物をぎゅっと抱えて待っていると、いきなり扉が開いた。
その向こうに、彼がいたんだ。
私の人生を大きく変えることになる、彼が。
「…はじめまして。川村壱馬です」
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