BAD BOY

「まだ道場にいたのか。探したぞ。来月の体育祭のことで、マリュー先生が呼んでる」

硬直して動けないカガリの前に、アスランはつかつかと歩み寄ってきた。
その動作は相変わらず優美で、表情も柔和だったが、今の彼が内に秘めている感情を想像しただけで、カガリの全身が総毛だつ。
カガリが振り向く勇気を持つよりも先に、アスランは二人の前までやってきた。
突如現れた新参者に、アフメドは冷静だった

「アスラン、ごめん。今取り込み中なんだ。カガリはもう帰ったってことにしてくれないかな」

「すまないアフメド、明日の集会に使う資料でカガリの確認を取りたい箇所があるらしくて、どうしても今日中って言われてるんだ」

カガリにはまさに助け舟だったアフメドの気遣いを、アスランは申し訳なさそうな顔で一蹴すると、カガリの手を取った。

「じゃあな、アフメド。明日は組手しような」

あっという間の出来事だった。
一人その場に残されたアフメドに軽く別れの挨拶をし、アスランはカガリの手を引き道場を後にした。






カガリを誰もいない教室に連れていく間、アスランはずっと無言だった。
先を行くアスランの顔はよく見えなかったが、カガリの手首を掴む力と、全身からにじみ出るオーラが彼の怒りの程を物語っており、カガリは自分の身に降りかかるであろう恐怖にただ怯えることしかできなった。

「あっ!」

教室に着き扉を閉めると、アスランは掴んでいた手を離し、カガリを乱暴に床に投げ出した。

「い、た・・・」

全身を打ち付けた痛みに顔をしかめたカガリだったが、すぐにその表情が凍り付いた。
すぐ目の前に、アスランの怒りに満ちた瞳があったからだ。
アスランがカガリに馬乗りになっていたのだ。

「さっき、アフメドと何を話していた?」

アスランから出たのは、嵐の前のような静かな声だった。
エメラルドから醸し出される負の感情に圧倒され声が出ないカガリに、アスランはもう一度静かに繰り返した。

「さっき、アフメドに何を話そうとした?」

「ア・・・、アスラン・・ごめん・・・」

痛みも忘れ、やっとの思いで喉から掠れた声が出た。
今までアスランに好きにいたぶられてきたが、押し倒されたのは初めてだった。
ぞっとするほどの怒りをまとい、自分を見下ろすアスランに、抗議も言い訳もできるはずがなかった。
しかし、身をすくませるカガリを憐れむこと無く、アスランはついに激情を爆発させた。

「助けてもらおうとでもしたのか?被害者ぶるなよ!被害者は俺だ」

「ごめんなさい・・・っ」

涙交じりの謝罪を無視し、アスランはカガリのブラウスの首元を力任せに引き下げ、露わにした細い首と鎖骨周りに噛ぶりつくと、そのままきつく吸い上げた。

「・・・ぃっ、痛い!いやだぁ!ごめんなさ・・・っ!」

バタバタと暴れるカガリに覆いかぶさり、首元に赤い痣をつける唇はそのままに、アスランはカガリの肌を両手でまさぐった。

「許し・・っ!やあ・・っ」

今までアスランに好きにいたぶられてきたが、いつも立ったままか座った姿勢で、今回のように床に倒されるのは初めてだった。
男の大きな掌が身体中を這う感触にカガリは身を竦ませ、それがアスランの嗜虐性をますます刺激する。
一度タガが外れてしまえば、もう止まらなかった。
僅かに身を起こしたアスランが、カガリのブラウスの裾をスカートから引き出すと、そのまま捲りあげにかかった。

「やめ・・っ!脱がさないでっ!謝るからぁっ」

「抵抗するなっ!縛られたいのか?」

服を脱がされる。
腹部が冷気に晒されたことによって気がついた事実に、半狂乱になり男の手から逃れようともがいたカガリだったが、アスランの言葉にびくりと身を震わせた。
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