「カガリ様、朝でございますよ、カガリ様」

カガリの一日はこの声から始まる。
それは特別な日の朝であっても変わらない。
眠い目をこすりながら、瞼を開けるとそこにいるのは翡翠色の瞳をした彼、アスラン・ザラ。


「朝食もできあがっておりますので顔を洗ったらダイニングの方に。
寝癖もついておりますからちゃんと整えてからいらして下さい」

「あーー！もう分かった・・」

カガリがうんざりとした声で返事をするとアスランは軽く会釈をして下がっていった。


(愛想笑いの一つでも、すればいいのに)


そう思いながらカガリはアスランが出て行ったドアを眺める。



アスランはカガリの執事だ。
カガリは世界的に有名なアスハ財閥の一人娘で
ザラ家は代々アスハ家に執事として仕えている。
だからカガリとアスランは幼いころから一つ屋根の下で一緒に暮らしてきた。
アスランはお転婆なカガリの面倒をいつも見てくれて「しょうがないな、カガリ様は」と、翡翠色の瞳を細めるアスランの優しい微笑みがカガリは好きだった。


それなのに、いつからだろう。

アスランの態度が他人行儀になったのは。

いつしかアスランは執事としてしかカガリに接しなくなり、その時も表情を崩さなくなった。