結婚前夜【幕間】

カガリへ



先日、父の葬儀が終わりました。
偏屈な父ですが、プラント評議会議長も務めていたこともあって、多くの人が葬儀に参列してくれました。
64歳での「早すぎる」死と皆が言いますが、プラントと地球間での融和を成し遂げる為に奔走した人生は、父にとって満足いくものであったと、俺は思います。
闘病生活中も、一切の不満も口に出していませんでした。








ただ・・・最後まで君のことを心配していました。

出来ることなら、父を君に会わせてやりたかった。
一目でいい。
昔と同じ元気な姿を、もう一度だけ父に見せてあげたかった。

それだけが心残りで仕方ありません。




昔、父と俺の関係を心配してくれて君に、わだかまりの溶けた父と俺の姿も、実際に目で見てもらいたかった。
そうしたら、君のことだ。
きっと輝くような笑みを見せてくれただろう。
そんな笑みが、見たかった。












葬儀の日は慌ただしくて、感傷に浸る間もありませんでしたが(そんな年でもありませんし、ある程度覚悟していたことではあるので)
やはり少し悲しげに見えたのでしょうか。
キラとラクスに連れられて参列したシンが「これあげる」と貝殻をくれました。
5歳児なりに気を使ってくれてのだろう。
ラクスいわく、シンは俺になついてくれているようで、会うたびに俺のところに自分からやってきて、遊んでくれとねだります。
大きくなったらザフトの兵士になるのが夢なんだそうです。

小さい子が苦手が俺ですが、シンだけは別で実の息子のようにとても可愛い。
シンがあまりにも俺になつくので、キラが不機嫌そうな顔をして、ラクスに宥められるのが、日常と化しています。
そうそう、シンが君に会いに来てから、君のことを「おひめさま」と呼んでいて「おひめさまは、もう起きた?」ってよくキラに尋ねているのだそうです。
童話にある「眠り姫」に君を重ねているのでしょう。






だけど、これでもう、君も俺も親というものが居なくなってしまったね。
君にはまだキラがいるけれど、俺は父が死んで、本当に天涯孤独になってしまった。

この年で感傷にふけるのも、情けない話だとは思うけど、やっぱり寂しい。






寂しいよ、カガリ・・・・















CE89 11/14 ディセンベル 気温:15度 天候:雨 






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