藍色の秘密


「ぁっ・・あっ・・んっ・・」

熱く溶けた膣は、勢いよく出入りする雄をねっとりと締め付ける。
快感に顔を歪めながら、アレックスはひたすらにカガリを揺さぶった。
甲高くなっていく喘ぎ声に、快楽に身を捩る火照った身体。
カガリの全てにどうしようもなく煽られる。

(カガリ様・・もっと・・)

腰を掴み、アレックスは動きを変えた。
溶けた蜜壺を掻き回す。

「ゃあっ・・っ!あぁっ・・!」

掻き回すように突いていくうちに、ある一点でカガリが身体をのけ反らせた。

「カガリ様・・ここですか?ここが、悦いのですか?」

「ぁ、はっ・・うぁっ!いぁっ・・!はぁっ・・!」

見つけ出したカガリの弱い場所を執拗に突いて攻め立てていく。
蕩けきった膣が引き絞らんばかりに、雄をきつく締め付ける。

「は・・すごい・・カガリ様」

「ぁ、ああ!ひっ・・!い、や・・!もう嫌っ・・ぁ・・っ」

「嘘です・・こんな感じているのに・・ほら・・」

「はあっ!ぁっ!あ・・っ!あんっ!」

カガリの身体がビクビクと震えだし、アレックスも限界が近くなる。
弱い箇所を深く抉り激しく攻め立て、荒々しく身体をぶつける。
ベッドが軋む音も、荒い呼吸も、身体がぶつかりあう音も、全てが終焉を目指し加速していく。
そうなってしまえば、あとは弾けるだけだった。

「うあっ・・!あっ!あ・・っ!だめっ・・だめっ・・うああぁあ―ー―――っ!!」

硬直し、足を跳ね上げたカガリの身体をきつく抱きしめて。

「はぁっ・・カガリ・・っ!!」

カガリが気を失ったのを肌で感じながら、アレックスは果てた。










激しい情事の余韻がまだ残った部屋で、アレックスはカガリに覆いかぶさったまま荒く呼吸をしていた。
心地よい疲労感と、痺れるような満足感か身体を満たしていた。
呼吸が幾分整うと、上半身を起こし、眼下の少女を見下ろした。
無理やり抱かれ、ぐったりとベッドに身を預けている様は、まるで手折られた可憐な花のようだった。

「カガリ様・・」

目元には幾筋もの涙の痕。
それが痛々しくて、アレックスは目尻に溜まった涙を指先でそっと拭った。
信頼していたはずの部下に、手ひどく裏切られて、純潔を奪われて、どんなに怖かったことだろう。

(それでも・・それでも俺は・・貴方が欲しかった・・)

だから、果たしてはいけない、約束を果たしてしまった。
アレックスは、力なく投げ出されたカガリの手をそっと握った。
激痛に、あるいは快楽に耐える為に、強く握りこまれていた手も、今は無防備で、温かな体温が伝わってくる。
そのぬくもりは、あの頃と全く変わっていない。


この手に引かれて、裏路地を駆け抜けた。
その後もずっと手をつないで、死の世界に向かおうとした自分を、明るい世界に繋ぎ止めてくれた。
その手のぬくもりは、今も変わらず温かい。

(最初の約束・・か・・)

カガリの手をそっとベッドに戻し、アレックスは柔らかな頬に手を伸ばす。
その感触を確かめるように、何度も優しく撫でる。

―――絶対だぞ!私の家分かっただろう?必ず遊びにくるんだぞ!

それは、遠い幼少の日の別れ際に、アスハ邸の前で交わした約束だった。
頷きながら、娼館から自由に外に出られない自分には、守ることのできない約束だと、アレックスは分かっていた。
それでも、カガリと過ごした時間はかけがえのない宝物となって、アレックスの心を温かく照らしていた。
けれども、交わした約束が違う意味で守ることのできないものだと知ったのは、それから少し後のことだった。
それは、身請けされた先の屋敷に飾ってあった高価な絵皿だった。
アレックスはそこに会いたくて堪らなかった少女を見つけ、その絵皿がアスハ当主とその娘を描いたものだと知る。

(君は・・君は・・アスハの姫だったのか・・)

身分違いもいいところだった。
本来なら会話をすることも、目線を合わせることだってできない人だ。
アレックスはただ呆然とその絵皿を見つめた。
アスハ邸に住んでいるとは言ってはいたが、まさかアスハの姫だっただなんてアレックスは想像もしなかったのだ。
カガリは所謂世間一般の姫君の像からは遠くかけ離れたところにいて。
気さくで明るくて、心を閉ざした自分に、一生懸命話しかけてくれた。
その明るい優しさに、アレックスは救われたのだ。

(だけど・・)

その真っ直ぐな優しさは、カガリが為政者になったとき、きっとカガリを苦しめるだろう。
策略が渦巻く政治の世界で、それは相手に付け込まれる弱点になるはずだ。
世間の裏側で生きてきたアレックスは、どんなにこの世界が醜いか知っていた。

(なら・・なら・・俺があの子を守ろう。その為に強くなろう)

そう決意して、6年後、アレックスは護衛としてカガリの元に現れて、再びアスハ邸にやってくるという約束を果たしたのだった。
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