SCANDAL

怒りと欲求で心も身体も熱かった。
昂ぶった熱をすぐにでも放出したかった。
溜まった熱はアスランの体内を蠢き、早く早くとアスランを急き立てる。
今行おうとしている行為が背徳的な行為だと頭の隅では分かっているのに、踏みとどまることはできなかった。

「・・・うっ」

猛る雄を部屋着のズボンから取り出し、ぐっと力を込めて握る。
身体を突き抜ける、鈍い快感。
自慰の手ごたえを感じながら、薄めた瞳で映すのは、足の上に広げられた写真集。
そこでカガリが誘う様に、アスランを仰ぎ見ている。
白い水着の上に明らかにサイズの合わない、男物のカッターシャツを羽織って。

「はっ・・・あっ・・」

そのカガリに視線を当てたまま、握った手を前後に動かす。
アスランの手の振動で、カクカクと揺れる写真集が、アスランの浅ましい妄想を助長する。
生身で揺さぶられるカガリを連想させる。

「ふっ・・」

いつしかアスランの頭の中では、カッターシャツを羽織るカガリの上に、自らが覆いかぶさっていた。
そうしてカガリを凌辱しておきながら、「裏切り」に対する怒りは収まらなかった。

カガリ・・・どうして、こんな・・・許せない・・

人に言えない後ろめたい行為をしているのは自分なのに、その責任は全てカガリに押し付ける。
カガリがこんないやらしく男を誘っているから。
だから、俺はこんなことをするのだと。

妄想のなかのカガリは、凌辱されながら、涙をこぼしてアスランに許しを乞うていた。
ごめんなさい、もうこんなことはしないから、だから許して、と。
しかし、アスランに許す気など毛頭ない。

「はっ・・・」

雄を握る手にさらに力を込め、往復させるスピードを速める。
先端から滲む液体が、滑りが良くし、アスランの手の動きを助長した。

激しくなったアスランの動きに、頭の中のカガリが悲鳴をあげる。
でも、絶対やめてなどやらない。
何故なら、悪いのは、カガリなのだから。
これは罰なのだ。
あられもない恰好で男を誘ったのだから、そのつけは払ってもらわなければならない。

「うっ・・くっう・・」

坂から転げ落ちるように、身体は快楽におぼれていくのに、何故だか頭は冴えていく。
自分の知らないカガリ。
カガリはいやらしさを感じさせない、健康的な肢体が売りなのだから、写真集も健全なものだと思い込んでいた自分は、なんて馬鹿なのだろう。
いや、違う。
自分はカガリにだまされていたのだと、アスランは思う。
真っ直ぐで純粋だとアスランに思わせながら、その裏ではこんな表情が出来て、それを上手く隠していたのだから。
カガリは純情などとは程遠い女性だったのだ。
そんな彼女に、恋愛に不慣れで不器用な自分はどんな風に映ったのだろう。
それを考えるだけで、悔しさと情けなさがアスランを襲う。

「ふ・・ぐっ・・」

暴走する感情に苛まれながら一方では、こんなことをしたら、もう自分はカガリに顔向けできないと冷静に判断する自分もいることにアスランは気がついていた。
カガリに裏切られながらも、未練がましく彼女の傍にいたいと思う自分だ。
しかし、加速した欲望は、もはや抑えることは叶わなかった。

いいんだ・・・
だって、カガリはこの為に写真集を出しているのだから。
そう、世の男性を慰める為に。
その為の写真集。
カガリを使って、「こういうこと」をしている男はアスランだけじゃない。
軽やかな身のこなしや、美しい姿勢で、ふとした時にアスランの目を奪っていた、カガリのほっそりとした肢体は、アスランだけのものではない。
何百、何千の男に、その肢体は晒されているのだ。


「うっ・・・!」

ビクリとアスランの身体が震えた。


「カガ・・ッリ・・」

君は、一体何人の男の頭の中で犯されているんだ・・・!



そんな想いが頭の中で弾けた瞬間、先端から白い液が迸った。
ティッシュを掴む余裕すらなく、吐き出された白濁液は膝の上に置かれた写真集、カガリの顔面と身体中に降りかかった。
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