SCANDAL

「そう、だけど・・・・」

ルナマリアの言うとおり、何度か二人で会ってはいるが、ではアスランとどんな感じと問われれば、その返答に困ってしまう。
二人の関係性を、何故だか一言で簡単に言い表すのは難しい気がした。
友人といえば、友人なのだが。

「カガリはその人のこと、好きなの?」

「ええっ!」

煮え切らないカガリに、ルナマリアが爆弾を落とした。
恋愛はルナマリアにとっては身近な話題でも、カガリにとっては全くそんなことはなかった。
恋愛とはさっぱり無縁な人生を歩んできたのだから。

「図星だった?」

「そんなわけないだろっ・・!私が恋なんて、そんなことっ!ただ、アイツはいい奴だから、仲良くしてる。それだけだ!」

「ムキになっちゃって」

ルナマリアがクスクスと笑う。

「カガリって妙に恋愛に畏まりすぎるところがあるわよね。恋愛ってしようって思ってするものじゃないのよ。気が付いたら落ちてるものなの。自分でも無意識のうちにね」

「別に私は・・・」

恋愛なんてしていない。
そう言おうと思ったのに、ルナマリアは一枚も二枚も上手だった。

「カガリはその人と一緒にいてドキドキしたりしないの?」

「ドキドキって・・・」

そう言われて、思い当たる節があった。
第一印象は冷たそうな人だったが、親しくなってみるとアスランはすごく優しくて、その優しさに触れるとき、どうしてかカガリの胸は高鳴ってしまうのだ。
特別に嬉しかったり、緊張したときだって心臓は高鳴るが、どうしてかそれは種類の違う胸の高鳴りだった。
ルナマリアはカガリのだんまりを無言の肯定と取ったようだった。
いたずらっぽい瞳をカガリに向けて言った。

「心はね、正直なの。好きでもないひとに、ドキドキしたりしないでしょ?」

「・・・・」

アスランのことが、好き・・・?
そう自分に問いかけると、身体がじんわりと熱をもった。
アスランの前に出るのが恥ずかしい。
けれども、彼の顔を見たくて仕方ない。
じっとしていられない。
そんな矛盾した気持ちが湧き上がる。
そんな自分の気持ちに、本当はもっと前から気が付いていたのかもしれない。
恋に未熟なカガリは認めるのが怖かっただけなのだ。
けれども、一度意識してしまったら、もう背くことはできなかった。

「好き・・・」

確かめるように、その言葉を唇に乗せる。
思ったよりも簡単に、その二文字は音になった。

「そう、好きなのよ」

親戚の娘の成長を喜ぶような眼差しで、ルナマリアが言った。

「そろそろカガリも恋をしなくちゃ。恋愛未経験のグラビアアイドルなんて聞いたことないわ」

わざとらしく視線を鋭くして、最後に付け加える。

「ただし、カメラには気を付けるのよ」
9/52ページ
スキ