SCANDAL







「え・・」

カガリが何か言う前に、肩に載せた手に力を込めた。
ボンという鈍い音とともに、華奢な身体がソファに倒れ込む。
その衝撃で床にあった空の缶ビールが倒れ、カラカラと転がっていく音は、どこか現実味を帯びなかった。

「アス・・ラン・・?」

見下ろせば、カガリはパチパチと瞳を瞬かせている。
何が起こったか、分からないという風に。
これから何をされるなんて、想像もついていないのかもしれない。
その無垢な瞳の裏にある本性を、しかしアスランは知っている。
不思議そうに見上げてくるカガリに、アスランは緩く微笑むと、そっとその唇に口付けた。

「アスラン・・?」

口付けたときと同じくらい、そっと唇を放す。
それでも、カガリは状況を飲み込めていないようだった。
子供のように、いまだ純真な目でアスランを見つめている。
そのあどけなさは、写真集のなかのカガリとは全く別人で、アスランの胸にわずかな焦燥が走る。
早く写真集のような、淫らな顔をすればいい。
そうすれば、罪悪感なんて感じることもないから。
奥に隠れたカガリの本性を引きずり出すように、先ほどとは打って変わって、アスランは今度は噛みつくように口付けた。

「・・んっ?!う・・うむっ・・」

驚いたカガリが僅かに口を開き、その隙間を狙って、舌をねじ込む。

「むっぅ・・んんっ・・んぅっ・・!」

さすがに何をされているのか実感が沸いたのだろう。
カガリが身を捩り、激しい口付けから逃れようとするも、アスランはその華奢な身体を抑え込んだ。
奥にあるカガリの舌を一方的に絡め取り、唾液を送りこむ。
上手く呼吸のできないカガリの身体からは力が抜けていき、やがて大人しくアスランの身体に圧し掛かられる形になった。
その状況に満足して、アスランはやっとカガリの唇を解放した。

「んっ・・・はあっはあっ・・・はっ・・」

よほど苦しかったのか、忙しなく酸素を取り込むカガリは矢継ぎ早に言葉を紡ぐこともできないようだったが、少し呼吸が落ちつくと、琥珀の瞳でアスランを睨み付けた。

「お前、何するんだよっ・・!」

しかし頬を叩こうと振り上げられた手は、いとも簡単にアスランに掴み取られる。
カガリがその手を振り払おうとしても、アスランはカガリの手首を自由にはしなかった。
その圧力と、自分をじっと見つめるエメラルドの瞳からは感情が全く読み取れないことに、カガリの威勢はみるみる弱まっていく。

「アスラン・・何のつもりだ、一体」

その瞳に写る戸惑いと怯えに、アスランは暗い優越を感じた。
俺は君に散々苦しめられたんだ、カガリだってその報いを受けなければ、不公平だろう。
そんな想いがじわじわとアスランの胸に浸透する。
それにカガリははこういうことが得意なはずだ。
なせ何百、何千の男の欲を受け止めているのだから。
既にアスランだって、その何千もの男のなかの一人になっているのだ。

「何って・・カガリは俺を慰めてくれるんだろう?」

「え・・・ひゃあっ・・!」

アスランはカガリの首元に顔を埋め、そのまま柔らかな肌を吸った。
つかんでいたカガリの手首は頭の上で固定する。

「やだっ・・何?やめろよっ・・痛い!」

カガリが悲鳴をあげて、アスランの下から逃れようともがく。
アスランはカガリの抵抗にかまわず、何度も首筋から鎖骨周りを吸って、ついにはカガリのTシャツのなかに手を潜り込ませた。

「あ・・・っ、いやあああああっ!!」

その途端につんざくような悲鳴があがった。
その悲鳴にあるカガリが感じているだろう心の底からの恐怖、そして完全な拒絶を感じ取った瞬間、アスランの思考が沸騰した。

自分を拒絶するなんて、許さない。

「大人しくしろよっ・・!」

いまだ自由なもう片方のカガリの手も、両手で頭上にまとめあげ、必死に身を揺するカガリのTシャツを荒々しくまくり上げた。

「他の男にもさせているんだろう?!俺にも同じことをさせろよっ!!」
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