SCANDAL
(あ・・・)
いきなり唇を塞がれて、深く抱きこめられて、カガリは息ができなくなった。
身体のそこかしこにアスランの精悍な身体をを感じて、触れる部分がとにかく熱かった。
諦めなければと、嫌いにならなければと思っていた人と、今こうしていることが、嘘のようだった。
それでも感慨にふける余裕は全くなく、カガリはアスランからの口付けに翻弄される。
身も心もアスランに飲み込まれてしまいそうだった。
(あ・・もう・・)
息が続かないと感じたとき、アスランがそっと唇を離した。
至近距離で、ぞっとするほど艶やかなエメラルドがゆっくりと開かれる。
息があがっているカガリに、アスランはそこで初めて気が付いたようだった。
抱きしめていた腕を緩め、代わりに二の腕を柔らかく掴む。
「カガリ、ごめん。大丈夫か?」
「ん・・・」
「俺、嬉しくて、何か考える前に身体が動いてた」
またしても自分本位な行動を取ってしまったことに後悔し、眉根を下げたアスランだったが、謝罪もそこそこに懇願に満ちた瞳でカガリの顔を覗き込んだ。
「さっきの言葉、もう一回言ってくれないか?」
―――私、お前のことが
一瞬、夢かと思ったその言葉を、聞き間違いではなかったと確かめたくて、アスランは完全に余裕をなくしていた。
その切羽詰った表情に向かって、カガリははっきりと言い放った。
「嫌だ」
瞬間、アスランの顔が固まる。
それがおかしくて、カガリは表情を緩めた。
アスランへの愛しさからくる、カガリなりのちょっとした意地悪だった。
テレビで見た記者会見は、確かにカガリを守る為だったのだろう。
今しがたアスランの口から彼の真意を聞いて、カガリはそれをはっきり理解していた。
カガリに迷惑を掛けたくないという、アスランらしい選択ともいえた。
それでも、カガリだってひどく傷ついたのだ。
ほんの少し意地悪をしたって許されるだろう。
さらに言えば、カガリはきょとんした彼の顔を見たかった。
端正な顔をした彼の、あどけない表情はとても可愛いのだ。
「自分がまだ言ってないくせに、私に二度も言わせる気か?」
いたずらっぽい笑みをたたえたカガリに、アスランはカガリが期待した通り、思いきり虚を突かれた顔をした。
しかしすぐに、ふっと息をこぼすように小さく笑った。
「俺もカガリのことが好きだよ。カガリは?」
「私もだっ」
そう言って、カガリはアスランの胸に自分から顔を寄せると、アスランがすぐにカガリの背中に腕を回した。
久しぶりに感じるアスランの感触と香りが懐かしく、辛く苦しいばかりだったアスランへの想いがみるみると修復され、満ちていく気がした。
ザフトのエースであるアスランと、グラビアアイドルであるカガリの恋路には、様々な困難がいまだ山積みで、何一つ解決していない。
それでも、想いを通わせてしまうことほど、心強いものはない。
最も信頼でき、心強いパートナーがいれば、恐れることは何もなく、何だって出来る気がした。