結婚前夜【幕間】

カガリへ



君がコールドスリープについてから、三カ月が過ぎました。

片時も君の傍から離れることのできなかった俺も、少し落ち着いてきて、君がコールドスリープについているこの状況を何とか受け入れることができるようになってきました。

君の目覚めを待つと心に決めたものの、やはり分厚いガラスのなかで眠る君を見ていると
辛くて辛くて、自分への憤りと後悔ばかりに胸が締め付けられて、とても苦しかった。
謝りたいのに、話がしたいのに、三か月前まで簡単にできたはずのことができないこの状況が、遣り切れなくて。
カガリ、君に会いたい。
それしか考えられなかった。

だけど三カ月経って、俺はなんとか自分の心をコントロールする術を覚え、
寂しさと後悔で、おかしくなりそうな心を叱咤し、冷静に前向きに立てるようになってきました。
休職していたザフトにも、来月から復帰しようと思っています。
本当は君の傍に常にいられないことが不安でしょうがなかったのですが
キラに「そんなんじゃカガリに呆れられるよ」と言われて、復隊を決めました。
キラいわく、君がコールドスリープについてからの俺は人間として満足な衣食住ができていなかったようで、君が知ったらきっと幻滅するくらい酷い有様だったそうです。

君が目覚めたとき、ちゃんとした自分でいたい。
そうじゃなきゃ、アスハの姫である君を娶ることなんて出来ない。
そう思ったら、何もする気が起きなかった心に、僅かながらの活力で出てきたのです。
何より、あんまり情けない姿を君に見られるのは嫌だし。



そうそう、人混みが苦手な俺ですが、一昨日繁華街に行ってきました。
目当ては、カガリが行きたいと行っていた映画館と水族館です。
中には入りませんでしたが、パンフレットを貰ってきました。
これで面白そうな映画を見繕ったり、廻覧ルートを考えたりしようと思います。
一昨日はちょうど祝日だったので、すごい人手でした。
友人、家族、そして恋人たち。
今までは気が付きませんでしたが、皆楽しそうな幸せそうな顔をしているんですね。


この三カ月、俺はずっと病室にいたので、キラとはすっかり打ち解けました。
親友・・・同志というのでしょうか。
俺にはあまり親しい友人がいなかったから、何か不思議な感じがしますが、キラとは一緒にいて疲れないし、何となく互いの考えていることが分かるというか。
頼りになる、心地いい存在です。
それにやっぱり、兄妹ですね。
何となく君に似ているところがある気がします。




ザフト復隊の他に、もうひとつ、君に伝えたいことがあります。
それが、この手紙なのですが・・・。

君が眠っている間、きっと色んなことが起こるでしょう。
世間も俺たちも、日々色々と変化があると思います。
思い出を共有できない君は、もしかしたら、目覚めたとき、過ぎた年月に、置いてきぼりになったと感じるかもしれません。
だから俺は、毎月君に手紙を書くことにしました。

世間の出来事は(そうそう、モルゲンレーテとプラントが宇宙船の共同開発に取り組む協定を先月結びました)新聞やニュースを遡れば分かることなので、もっと身近なこと・・・。
キラやラクス、君のオーブの友達、そして俺のことを綴っていこうと思います。
本当は毎日でも良かったんだけど、キラに相談したら「それじゃあ後からカガリが読むとき大変でしょ」と言われたので・・・。
確かに、日常を報告するには一か月に一度くらいの頻度が調度いいと思い、これから毎月君に手紙を書いていこうと思います。

そしてこれが、その第一通目です。

君が目覚めたとき、寂しくないように・・・。
思い出を後から共有できるように。
そんな思いから俺は、この手紙を綴っています。




だけど願わくば、手紙の枚数ができるだけ少ないことを願って。





PS:実はケバブ屋さんも探してみたんだけど、思いのほか数がたくさんあって、どこが君の言う「美味しいケバブ屋さん」なのか分からなかった。
時間のあるときに、キラに付き合ってもらって食べ比べをしてみようかと思う。










CE72 2/2 ディセンベル 気温:8度 天候:曇り

    


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