二次創作(太鼓の達人)
注意
妄想捏造まみれ
なんでも許せる方向け
俺の判断は間違ってたのだろうか。
ただ1人、何もない空間をただ彷徨う。
家に残してきてしまった姉さんのこと、今後のこと。
思うだけで胸が痛い。
最初から俺に自由なんてなかったんだ。
籠の中の小鳥のように、羽ばたきすら許されないんだ。
俺は力無くその場に座り込んでしまう。
出口のない空間を空虚な目で見つめる。
すると何処からともなく太鼓の軽やかな音色が聞こえてきた。
それは今までに聞いたこともない、雅ながらも明るい演奏だった。
わずかに聞こえる音を頼りに道を進む。
気のせいなのか、不思議と音に合わせて足取りが軽くなる。
道を進むと寂れた会場が目に入った。
フェスティバルの会場より一回り小さいが、所狭しと当時のままであろう楽器がそのまま置かれていた。
音は会場の方から聞こえてきた。俺はそのまま階段を下りる。
会場のメインステージと思われる場所で、見知らぬ2人が演奏をしていた。
黄金色の髪をした少女がこちらに気づき、手招きをする。
俺は誘われるがままに手前の1番よく見える席に案内された。
軽やかな太鼓の音色が会場に響き渡る。
何故か、その音色に、心動かされる自分がいて。
気がつけば俺の目から一筋の涙がこぼれ落ちた。
その涙は止まらなくて。
「うっ・・・・ぐっ・・・
」
年甲斐もなく泣きじゃくる俺に気がついたのか
先ほどの少女がハンカチを差し出す。
「無理して泣かないよりもぱーっと泣いた方が楽よ。遠慮なんていらないから」
「ありがとう・・だが何故俺の事情を知っているんだ?」
「それは・・・ちょっと心配だったのよ、君の事。・・・・主にお兄ちゃんが」
少女は若干目を泳がせながらもう眼鏡を掛けた少年の方を向く。
「ミライも結構心配してたからお互い様だと思うんだけど・・・
」
ミライ、と呼ばれた少女は呆れながら、どっちもどっちよ、と言いながらメインステージを下り、
俺の隣に座った。
「いきなり驚かせてしまってごめんなさい。僕はフウガといいます。でこっちが・・・」
「妹のミライよ」
「俺はシドだ。ところでこの空間は一体なんだ?」
「この空間は意識と精神の狭間。普段は大事ではない限り、来ることがない、特別な場所です」
「だとすると何故俺はこの場所に来たのか?」
フウガは少考え込み、静かに告げる。
「それは・・・・シドさん、君のドン魂が今非常に弱っているからなんです」
俺は太鼓はあまり叩かないのだが、と言うが、フウガは首を軽く横に振り、
「ドン魂は太鼓を演奏する有無に関係なく、誰しもが持つものです。ですが・・・」
それに続きミライが、
「反対に、負の感情を抱えると時にその力は、闇に呑まれてしまうこともあるのよ。だから私たちはこの空間を通じて君に会いに来たってわけ」
そんなお伽話みたいなこと、と思ったが、彼らは話してくれた。
もう一つの世界のどんちゃんはかつては負の感情に漬け込まれ、取り憑かれてしまった少年のこと。
一瞬の隙をつかれ、愛する妹と対峙することになってしまった悲しき姉のこと。
そして、別の世界で、彼自身も闇に呑まれかけた事も。
「だから…かつてのどんちゃん達に歯向かってきた人達みたいなことにはなって欲しくないんです。少し話を聞かせてもらえませんか」
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「お父さんに追い詰められて家出か・・・」
「で、妹さんはお父さん側の方に取り残されて離れ離れになった、と・・・」
「俺がフェスティバルの時・・・余計な事をしなければ・・・」
俯く俺の手をフウガが優しく握る。
「・・・君が起こした行動は、決して余計な行動ではないと思います」
自分がしたいことも、本当にやりたいことも縛られていて、できなくて。でも勇気を出して自分を少しでも出せた、それは余計な行動には入らないんです。
彼は少し苦笑いしながら優しい口調で続けた。
「お兄ちゃんが言うとめっちゃ説得力あるわね」
「ミライはいつも一言余計なんだぞ・・・僕もかつては理屈ばかりに縛られてました、でも・・・」
フウガはそういい、かけている眼鏡を外す。一瞬、赤い炎が辺りを包み、紫色の長髪に赤い瞳をした少年に姿を変わる。
「ひょんなことからオレが外に出れたからさ、あいつも少しは考え方が柔らかくなったんだよ」
「外・・・?」
「あー・・・初めてだとびっくりするよね、説明するね」
ミライは簡潔に話してくれた。フウガは事情は不明だが眼鏡を外してはならない、と彼らの両親から強く言われていたが、ある時、興味本意で知り合いが外したところ、裏人格である彼が久方ぶりに目覚める羽目になった。とのこと。
「元々はあたしとお兄ちゃん、何か起こる度しょっちゅう喧嘩してて。一回家飛び出しっちゃったことあって。その時に会ったのがお兄ちゃんのもう一つの姿・・・即ち」
「オレ、アラシってわけ」
オレはミライに太鼓のノウハウを教えた。そしてミライはフウガに、本来の練習の仕方について、本気でぶつかりあって、本音で、忖度もなしで言い合った。
彼は続ける。
「だからお兄ちゃん・・・あいつもほっとけなかったんじゃないかなって。かつての自分を見ているみたいで。力になりたかったんだよ、不器用だけどさ。だから・・・シド、お前ももっと自分に正直になってもいい。ぶつかってもいい。楽しんでいこうぜ」
そういい、アラシは弾けた笑顔を見せる。
「これから先、きっとまたぶつかるかもしれない。でも君なら平気よ。・・・みんながいるから。
あたしたちは遠くで見守ってるから。大丈夫、きみならできる
」
そう行った瞬間あたりが白く輝く。
「待っ・・・」
その声は光にかき消され。
「夢・・?」
起きると寝相が悪かったのか上にどんちゃんとコタロウが重なってた。
夢にしてはやけにファンタジーじみてたな、と思い携帯を見る。
時刻は午前10時を回ってた。
「・・・・最悪だ・・・寝坊した・・このような失態・・・」
「はよシド。今日は土曜だぜ」
「そう言う問題でも無いだろう」
「今日はお休みだドン」
どんちゃんは二度寝しそうな勢いだったので慌てて止めた。
「今はサワガシ荘だしさ、気楽にいこうぜ」
「そんなこと・・・」
そう言いかけ、夢に出てきた言葉を思い出す
自分に正直になって。
「まぁ・・・悪くはないな。・・・コタロウ、後で太鼓の叩き方を教えてくれないか?」
「いいぜ!そう来なくっちゃな!早く朝飯食いにいこうぜ!」
「冷めないうちに食べるドン!」
籠の中の小鳥の旅立ちを祝うかのように、一陣の風が吹いた。
