偽りの執事
ウズミがアスランのもとにやってきて、カガリとの結婚を許されたあの日。
アスランはカガリの待つホテルに駆け込んだ。
8年ぶりの彼女は記憶のなかの彼女よりも幾分大人っぽくなっていたが、金色の髪と瞳は何も変わっていなかった。
「アスラン・・」
ずっと聞きたかったアルトの声で呼びかけれらた瞬間、彼女を掻き抱いた。
彼女に会ったら言いたいこと、言わなければならないことがたくさんあったはずなのに。
「カガリ様・・カガリ様・・」
涙と想いが溢れてきて止まらなくて、うわごとのようにカガリの名を呼ぶことしかできなかった。
「アスラン・・アスラン・・」
腕のなかのカガリも震えていた。
そうしてしばらくきつく抱きあって、アスランは腕の力を緩めた。
「カガリ・・逢いたかった・・・」
喉から搾りだした声はひどく震えていた。
「私だって!お前私に何も言わずにいきなりにプラントに行って・・」
カガリが嗚咽も漏らしながら途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
「ごめん・・・あの時はもう君に会っちゃいけないと思っていたから・・」
「あの時って・・それから一度も会いにきてくれなかったじゃないか!」
「それもごめん・・君に釣り合うような男になるまではと・・」
「私のこと、忘れちゃったかと思っていたんだぞ・・」
「そんなことあるはずないだろう・・・君のことを想い過ぎて気が狂いそうだったのに」
そう言ってアスランは琥珀の瞳を見つめながらゆっくりとカガリの顎を持ち上げた。
カガリが驚いたように少し目を見開いたが、すぐにそれは優しく細められた。
「カガリ・・愛してる・・」
ずっと胸に抱えてきた想い。
ずっと口に出すのは許されないと思っていた言葉。
アスランはそれを囁いて唇を重ねた。