偽りの執事

「カガリ様、何故このようなところに。学校が終わったら校門のところにいらっしゃるようにと申し上げたはずです」

一日の授業が終わってもカガリは教室にいた。
クラスメートたちは帰宅したり部活に行ったりで既に誰もいない。
校門でいくら待っても姿を現さないカガリをアスランは教室まで迎えに来ていた。

「では、参りましょう」

アスランが促してもカガリは俯いたまま動こうとはしなかった。

「カガリ様」

「お前、なんか言うことないのかよ」

俯いたまま、やっと発した声は怒りを含んでいた。

「言うこと、ですか?」

「私、今日お見合いするんだぞ」

「存じております。だからこうして・・」

「そういうことじゃない!」

やっと顔をあげたカガリの琥珀の瞳は怒りや悲しみが混ざり合って揺れていた。

「私が結婚してもいいのかよ!」

カガリの勢いにアスランは一瞬驚いたようだがすぐに冷静さを取り戻す。

「カガリ様はアスハ家のご令嬢。相応しいところに嫁がれるのは当たり前のことです。セイラン家は家柄も・・」

「ご令嬢とかじゃない!!アスハ家とか・・そういうことじゃない!!」

アスランの言葉を遮って叫んだ。

分からないのかよ・・と小さく言いながら
アスランを睨み付ける瞳からは今にも涙がこぼれそうで身体は小刻みに震えている。

「では、どういうことです?」

少し呆れたようにカガリに尋ねてくるアスランが憎らしい。
自分の想いを汲んでくれない、彼が。

「私は、お前が誰かと結婚するのは・・嫌だ・・」

それは涙と一緒に喉の奥から溢れてくる想い。

「お前は・・私が誰かと結婚するの嫌じゃないのかよ・・」

勇気を出して口にした想い。

それなのに何の反応もせず微動だにしないアスランが悲しい。
黙っていると胸が苦しさに押しつぶされてしまいそうでカガリは言葉を続ける。

「それとも、嬉しいか?この結婚でアスハ家が更に発展することが・・いや、面倒なやつがいなくなることが」

自嘲ぎみに口を歪めて、カガリはまた叫んだ。

「分かんないんだよ!!お前!!いつもすました顔して・・嬉しいのか怒ってるのか悲しいのかとか!何考えてるの全然わから・・」

身体に衝撃が走ったと感じた瞬間、カガリはアスランの腕のなかにいた。
5/13ページ
スキ