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二次創作(おそ松さん)


その日の夕方は、やけに長く感じた。


卒業式の少し前の日の事。

進路についての話題が出始めた頃。
僕は補習で帰るのが遅くなっていて、その日はトド松とは一緒には帰らなかった。

僕が帰るなり、待って居たのはお互いを罵り合う兄二人と怯えて声も出なくなった弟達だった。

僕はその場に居ることも怖く、外へ駆け出した。


家から少し離れた小さな公園。
誰にも干渉されず、ひとりになれる場所。

本当にこのままでいいのかな。

卒業しても、僕達はこのままなのかな。

そんな事を考えていると、

『…チョロ松君?』

『た、高橋さん!?』

黒い髪を2つに結った、同級生がいつの間にか傍にいた。



『こうして一緒にいるのは1年振りだねぇ…大丈夫?』

『…大丈夫、とは言い難いけどね、まぁ色々あって、ちょっと1人になりたかった』
僕は淡々と話す。
彼女の前だと何故か普通に話せる。
なんでだろう。
彼女はうんうん、と頷きながら僕の話を聞く。

『チョロ松君頑張りやさんだもんねぇ、息抜きも必要だよぉ。辛いでしょ』

見抜かれた。

彼女には全てを見透かされているような気がする、でも不快な気持ちはしない。

『…僕達、このままでいいのかな…高橋さんはどう思う?』

彼女は困ったような笑顔をし、私には分からないなぁと、答える。

愚問だっただろうか。

そう考えていると、足元に黒猫がいつの間にか擦り寄ってきていた。

『わっ!』
高橋さんは黒猫を見つめ、
『また来ていたんだねぇ』
と首元を撫でる。

『この猫、知ってるの?』
よく来るんだよぉ、野良猫みたいだけど、人懐っこいんだぁ、と彼女は答え、黒猫を膝に乗せる。黒猫は満足そうにゴロゴロと喉を鳴らす。

『…昔ね、私猫を飼っていたんだぁ。
拾った猫なんだけどねぇ、目が綺麗な緑色の猫でね、とっても可愛かった。まだ仔猫でね、絶対大人にしてあげたかった』

『してあげたかった…?もうその猫って』

『死んじゃったの。ある日野良猫の喧嘩に巻き込まれて』

正直信じたくなかった、でも、今でも私の心にあの黒猫はずっといるから、とはにかみながら彼女は笑顔で言う。

『それって…偶像…って事?』

『ふふっ、そうかもねぇ。私も…いや、何でもないや』
『?』
『もう外日が落ちそうだし帰るね、話付き合ってくれてありがとう!バイバイ!チョロ松君!また明日!』
そう言い、彼女は足早に帰っていった。

『どうしたんだろう…?』




時は過ぎ、現在。


『なぁ~チョロ松ぅ~俺にも構ってよ~!レイカばっかじゃなくて、お兄ちゃんさみしがってるよぉ?』

『うっせーな!!レイカじゃねぇし!!にゃーちゃんだし!コール全部覚えさせるぞ』
おそ松兄さんのウザったらしい構えアピールに巻き込まれ、いつものように騒いでいると、ふと窓辺に黒猫が居た。けれど

『…?』
僕が気が付いた瞬間には居なくなっていた。

僕が偶像(アイドル)を好きになった理由、それはあの日の夜更け、そこから決まっていたのかもしれない。

きっとそうだよね。

今は遥か遠くに行った彼女に思いを馳せ、
僕は今日も偶像を追い求める。
それは今日も、明日も、これからも。


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