偽りの執事

執事と主人という関係に遠慮しているのかと思いもしたが、カガリの父でありアスハ財閥の頭取であるウズミと、アスハ家のすべてを取り仕切る執事のパトリックは主従関係というよりも旧友のような間柄で結ばれている。
おおらかなアスハ家にはあまり身分というものを気にする風潮がないのだ。

アスランの変化の原因がどうしても分からなくてカガリが彼を問い詰めると「俺はもともと人と関わるのが得意ではないのです」と、すげなく言われてしまった。

確かにアスランは社交的な性格ではない。
外で遊ぶよりも家にいることのほうが好きだ。
でも、今まではいつも私と一緒にいてくれた。
子供だけでは行ってはいけないと言われていた山へ木の実を取りにいくのに一緒にきてくれた。
蟹を取りにいった川でおぼれそうになった私を助けてくれた。

それなのに、どうして急に?

本当は私と一緒にいるのは嫌だったのだろうか。
アスランは執事だから主人の私に逆らえず
仕方なく付き合ってくれていたのだろうか。

アスランは優しいから・・・。

アスランとの幾つもの想いでが悲しみで塗り
つぶされていく。

そう、アスランはいつも優しかった。
そんなアスランが冷たい態度をとるなんてよっぽどのことだ。
そんなにも、もう私に振り回されるのはまっぴらだと思ったのだろうか。

そんな考えにたどり着いてカガリがアスランに纏わりつくのはやめたのは、12歳の冬の日のことだった。
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