SCANDAL




「カガリ、最近楽しそうじゃない」

「えっ?」

「さては何かあったでしょ」

大手芸能プロダクション「ミネルバ」ご用達の会員制高級エステサロン。
そのVIPルームに、カガリは同僚のルナマリアと二人、紙でできた下着一枚のみを身に着けた状態でうつ伏せに寝そべっている。

「確かにユラさんのお肌、いつにもましてスベスベですね」

「ええええ?」

カガリの背中を良い香りのするオイルでマッサージしている、この店のエステティシャンもからかう様にルナマリアに同調した。
「ミネルバ」ではグラビアアイドルに週一のエステ通いを義務づけており、毎週通っていくうちに専属のエステティシャンのミリアリアとも気心知れた仲になっていた。

「カガリ、恋してるんじゃないの?」

初めからこれが言いたかったのだろう。
ルナマリアが探るような目をカガリに向けた。

「なっ・・・・!違う!恋なんてするわけないだろ」

「男の人とメールしたり、どっか出かけたりしてるんじゃないの?」

ルナマリアの言葉に、カガリはぐっと喉を詰まらせた。
賢いルナマリアに隠し事など、カガリに出来るはずもないのだった。

「え~誰かしら。うちのマネージャーでもないし、もしかして、この前のロケのカメラマン?」

「違うっ・・仕事仲間となんて・・そんなわけないだろ!」

「でもカガリ、飲み会には参加しないし、仕事仲間以外に異性と接点ある場所なんてないじゃない。この前の合コンってことはないわよねえ。カガリだんまりだったし」

「・・・・・・」

そのまさか、なのだがあれは合コンで出会ったといえるのだろうか。
合コン中は互いに言葉も交わさなかったのに。
だから、夜の公園で声を掛けられたときは驚いた。
そして次の日にアスランからメールが入って、それから何度か二人で出かけているのだ。

「にしてもこの前の合コンは当たりだったなあ。今超人気のサッカー選手。みんな、そこらへんの芸能人顔負けのイケメンだったし」

そのときのことを思い出すように、うっとりした口調でルナマリアが言った。
今をときめく人気グラビアアイドルであり、軽快で絶妙なトークのおかげで最近はバラエティでも人気者のルナマリアは、その性格から人脈も広く、合コンの誘いは多い。
それこそ若手俳優やお笑い芸人、スポーツ選手など、合コン相手はよりどりみどりのはずだが、その中でもZAFTとのメンバーはレベルが高かったらしい。

「でも、あのあとミーアが、なんだっけ・・オレンジ色の髪した奴にしつこく口説かれたらしいぞ」

突っ込まれるのを避けるため、カガリはさり気なく話題を変えた。

「あーハイネさんね。私も聞いた。あの人プレイボーイらしいからね。まあ、あれだけ魅力的なら仕方ない気もするけどね」

「奥さんいるんだろ・・・」

「バイタリティのある男は、男性ホルモンが普通の男より一本多いの。サッカー選手なんてバイタリティの塊なんだから、仕方ないの」

説得力があるんだかないんだか分からない理論に、カガリは黙り込んだ。
確かにスポーツ選手は明確な勝負の世界で生きているが、だからといって皆が皆、アグレッシブな性格をしているわけではないはずだ。
第一線で活躍しているにもかかわらず、温厚で優しいサッカー選手を、カガリはよく知っていた。

「にしても、アスラン・ザラって噂通り奥手なのねえ」

いきなり頭のなかで思い浮かべていた人の名を出され、カガリは内心飛び上がった。
幸い、ルナマリアには気づかれなかったが。

「ディアッカにメアド聞いて一回メールしたけど、そっけないし、すぐ終わりにされちゃったわ」

「そう・・なんだ・・・」

確かにアスランのメールは短い。
用件と、それに他愛もないことが一言くらいで、平均して三行くらいの量だ。
けれども、カガリのメールには必ず返信をくれるし、練習等で返信が遅くなったときは謝罪の言葉も入っている。

「まあ、それは置いといて。カガリは、その彼とはどんな感じなの?」

ルナマリアが、終わりにしたと思った話題を再び蒸し返してきた。

「どんなって・・・」

「二人で出かけたり、ご飯食べたりしてるんでしょ?」
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